第49話 最低な決断!!
俺は海がよく見える浜辺で1人座り込み、打ち寄せる潮を眺めながらボーっとする。
別に何かを考えるためにここに来たわけではない、むしろ無になりたかった。
俺が抱えている問題を吐き出すかのように、長いため息を何度も、何度も海に向かって吐く。
自分の気持ちとは裏腹に、今日の天気は晴天。雲ひとつない青空が広がっている。
「これが青春、いや、青夏ってやつか……?」
もし、今俺が置かれている状況が青春と言うのであれば、経験するべきではない代物だ。
自分自身の気持ちは俺が一番理解しているはず、だった。
だが周りから見た俺の感情は俺が思っているものとは全くの別物。
自分が誰で、自分が何なのか、そんな事を思うとうつ病になってしまいそうだ。
「光子も同じ気持ちでいんのかな……」
また光子の事を考えている自分がいる。
国光先輩が言っていたように、俺は自分に嘘をついていたのかもしれない。
光子の気持ちに本当は気づいていたのか? それを無意識のうちに分かっていないフリをしていたんだろうか。
そもそも俺にとって幼馴染とは何なのか、恋人とは何なのか、その線引きすら今はあやふやになってしまっている。
俺の本当に好きな人は誰で、俺が本当に彼女にしたい人は誰で、俺が本当に一緒にいたいのは誰なのか。脳内はぐちゃぐちゃに絡まり合い、ショートした。
俺は最低な人間だ。
国光先輩はどんな気持ちだったのだろう。目の前の恋敵に、光子と話し合ってください、と言われた時、国光先輩の前で俺が光子と仲良くしていた時。
その答えは分かりきっている。心底辛かったに決まっているのだ。だが彼は半年という長い期間耐え続けた。
俺はいっその事、このまま海に沈む貝になりたい。
自分が貝になりたいと思う時がくるなんて想像もしていなかった。
「……ウワァァァァアァ!!!!」
俺は来ている無地のTシャツを脱ぎ捨て、海に身を委ねた。
押し寄せる波はまるで国光先輩の怒りを具現化したように、何度も何度も当たってくる。
きっとこれは、国光先輩が半年間、ずっと感じていた感情なのだろう。
自然と涙が溢れ出す。
泣いたのなんて何年ぶりだろうか。記憶が戻った時すら泣かなかったのに。
高波に体は戻され続け、俺は砂浜で横になった。
ああ、俺、この先光子にどんな顔して話せばいいんだろう……。
照りつける日の光を感じながら、倒れていると、人の影が俺の顔を覆った。
「恋次君、大丈夫?」
瞳ちゃんだった。
1人になりたいと思っていた俺は、瞳ちゃんを見て安心した。
罪悪感から少しでも逃れるために、俺は別荘から抜け出す、と言う形で無自覚にも自分の反省を周りにアピールしていたらしい。
それなのに、目の前に瞳ちゃんが現れて安心するなんて、本当に最低な人間だ。
俺はただ、悲劇の主人公を演じて誰かに慰めてもらいたいだけだったのだ。
それを知りつつ、俺は瞳ちゃんの善意に甘えた。
「瞳ちゃん……大好きだ、俺と付き合ってくれ」
瞳ちゃんに告白すると言う、最低最悪の形で。
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