第161話
どことも知れない次元の狭間にある魔城にて――。
ユニゾンカラットとユニゾンジュエルは街こそ守り抜いたものの、ニブルヘイム・スリーの魔王に捕らわれてしまった。ふたりとも両腕を拘束され、鎖で吊りあげられる。
「くっ……目を覚まして、ダイヤ……!」
「目ならちゃんと覚めてるよ? ユニゾンカラット」
新たな魔王となったのは、仲間だったはずのユニゾンダイヤ。
ダイヤは魔王ならではの嗜虐性とともに『男性』に目覚め、カラットとジュエルの豊満な肉体をねっとりと眺めていた。
「み……見ないで」
純白のスクール水着は決して破れず、星装少女の装いをぎりぎりで保つ。だが戦うだけの力はもはや残っておらず、カラットたちに脱出の手立てはなかった。
「わ、私とカラットを……どうするつもりなの?」
「散々手こずらせてくれたからね。お礼に可愛がってあげようかな、って……フフフ」
ユニゾンダイヤは冷笑を浮かべる。
ダイヤのスクール水着は暗黒の色に染まり、ニブルヘイム・スリーでは無限のパワーを発揮した。アストレア・ワンならまだしもニブルヘイム・スリーでは、百戦錬磨のカラットやジュエルとはいえ、まったく歯が立たない。
「それじゃあ……どっちからお仕置きしようか。ねえ? ジュエルちゃん」
「う……」
さしものユニゾンジュエルも恐怖で顔を強張らせた。これからダイヤの手で暴かれるのを予感し、拘束されながらも、スクール水着の身体をくねらせる。
「わ、私からにしなさい!」
声をあげたのはユニゾンカラットだった。
「ただしジュエルには絶対に手を出さないで! い……いいでしょ? ダイヤ」
せめてジュエルだけでも助けたい一心で、必死に懇願する。
「カラット? ど、どうして……?」
「私はあなたより前からずっと、ダイヤと馴染みなんだもの。私のほうが多分、耐えられると思うから……」
星装少女たちの絆の強さを前にして、ダイヤは顔色を変えた。
「いつまでそんなこと言ってられるかな? 愛だの正義だの、くだらないよ。今から僕がそれを証明してあげるさ……ユニゾンカラットのカラダでね」
「……っ!」
魔王と星装少女の間で緊張が走る。
ユニゾンカラットは唇を噛んででも、恐怖を堪えた。
「い……いいわよ。好きにして」
「それじゃあ、お言葉に甘えて……よく見てなよ? ユニゾンジュエル」
暗黒の中で宴が始まる。
☆
「うわああああっ?」
朝から『僕』は大声とともに飛び起きる。
「なんて夢見てるんだよ? 僕……カラットとジュエルに、あんなこと……」
ただの夢にしては、てのひらに生々しい感触が残っていた。まるで本当にカラットのスクール水着をまさぐったような――何かの間違いとは思いつつ、悪寒を禁じえない。
それもこれも胡桃が奪還してきた、あの同人誌のせいだった。
ユニゾンダイヤがカラットとジュエルをぺろりと平らげるシチュエーションが、巷では人気のようで、中にはプロの作品まである。
「……ちょっと四葉ちゃんに電話してみるか」
早朝だけに気が引けたものの、『僕』はお隣さんでもある四葉を呼び出した。
『ふあぁ……はーい? どうしたの、王子くん……こんな朝っぱらから』
「いきなりごめん。その……四葉ちゃんが大丈夫かなって、心配になってさ」
実際、紫苑は昨日も『僕』にパワーを吸収されたことで、調子を崩している。闇堕ちした『僕』の力は思った以上に危険らしい。
『心配してくれてるの? ありがと。こっちは平気だから』
「うん。それじゃ、また学校で」
さっき見たのは単なる夢。そのことに『僕』は心の底からほっとした。
(胡桃ちゃんには悪いけど、同人誌は読まないでおこうっと……)
想像と現実の区別がつかなくなるからと、エッチな漫画やゲームはよく槍玉にあげられる。その偏見が、今の『僕』にとっては何より耳が痛い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。