第46話 幼馴染の失恋!!

「急にどうしたんだよ光子?」


 光子の目からは大粒の涙が無限に溢れ出ている。


 脱水症状を心配するレベルにだ。

  

 これはただ事じゃ無い、と思い、光子を引っ張って2人きりになった。


「どうした光子? 何があったんだ?」


 俺は優しく、光子の目線に合わせて話す。


「……えっッグ、ヴっうう……」


 どうにも話せる状態ではなさそうだ。


 心配した学と瞳ちゃんがこちらに寄ってきた。


「みっちゃん大丈夫?」


「光子ちゃんどうしたの?」


「今話せる状態じゃなさそうなんだ。1度、2人きりにしてくれないか?」


「わかった……」


 2人とも心配そうな顔を浮かべながらも、五十嵐と恋歌がいる方へ戻って行った。


 ただ、瞳ちゃんは心配そうとは別に、何か思い当たる節がありそうな感じであった。


「……」


 光子はただ俯いて、俺の体にしがみついている。


 ぎゅっと力が入っており、光子の精神状態が不安定なのは確実だ。


 しかし、俺は光子が顔を上げるまで待ち続けた。ただ、体を光子に貸しながらずっと。


「……恋ちゃん」


 光子は5分ほどして、ようやく口を開いた、


「どうした?」


「ごめんね。甘えちゃって」


 いつもの元気はどこへ行ったのか、光子の声に覇気は感じられない。


「気にすんなよ別に」


 俺は光子に何がったか、2度目は聞かない。いや正直に言うと、聞くのが怖い。


 情けない話だが、光子がこんな状態になっているのは初めて見る。


「あのね……」


「うん」


 俺が聞きたくなくても、聞かなければいけないのが俺の運命。


 昔からそうだ、聞きたくも無いことをグダグダと聞かされ、俺はハイハイと答える。


 だが今回に限ってはそうは行かない。本気の悩みだろうから。


 本気には本気で返すのが男であろう。


「私……国光先輩にフラれた」


「……」


 何も言えない。冗談抜きで何も伝える言葉が見当たらない。


「花火が上がった瞬間にね、来年も来ようって言ったの」


 さすが恋歌の師匠だな。考えてる事が同じだ。


「そしたら急に、国光先輩が泣き出して……」


 あの人、何や感や言ってメンタル弱いもんな。


「僕たち別れようって」


「そっか……」


 ごめん! さっきの本気には本気で答えるは嘘! 本気で考えた結果、答えなんて出ないっす!


「私、国光先輩に嫌われるような事したかな?」


 まぁ俺が彼氏だったら光子の恋愛脳は嫌なことしかないけど……。


 国光先輩も重度の恋愛脳だからな。


「さ、さぁね」


 さっき2人きりにしてくれ、ってカッコつけて言ったの無し! 助けて学くーん、瞳チャーン!


「やっぱり私って重いのかなぁ? いつも恋愛、恋愛言ってるし」


 もっと重い死神が俺の横には居るから何とも言えないけど? 可愛い方だろ、恋愛、恋愛だったら。死神は、Love or Deathだからね。俺、君達の知らないところでデスゲームしてるんだから。


「光子、大丈夫だよ。ちゃんと国光先輩と話そ?」


「国光先輩はもう話したくない、って言って帰った」


 光子は未だに下を向いている。


「帰った、って。フェリーも出てないし、この辺りに」


「東京に帰るために空港行った」


 帰るってそっち!? いやいや急すぎんだろ。


「いや、荷物だって……」


「昨日荷物まとめてた。多分、今日朝一で郵送したんだと思う」


 お前同じ部屋だろぉー!! 彼氏にもっと興味もてぇー!!


「で、でももう明日まで、飛行機も飛んでないだろうし、今空港に行けば……」


「会いたくないの!! わかってよ!! 幼馴染でしょ!?」


 光子は急に声を荒げる。


「ご、ごめん」


「私、どうすればいいの……」


 光子は初めて顔を上げた。


 涙でぐちゃぐちゃに落ちた化粧、髪も乱れている。


 何だよ、夏祭りは女の子を3倍可愛く見せるって言ったのはお前だろ……。


「光子、立てるか?」


 俺はそんな光子の顔を見て、ジッとしている事は出来なかった。


 幼馴染の早乙女光子に、こんな顔をさせておく訳にはいかないと。


「瞳ちゃん! ちょっとこっち来て!」


 俺は瞳ちゃんを呼ぶ。


「どうしたの?」


「ちょっと空港行って来るから! 光子の事よろしく頼むよ」


「え!? 空港?」


「うん!」


「……それ、恋次君が行かなきゃダメな問題なの? これは光子ちゃんと国光君の問題なんじゃ……」


 やっぱり瞳ちゃんは勘付いていたんだな。


「そうかもね。でも俺にはよく分かんない、まだ恋愛教に入信してないからさっ!」


「恋愛教? 恋次君が空港に行くなら私も……」


「ダメだ! 光子を1人にしないであげてくれ」


「恋次君……」


「頼んだよ、瞳ちゃん」


 不安そうな顔をする瞳ちゃんの顔も少し凛々しい表情になった。


「わかった! 頑張ってね!」


「おう! 何たって俺は、光子の幼馴染だからな!」

 

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