第151話

 やがてランチタイムを過ぎ、客足も減ってきた。『僕』たちも休憩に入り、まかないで簡単に昼食を済ませる。

 そのはずが、休憩室ではメグメグが寝転がっていた。

「ちょっとぉ? いつまで待たせるのよ。呼ばれたから来てあげたのに~」

 四葉と茉莉花は疑問符つきで顔を見合わせる。

「……呼んだの? 四葉」

「ううん。だってメグメグ、調べたいことがあるって……」

 『僕』も首を傾げ、はっとした。

「ご馳走するって言ったの、今日ってわけじゃないよ? メグメグ」

「ええっ? じゃあ、どういうつもりで言ったわけ?」

 どこかで食い違いがあったらしい。

とはいえ、急なお客様にもパフェくらいは用意できた。案の定、メグメグはパフェひとつでころっと機嫌をよくして、普段の五倍は寛容になる。

「まあいいわ。これに免じて、許してあげる」

「食いしん坊なんだから」

「ところで……もぐもぐ、ダイヤ、なんで変身してるのよ?」

「食べながら喋らないで。メグメグ」

 六課の司令官は存分にパフェを味わいながら、調査の成果とやらを語り始めた。

「七課が介入なんてしてくるから、調べてみたのよ。そしたらニブルヘイム・スリーについて、大変なことがわかったの」

 『僕』たちの住むアストレア・ワンは今、ニブルヘイム・スリーと位相を重ね、直接的な交信ができるほどに近づいている。次元サークルを通して出現するアントニウムも、ニブルヘイム・スリーの悪魔だった。

「実はね……そのニブルヘイム・スリーって、リージョンダイバーズが昔、魔王を閉じ込めたリージョンだったらしいのよ。五十年も前のことだから、本部も忘れてて……」

「魔王って、ゲームとかに出てくるやつ?」

「それはわからないわ。当時の魔導兵器が暴走したとも……」

 五十年前、何かしらの脅威があったのだろう。リージョンダイバーズはニブルヘイム・スリーを閉ざすことで、その危機を免れた。

ところがニブルヘイム・スリーはアストレア・ワンと繋がり、アントニウムを吐き出している。当初は六課で対応と決まったが、本部も認識が甘かった。

(紫苑たちの言った通りだ……すごく危ないのかも)

 大好物のパフェを平らげ、メグメグは息をつく。

「ふう~っ。……要するに、本部の想定以上の事態になりつつあるってことなの。あなたたちのパワーアップを急ぐようにって、催促されちゃったわ」

 アントニウムの力も増しつつあった。何体も同時に出現しようものなら、今の『僕』らでは太刀打ちできない。

「あとは七課の動向にも要注意して。あいつらも近くにいるはずだから」

 メグメグの忠告に四葉も茉莉花も頷いた。

「わかったわ」

「同い年くらいだったし……どこの学校かしら」

(あれ? 同じL女ってこと、みんなは気付いてないのか)

 ここでメグメグに騒がれても困るので、黙っておく。

「あ……そうだ、メグメグ。今夜あたり、次のアントニウムが出るってことは?」

「どうして今夜なの? まあ、可能性はなきにしもあらずね。カラットとジュエルも、心の準備だけはしといてちょうだい」

 そろそろ仕事へ戻らなくてはならなかった。

「またお客さんが来たみたいね」

「うん」

優等生肌の茉莉花に続いて、『僕』も席を立つ。

「任務以外での変身は控えなさいよ? ダイヤ。魔法で変なことされたら、あとで私がフォローで走りまわる羽目になるんだから」

「え……そうなの?」

 この食いしん坊のお世話になるのは、避けたかった。

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