第136話

 メンバーが頑張ってくれた甲斐あって、イベントは大成功。

「お疲れ様でした~!」

 最後列の客を見送り、ようやく『僕』たちは肩の荷を降ろす。

「みんなも疲れたでしょ。はい、お茶」

「ありがとぉ~、Pクン」

 里緒奈も菜々留も笑みに疲労の色を滲ませていた。

「ファンの勢いに圧倒されちゃったわ。ものすごい人気なのね、このアニメ」

「コンサート同然だったわね、本当に……」

 名残惜しそうに恋姫はステージを眺め、胸に手を添える。

 『僕』としても感慨深かった。二期の参加については未定とはいえ、SHINYは充分に存在感をアピールできたはず。

 しかも『僕』は今回、大した魔法を使っていなかった。

 プロデューサーとしてSHINYの成長が嬉しい。

「控え室に戻ってからにしない?」

「ん、そうだね」

 美玖に促されて、『僕』たちはSHINY用の控え室へ。

「コスプレ衣装はしばらく借りることになるから、大事に扱ってねー」

「わかったわ。あ、お洗濯はPくんの魔法で?」

「はあ……またコレを着るんですか。P君のために……いえ、P君のせいで」

 『僕』も隣の部屋で着替えることにする。

 そのつもりが、誰かに裾を掴まれた。

「待って? Pクン。まだ変身は解かないで」

「え? こっちが本当の姿なんだけど……」

 里緒奈だけではない。恋姫と菜々留も一緒になって『僕』を引っ張る。

「ナナル、ご褒美が欲しいわ。今日はあんなに頑張ったんだもの」

「レ、レンキだって……恥ずかしいの我慢して、や、やりきったんですよ? だから」

 三人の声が重なった。

「ぎゅってして!」

 『僕』は目を丸々と開いて、仰天。

「え……ええええ~っ?」

 その声を聞きつけたらしい美玖が、控え室から顔だけ出す。

「何騒いでるのよ? 兄さん、みんなも。着替えるんじゃないの?」

「うっ、うん! その……帰りは何か食べようかなって」

 後ろめたくて、つい出まかせを言ってしまった。しかし妹は『僕』の動揺など気にも留めず、普段の素っ気なさで答える。

「帰ってから夕飯の支度してちゃ、もう遅いものね。ミクも一緒に行くわ」

「その前に休憩。ねっ!」

「そう? 帰ってからにすればいいのに」

 一方、里緒奈たちはまだ着替えようとしなかった。声のボリュームを下げ、『僕』に内緒の休憩(あっちの意味の)を求めてくる。

 上目遣いで『僕』を見上げながら、菜々留が唇に人差し指を添えた。

「美玖ちゃんに遠慮してるのかしら? お兄たま」

「お、おにい……?」

 里緒奈が悔しそうに割り込む。

「ちょっと、ちょっと! 抜け駆け禁止! お兄様はみんなのモノなんだからね?」

「おにいさまぁ?」

 さらに恋姫も恥じらいを自棄で誤魔化しつつ、

「ふ、普通に呼びなさいったら! お兄さん、でしょう?」

 実際、昔は里緒奈たちに『お兄さん』などと呼ばれていた。アイドルとしてデビューした際に『P』と呼ぶようになり、今に至る。

「キュートに負けてらんないもん。リオナもお兄様の妹に立候補っ!」

「あら、独り占めはだめよ? お兄たまのハグは順番に、ね?」

「か、勘違いしないでください? やっ、やらしい意味じゃありませんので」

 恋姫にはそう念を押されるものの、『僕』は生唾を飲み下さずにいられなかった。

 何しろ美少女戦士たちは今、ピュアホワイトのスクール水着を着ているのだから。飾りの多い胸元はまだしも、お尻のラインやフトモモは隙だらけ。

 本当は今すぐ抱き締めたい。

「じ、じゃあ……」

 そんな衝動に駆られるも、あくまで『僕』は紳士然と振る舞った。

 表向きは。

(ご褒美! ご褒美なんだし、少しくらいなら……)

 頭の中は大混乱だ。 

 アイドルたちと一緒にエレベーターへ乗り、屋上のシャイニー号へ駆け込む。

 どうやら先週のコンサートと同じだった。里緒奈も、菜々留も、恋姫も、ステージを成功させたことで高揚し、ハグの快感を求めている。

「えぇと……誰からにしよっか?」

「ジャンケンよ、ジャンケン」

 ジャンケンの結果、シャイニー号のリラックスルームには里緒奈と恋姫が残った。『僕』は菜々留とともに横の扉を開け、休憩用のこぢんまりとしたベッドルームへ。

 扉を閉めると、甘い雰囲気が立ち込めた。

「そ、そういや……お風呂以外では初めてだね? 菜々留ちゃん」

「ええ。ベッドでなんて……なんだか恥ずかしいわ……」

 心臓を早鐘のように鳴らしながら、『僕』はぎこちない手つきで衣装を脱ぐ。

 そして同じく緊張しているらしい菜々留を、ベッドへ連れ込んだ。


 それから十分ほど、まずはユニゾンチャーム(菜々留)と。

「んふあっ? やん、お兄たま……そんなにしちゃ、はあっ、ナナルぅ」


 お次はユニゾンカラット(里緒奈)と、ベッドの上で。

「お兄様ったらぁ……ンッ、優しいふりして、あん、いやらしいんだからぁ」


 そしてユニゾンブライト(恋姫)とも、むしろベッドの中で。

「だっ、だめですってば、お兄さん! レンキ、そこまでは許し……あ、あぁん!」


 最後は里緒奈と菜々留も乱入してきて、三対一で組んずほぐれつ。

 『僕』も興奮のあまり自制できなくなり、右手で里緒奈を、左手で恋姫を抱き寄せ、正面の菜々留とまでイチャイチャに耽る始末。

「も、もぉだめ……! お兄様、リオナ……あっ、あぁ?」

「少しでいいから、っはあ、休ませてくださ……おっお兄さん? そこは!」

「お兄たまぁ、気持ちいい? ナナルがいっちばん、んあっ、よね?」

 蕩けそうなくらい甘美な一時に、くらくらする。

「ああああーっ!」

 疲れ果てて動けなくなるまで、美少女戦士たちの嬌声は何度も重なった。

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