第一章(裏) ニート エンジニアになる
第9話 ニート 不安になる
色んな音が鳴り響く…。タマが打ち出る音、釘に当たる音…。コインを取る、入れる、ドラムが回る音…
ここはパチスロ店だ。その中でスロットを打っている女性、女性に近寄る男。男は女性に気づいて彼女がスロットのスタートレバーを倒す前に肩を叩いた。
「元瀬、久しぶりじゃん」
彼女は振り向いてから耳に付けていたイヤホンを外して言った。
「おひさ~、
「飯行かないか?」
彼女は時計を見たら既に15時になっていた。朝からずっと打ちっ放しで本日は流れがないのかあまり出ていないようだ。
「いいですね。行きましょう。預けて来るんで適当に店入っててくだせい」
「りょーかい。じゃ、先に店選んで入ってるわ」
ガラッ
居酒屋のドアが開いた。勝則さんはカウンターに座って煙草を吸いつつメニューを見ていたが元瀬が来たのに気づいて手を上げて挨拶した。
彼女は勝則さんの横に座りつつ話し始めた。
「遅くなりました~」
「迷わなかったか?」
「子供じゃあるまいし、ここら辺はパチスロで来るんでわかりますよ」
「そっか。お前レモンサワーで良かったよな?」
既にビールとレモンサワーがカウンターに置かれていた。
「あざーっす。では早速、乾杯」
「乾杯」
二人はジョッキとグラスを打ち鳴らし、ごくごくと軽く飲み始めた。長年の付き合いがある二人だが、久しぶりの再会である二人は近況を話し始めた。
「元瀬はまだパチスロニートしてんの?」
「ですです。働きたくないです。ニートが至高。」
「でも、パチスロで稼ぐために店舗、台を調べて開店前から整理券の列に並ぶし、閉店まで打つってニートじゃないでしょ…」
「求職もしてないし、定職についてないからニートですよ…」
彼女は痛いところを突かれた。開店から閉店までパチスロをやるし、整理券を貰うために朝早く起きる。たまに遠征して遠くの店舗に行くこともあるし、新台が出たらチェックする。仕事と考えたら普通の勤め人より働いているように思える。元瀬はバッグから取り出した煙草を吸い始めた。そんな彼女に勝則さんは追い打ちをかけるように話した。
「でも一日12時間、30日労働として計算、時給は計算しやすいように1,000円にしたら日給1万2,000円、月給にしたら36万だよ。しかもかなりの悪いとマイナスの時がある訳だ。」
「でも、ニートだと親の扶養に入れるから保険料も支払わずに済みますし、親の税金対策になります。」
あー言えばこー言う。彼女は出来るだけ普通に働きたくはないのだろう。ニートでありたいというか自由に過ごしたいのだろうと感じさせられる。
二人の酒と煙草を進む。
「元瀬はまだ実家だろ?色々とあったのだから家を出たらどうだ?実際パチスロやってるのだって家に居たくないからだろ?」
「ニートでありたいのは私の本音ですよ。でも、確かに家には居たくないです。」
「そうだ。プログラミングスクールって知ってる?」
「プログラミングスクールって…私プログラミングなんて大学は情報系じゃないから知りませんよ」
「それを教えてもらうために行くんだろ?」
「折角久しぶりに会ってお酒飲んでるんですからやめましょうや。生活指導の先生じゃあるまいし…」
そんなやり取りをしつつ、酒と煙草が進んでいく。15時過ぎから飲み始めて、店の外は夜の空気に変わっていて店内も賑やかになって来ていた。二人はそんな空気を感じ取ったのかお開きにすることにした。
「勝則さんゴチです」
「いいよ、ニートな元瀬を誘ったのは俺だしね。就職したら奢れよ。」
いつもの二人のやり取りだ。二人は別方向に歩き出し帰路に着く。
元瀬は勝則さんに定職についてない事、実家の事を言われて不安を煽られた事を思い出す。その中で言われた『プログラミングスクール』が頭に浮かんで来たので電車の中で調べてみた。
するとあるWebサイトを見つけた。
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