第67話
里緒奈は声を上擦らせながらも、泡まみれのスクール水着を擦りつけてくる。
「だからぁ、サービス! Pクン、こーいうのが好きなんでしょ?」
「だ、だめだって! ま――」
「大きな声出したら、見つかっちゃうよ?」
一瞬、肝が冷えた。菜々留や恋姫もいる寮の中で、里緒奈とお風呂で過激なスキンシップ。こうなっては受け入れざるを得ず、『僕』は両手で口を押さえる。
「んっふ、はあ……リオナがキレイにしてあげるね? Pクンの、ぜぇんぶ……」
色っぽい吐息を散らしつつ、里緒奈は身体をくねらせた。
最初のうちは拙かったものの、回数をこなすにつれ、要領を得てくる。スクール水着がしっかりソープを絡めるおかげで、痛いこともなかった。
さらには『僕』の腕に跨るようにして、デルタの生地で念入りにごしごし。
「ど、どーお? Pクン、あふっ、気持ちいい?」
(アウトだ! これもうアウトだよ!)
高揚感が胸にせりあがってきて、『僕』のほうも息を乱す。
続けざまに里緒奈は『僕』の腕の中まで潜り込んできた。スクール水着越しに巨乳をむにゅうと押しつけながら、健気に微笑む。
「今夜は前も洗ったげる。んしょ、っと……きゃっ?」
「あ――!」
ところがソープのせいで滑り、転びそうになった。
咄嗟に『僕』は手を伸ばし、彼女の華奢な身体を抱き寄せる。
「あ……Pクン?」
また胸の鼓動が跳ねあがった。
里緒奈の柔らかさも、温もりも、今はすべて『僕』の腕の中。すぐに離すにはあまりに惜しくて、彼女の反応があるまで動きを止める。
「だ、大丈夫だった?」
たとえ嫌われても、もう少しだけ――と。
しかし里緒奈は抱擁を拒むどころか、むしろ恍惚の笑みを浮かべる。
「これ、なんだか気持ちいいの……Pクン、もっと……もっと、ギュッってしてぇ?」
もう一度『僕』はごくりと生唾を飲み込んだ。
(だ、抱き締めろってこと……?)
恐る恐る腕に力を込め、スクール水着の里緒奈を包み込む。そのついでに小さな背中を撫でてやると、里緒奈の唇から危なっかしい呻きが漏れた。
「あっ? Pクン、リオナがごしごしするから……はあっ、動かないでね?」
こうしてバスタイムは自主規制――。
☆
里緒奈とのお風呂デートを思い出しては、悶々とする。
(あれはセーフ! ぎゅってしただけだし……セ、セーフでいいよね?)
あの夜は『僕』もちょっぴり(自己申告)その気になってしまった。漫画ならR15に差し掛かっていたのは間違いない。
(で、でも……メチャクチャ気持ちよかったなあ……)
おかげで里緒奈のことを、つい意識してしまった。表向きはお互い、今まで通りの関係を演じてはいるものの。
「次はどんなの着るの? Pクン」
「ちょっと待ってね、えーと」
まるで兄妹のような睦まじさに、恋姫や菜々留は眉を顰める。
「なんだか最近……P君、里緒奈とやけに仲良くなってませんか?」
「やっぱりそうよね。里緒奈ちゃんも、Pくんも、目で通じ合ってる感じするもの」
『僕』と里緒奈は一緒になって否定した。
「そ、そんなことないよ? ねえ、里緒奈ちゃん」
「うんうん! 気のせい、気のせい。それより時間、押してるんだから」
「怪しい……」
疑惑を残しつつ、SHINYのメンバーは更衣室へ。
本日の仕事も世界制服の進行だった。すでにセーラー服と体操着の撮影は終わり、次は部活のユニフォームが一点。『僕』にとって特別な意味を持ち始めたスクール水着は、今回も最後となっている。
ところがメンバーは体操着のまま、荒っぽい足取りで戻ってきた。
恋姫からクレームが飛んでくるパターンだ。
「P君っ! れっれ、れ、レオタードってなんですか! レオタードって!」
ぬいぐるみの『僕』は真顔で答える。
「何って……器械体操部のユニフォームだよ?」
「そういうことを聞いてるんじゃありません! 部活の練習着なら、弓道部やバスケだってあるでしょうって話です!」
怒り心頭に恋姫は問題のレオタードを広げ、『僕』に見せつけた。
今になって『僕』も、体操部のレオタードは水着と変わらないことに気付く。
「あ、ゴメン。嫌だった?」
「まったく誠意が感じられないわよ? Pくんったら」
菜々留は触り程度に恋姫に同調しつつ、成り行きに任せていた。
一方で、里緒奈はまんざらでもない様子でレオタードを手繰り寄せる。
「リ、リオナは……いいよ? カメラもPクンが全部、担当してくれるんでしょ?」
「もちろん。恥ずかしいのを撮るのは、僕だけにするから」
「うん! ほら、菜々留と恋姫も。早く着替えよっ」
SHINYのセンターに促されては、恋姫もそれ以上は拒絶できなかった。
「はあ……わかったわ。お仕事だもの」
「Pくんにはあとでお仕置きすればいいのよ。ナナルたちには、まだお姫様デートの権利だって残ってるんだし」
SHINYのメンバーは今度こそ更衣室へ。
そして体育館にて、誘惑だらけの撮影会を始める。
「いいよ、里緒奈ちゃん! 表紙にしたいくらいだね!」
『僕』の調子もだんだん上がってきた。最初こそレオタードの生地の薄さに躊躇いもしたが、持ち前のプロ意識(スケベ意識ではない)で次々とシャッターを切りまくる。
「菜々留ちゃん、もう少し脚、広げてみようか? うん……そうそう」
「目線はこっちだよ、恋姫ちゃん。ん~! いいね、いいね」
アイドル活動に全力で打ち込む、これぞプロデューサーのあるべき姿。
その後、アイドル体操部がバレーボールの練習を始めたのは、言うまでもない。
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