#-05

「ありますよ」


 そう答えたのは屋敷に来て数秒後のことだった。

 いきなり国長が出てきたことも驚いたが、これには驚愕を隠せない。

 レキはすかさず聞いた。


「掲示板には飲食店の手伝い程度しか載ってなかったのですが……」

「えぇ、この国の依頼はあまりにも危険なモノが多いため、秘匿扱いになっています」


 少し小太りな男性、国長がさも当たり前のように回答する。


 危険な依頼。例えば山中に発生した突然変異の魔獣の討伐などだろうか。


 そんな依頼、わりとありきたりで秘匿扱いにする必要性は感じない。

 感性が違うのだろうか。レキは相槌を打つも内心はまったく納得していなかった。


「へぇ。で、今はどんな依頼があるんですか?」


 ただ美由はそんなのどこ吹く風で依頼の詳細を問う。


「今ですと……これですな。怪人アラクネの討伐」

「怪人アラクネ?」


 数十枚からなる依頼書、ではなく書類が机の上に置かれる。

 中を見ると、この国でそのアラクネに襲われたと思わしき人のリストと日時が書かれている書類だった。


 一枚に掲載されている人数は十人ほど。

 それが三〇枚におよび綴られており、ざっと計算しただけでも被害者数は三百人と相当な数になる。


 レキは少し事件に興味を抱いた。


「去年、一昨年ぐらいになりますかね。一週間で約十人が消えると言う大量行方不明事件がありまして、それを皮切りに今でも時折人が忽然と消えています」


 名前の横に書かれている年齢から全員大人。職業はバラバラのようで、性別もまだら。

 それ以外の共通点は見いだせなかった。


「質問いいですか?」


 横で資料を盗み見していた美由が手を挙げる。


「なんですか?」

「なんでそのアラクネという怪人? に襲われたって断言できるんですか?」

「その三ページに載っているライアン・ガイという男性。その人が第一発見者です」


 レキはその男が載っている三ページ目を開く。

 確かにその名の者が記載されていた。職業は科学者。


「ここに載っているということは……」

「えぇ、その翌日ほどに襲われたと考えられてます」

「なるほど……」


 レキは頷きながら書類を読み進める。

 ただ何故か先程までと違い、隠すように小さく広げて読むよう読み方を変えた。

 横で猫が「みーせーてー」と言っているが聞く耳を持っていない様子。

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