第10話 ニート 決意する
元瀬は家に帰るといつも通り自室に籠もる。理由は家族にあたる人達と関わりたくないからだ。
「居るんでしょ?そろそろフラフラしてないで働いてよ。毎日遅くまでフラフラしてて…」
元瀬の母親らしき人物は帰ってきたことを察して、部屋の前まで来て物音がしない部屋に呼びかけている。だが元瀬はヘッドホンを使って既に自分の世界に籠もっている。
この光景はほぼ毎日のものだ。元瀬が就職に失敗して1年経ってから始まった。2年間行われている儀式である。
彼女だって就職活動も頑張っていたが運が悪いことに就職が出来なかった。だが、親にあたる人間は彼女の頑張りを認めなかった。この親からしてみればお金を掛けて良いところの大学まで行かせて就職に失敗なんて恥ずかしいと思っていたのだろう。
元瀬は最初はアルバイトをしていたが、最近はアルバイトも辞めてパチスロニートと化していた。彼女は出来ることなら、この煩わしい家族にあたる人達が居る家から出たいと思っていたがパチスロニートで収入が不安定なので出ることも出来ない。
そんな元瀬だが勝則さんとの話で出ていたプログラミングスクールの事を調べていた。
・3ヶ月でエンジニア
・就職支援
・最新の技術を学べる
・現役のエンジニアに教えてもらえる
………
……
…
昨今エンジニアを目指す人が多くプログラミングスクールは割とあるようだ。
元瀬は考えていた。もともと大学は文系の学部を卒業した彼女であるが、プログラミングはやったことがなく不利ではないか、本当に就職出来るのか…
「決めた」
元瀬は一人呟いた。
翌朝の事だ。元瀬は珍しく、パチスロに行かなかった。母親らしき女性が一人家にいる時間を狙い元背は部屋から出た。平日の朝だ。他の家族は仕事のために既に居ない。
「あなた…居たのね。もうフラフラしないで働いて」
元瀬は彼女のお説教が口から出る前に言葉を遮り、言い放っだ。
「働く。だけど、働くために時間とお金が欲しい。私はプログラミングスクールに行って勉強して働く。」
言われた方は少し黙った。考えてるようだ。
「本当…?」
「本当に。だからスクールに行くお金と時間を頂戴。期限は半年、お金は80万。」
「わかったわ…お金は何とかする。半年だけだからね。約束だからね。」
女性は元背を睨むつけていた。その顔は殺気に溢れていた。だが元瀬は慣れている。この女性は昔から自分が気に入らないことがあるとする顔に。
「んじゃ、わたしは申込みだの何だのするわ」
そう言ってまた彼女は、そそくさと自室に籠もったのだ。本当は一晩悩んで固めた決意。
寝ずに考えた答え。申込みをすると言っていたが朝日の暖かな日差しに誘われた、寝てからでいいやと彼女はベッドに入り眠りに着いた。
この家を出るという決意と布団を抱いて…
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