#-04

 時は遡るのこと数時間前。


 太陽、ではなくアポロと呼ばれる赤い恒星が輝く真昼間。

 レキと美由はウルラーネ国の中央部に位置する公園のベンチに座り、宙を仰いでいた。


 別に暇しているということではない。

 本来なら今日を生きるため仕事に勤しまなければならない。

 のだが


「いいバイトないねー」


 レキがぼやく。

 そう、仕事が無いのだ。


「というかココ、あんまり渡り鳥に優しくない……」


 美由は頬を膨らませる。

 確かに、とレキは頷く。


 ここウルラーネは国と名乗っているものの、厳密に言えば国ではない。

 我々の行政機関で言うなら都道府県に近い。


 彼らがいまいる国の本来の名はリアサルン。

 なのだがここに生息する人と妖のわだかまりにより国の中に複数の国が存在する有様になっている。


 国の種類は大きく三つに分かれる。

 人の国。妖の国。そして二つの種族が共存する理想郷〝EDEN〟だ。


 先に厳密には国ではないと語ったが、通貨は各々の国により違い、故に渡り鳥こと旅の者は滞在期間が一日であれどその国で生きるため何かしら働かないといけない。

 だが現状、彼らは働けないでいた。


 もっとも人の国、更に言うなら妖を嫌う国はだいたいこんなものだろう。

 いや、もっと根本な話をすれば人と妖は過去に戦争を起こし、現在は冷戦状態になっているも一発触発で再戦争になりかねない間柄だ。なのでこの態度が普通。


 妖であることを見破られると迫害は免れない。

 美由もいまは帽子で頭の耳を、尻尾は服の中に入れ、バックを背負うことで隠していた。


 とは言え、共生は出来ずとも、どちらかが困っていた時には無言ながらも手を貸す程度の間柄になりつつある両種族。

 それを踏まえて考えると、言葉は悪いが完全お断りは少し古い考えだ。


「別に非難する気はないけどね。それにしても困った」


 外資をこの国の通貨に両替することもできる。

 ただ、その基準になるのはどの国も揃って金、銀、銅の量だ。

 紙幣など本当に紙くずにしかならない。


 別に彼らは外資を一切持っていないわけではない。

 それでも彼らが両替を渋っているのは、長期滞在する気が無いのと、旅び鳥に対するバイトはだいたい高額で、一件で五日は暮らせるぐらいの大金は普通だ。

 もちろんハードな仕事なのだが、そのぐらい慣れっこ。

 それと外資を崩すことを天秤をかけるとどうしても崩す方を躊躇ってしまう。


「……国長くにおさに直接聞いてみる? 何かいい仕事があるかも」


 ふと美由がぼやく。その気持ち、冗談半分本気半分。


 聞いたレキの顔が少し引くつく。

 だがそれも今は取捨選択できない話だ。可能性はしらみつぶしに当たった方が良いだろう。


「よし、行ってみるか」


 レキは膝を打つと立ち上がり、ここの国長が住む屋敷の方を睨んだ。

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