第2話 3ヶ月で一人前?

「お疲れさまです。」


 翔太郎しょうたろうくんは更衣室でまだ着替えているみんなにそう言って職場を後にした。


彼は朝の喫煙室で勝則かつのりさんが言ったについて、頭に引っかかっていた。スマホで調べつつ帰路に着いた。

 少し前はみんな学生で翔太郎しょうたろうくんだけが社会人で年収なんか気にしてなかった。


だが、いざ友人達が社会人になって大学を卒業してる、してないだけで年収にそんな開きがあるとは思ってみなかった。


「お兄ちゃん、スマホ弄りつつご飯食べないでよ。行儀悪いし、早くご飯食べて。食器洗って勉強したいんだよ。」


「ごめん、ごめん。少し考え事してて…」


翔太郎しょうたろうも色を知る歳か…」


「お父さん、やめてよ。年頃の娘が居る場所で言うことじゃないよ。そのうち会社でセクハラで訴えられるよ。それにお兄ちゃんに彼女なんて出来るわけないでしょ。」


 辛辣な言葉を翔太郎しょうたろうくん言い放ったのは高校2年生になる妹、詠美えいみだ。セクハラ発言をしたのは中小企業で働いている父のひろが居る。母については翔太郎しょうたろうくんの母は10歳の時に天国に行ったのだ。

 それから父のひろ翔太郎しょうたろうくんと詠美えいみを一人で育てくれた。


 翔太郎しょうたろうくんは「家族には迷惑を掛けたくない」と進学することは考えずに高校を卒業してから地元の工場で働くことにしたのだ。


 父は男手一つで子供を育てていたので出世とは無縁だ。どんな仕事よりも翔太郎しょうたろうくん達、家族を優先した結果だ。


 妹の詠美えいみが「進学したい」と言った時に、自分が進学したせいで家計を圧迫して妹の進学を阻むかもしれないと考えて進学しなかった。実際、詠美えいみは学校での成績は良く、進学する事になるだろうと翔太郎しょうたろうくんは考えている。


「ごちそうさま」


そう言って、翔太郎しょうたろうくんは食器を下げて自室に籠もった。


【高卒 年収🔍】

【高卒 転職🔍】

………

……


 ベッドの上でスマホ片手に翔太郎しょうたろうくんは自分と同じ高卒の年収などを調べている。

「高卒、大卒の生涯年収の違い」「高卒は出世出来ない」…


「はぁ…高卒で良いことはないのかな…」

翔太郎しょうたろうくんは深い溜め息とともにこぼした。


【3ヶ月でエンジニアになれる!】

そんな広告が彼の目に止まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る