第12話 ニート 長続きしない

カタカタ…


 一心不乱にコードを書いている元瀬が居た。エラーを出しては調べて、直して実行しての繰り返し。わからないところがあれば調べてまた直しての繰り返しだ。


 元瀬はあれからパチンコ店に行っていない。


 パチスロで稼ぐためにはただではなく情報収集・分析する必要になる。そうなると、スクールの課題を進めつつ、パチスロの情報収集・分析をしてパチスロに行く時間はないのだ。


 元瀬には優先事項がある。第一はのではなく、だ。第二に、この家を出る。

 そのためにプログラミングスクールを選択しただけで、元瀬は


 KnightsTECHナイトテックにはメンターシステムがあり、エンジニアがオンライン通話、チャットでスクール生を助けてくれるシステムだ。とてもだ。


 元瀬はこのシステムを大いに活用していた。オンライン通話だと実際のコードや説明をするのに時間が取られるので元瀬は質問用のチャットグループに質問を流す事にしていた。


元瀬『元瀬です。

すいません、課題の3-5を進めていますが悩んでいます。


課題の通りに進めていると1ファイルに大量に書くことになり、行数が多くなり可読性を失います。

こちらについては同一処理を他ファイルに移したり、1つにまとめて呼び出すような形にしてもいいのでしょうか?』


橋『メンターの橋です。良いと思います。』


 最初はメンターもすぐに回答してくれていた。

 だが、元瀬は課題を進めていくと色んな事に興味が出て来てスクールの課題以外も勉強し始めた。


元瀬『データベースで~』


元瀬『オブジェクト指向の事で~』


 最初はメンターも質問に答えてくれていたが、質問内容が徐々に高度になっていくとメンターからの返信が遅かったり参考にしてくれとURLだけが送られてくるようになった。そのうち、元瀬の質問に答えてもらえないようになってきた。


 プログラミングスクールに入ってから1週間。元瀬はずっと講師が居るスクールに行かずに自宅で引きこもりスクールの課題を進めていた。だが、今日は渋谷まで来ていた。それは就職に向けてのキャリアカウンセリングを受けるためだ。


通されたのはスクールの中の小さな会議室。


「失礼しま~す。」


元瀬はドアを開けつつ言った。

そこにはスーツを来た女性が既にノートパソコンを広げて待っていた。


女性は立ち上がって応対してくれた。


「今回キャリアカウンセリングをさせて頂く、三番さんばんと言います。どうぞ、そちらにお掛けください。」


そう言われると元瀬は椅子に腰を下ろして会話に入った。


「元瀬です。珍しい名字ですね。」


「えぇ、よく言われます。実際100人も居ないくらい珍しい名字なんですよ。」


キャリアカウンセリングは和やかな雰囲気で始まったかのように思えた。


「初めてのキャリアカウンセリングですが、就職支援のこともあるので元瀬さんの就職時の希望年収を出してみましたが、300万になると思います。」


「300ですか…、すいません、理由を聞いてもいいでしょうか?」


「もちろん、ご説明します。元瀬さんは大学卒業後に定職に付かずにIT関係で有利に働く資格を取得してないからです。また大学も理系分野ではなく文系なので、就職支援時に出す希望年収は、この金額にさせていただこうと思います。」


「そぉですか…、わかりました。」


 元瀬は顔に出さなかったが声色は落胆していた。家を出るには明らかに300万ではきついだろう。


「スクールに入ってから一週間ですが目指したい方向など見つかりましたが?」


「まだ始めたばかりで色々考えさせていただいています。」


「始めたばかりでも目標を持ってください。やれると思わないとまず出来ません。あとSNSを初めてエンジニア同士で繋がったりはどうでしょうか?刺激になりますよ」


「SNSは一応やってるんで考えてみます。」


「あと、スクールの動画サイトチャンネルが開設されましたので、そちらも見つつ勉強してみてください。」


「はい、ありがとうございます。」


元瀬の初めてのキャリアカウンセリングはそんな感じに終わった。

元瀬は決心をした。

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