第27話 所持金ゼロでも大丈夫ですか!?

 俺が指輪を貰ってから1週間が過ぎた。俺は毎日指輪を眺めている。


「なぁ恋次、いい加減その気持ち悪いニヤケ顔で指輪眺めるのやめたら? 変質者みたいだよ」


「あぁ? 俺のどこが変質者なんだよ。普通、女子から指輪貰ったら1ヶ月間は舐め回すように見つめ続けるだろ」


「いや、僕は指輪を貰ったことがないからわからないけど、多分違うと思う。普通はお返しとかするんじゃないかな?」


 はっっ! お、お返し!!


「な、なぁ学! お返しってどのくらいの期間で返さないとまずいかな!? 俺ってもう手遅れだったりする!?」


 俺は指輪を貰えた事実が嬉し過ぎて、これがプレゼントだと言う事を忘れていた。プレゼントは貰ったら返す、これが常識。


 ま、まさか、瞳ちゃん俺のこと常識ない奴だと思ってるんじゃ……。


「常識ない変人でしょ」


「俺の心の声を読むな!!」


 俺はプレゼント返し計画を学に手伝ってもらう事にした。


 でも今回はやけにすんなりと手伝ってくれるんだな学のやつ……。


「まずは何を返すかを決めよう」


「チョコだろチョコ」


「恋次は変態のくせに脳みそは小学校で止まってるんだね」


「なんだと!? じゃあ学なら何贈るんだよ?」


「指輪を貰ったなら、イヤリングとかかな?」


 イヤリング……、


 俺は買い物に出かけた日、瞳ちゃんがリサイクルショップで付けたイヤリング姿を思い浮かべる。


 可愛かったなぁー、あの時の瞳ちゃん……。


「また気持ち悪いニヤケ顔して。とにかく、高校生にもなって指輪のお返しがお菓子はありえないよ!」


 あり、あり、アリエナーイ!!


「わ、わかったよ。イヤリングをあげればいいんだな? 学、金貨してくれ」


「……、恋次、俺も同じ事言おうとしてた」


 俺達はスッカラカンになった財布を互いに見せ合い涙した。


 学も五十嵐に何かプレゼントをあげようと思っていたらしく、俺から金を貸してもらう口実の為、プレゼント返し計画に協力しようとしたそうだ。


「ちなみに聞くけど、五十嵐の所持金は?」


「んー、確か3桁って言ってたような」


 最大でも999円!?


「じゃ、じゃあ国光先輩は?」


「んー、確か国光先輩も3桁って言ってたような」


 あの人も最大999円!? 


「じゃあ光子は……?」


「恋ちゃーん! お金貨してぇー!!」


 光子が泣きながら俺と学の部屋に入って来た。


 はぁ、こいつも所持金ほぼゼロか……。


 俺は頭を抱えた。


 恋歌が持ってる訳ないし、瞳ちゃんは大学生だし結構持ってると思うけど、そもそも瞳ちゃんへのプレゼントなのに瞳ちゃんにお金を借りたらそれはただの自己投資だ。


 どうしよう、てか俺ら3日後の食費さえ危ういんじゃ……?


 俺は早急に皆んなをリビングに集めた。


「よし皆んな集まったな。悪いが全員自分が持ってるお金の額を言ってくれ。俺らの生死に関わってくる問題だ、嘘のないように! ちなみに俺は19円だ!」


「はぁ、なんでそんな偉そうに威張れるんだ恋次は。僕は1200円」


「妾は190円。オンラインで映画見過ぎたんじゃ」


「師匠! 僕は990円あるよ!」


「私は20円……」


「私は一応3万2千円あるけれど」


 さすが瞳ちゃん! 賢い人はお金の使い方も賢いんだな!


「私は……」


「ああ、恋歌お前は言わなくて大丈夫だ。どうせ持ってないだろ」


「ブゥー。おにーちゃんは今時の中学生を舐めすぎだよぉー! 私だって5万円持ってるんだから!」


 はっはっは、5、ん? 5、0、0、0、0……、5万!?


 俺は目ん玉が飛び出るほど驚いた。


「ご、ご、五万ってお前、俺の所持金の約2632倍じゃねぇか!! そんな大金をどうして……」


「エッヘッヘー。お父さんから中学進学祝いに貰ったんだぁー。なにに使おうかなぁー」


 あんのクソ親父ぃー!! 俺が中学行った時はシャーペンだっただろうが! 


「おーい、恋次ー。話が逸れてるぞー」


「あ、ああスマンスマン。兎に角、俺達は今、財政危機に面している。だから、今日から本島の海に行ってバイトしよう!」


「パス」


「パス」


「パス」


「パス」


「パス」


 お前らちょっとは危機意識持てよぉー、あぁん!?


 それに金持ってる瞳ちゃんと恋歌は良いとして他3人に拒否権なんてねぇんだよ!!


「ごめん、僕は本当に行けないや。受験勉強が忙しくてね」


「私も中学生だからバイトは」


「わかった。でもな、光子と五十嵐! テメェらは逃さねぇぞ!? 所持金20円でどうやってで残り3週間生き抜くつもりだぁ?」


「そ、それは……、恋ちゃんのバイト代……」


「よし学、光子の足持て。こいつ沖縄の海に沈めんぞ」


「お、お助けぇー!」


 バイトが嫌で泣きじゃくる光子を俺は無理やり連れて本島へ繰り出す。ちなみに五十嵐は学が説得した。


 海の家バイトは戦場だ。どれだけ客を引っ張って来れるか、楽しませられるか、が俺達の給料につながる! 国光先輩の分も稼がなきゃ行けないんだ。全力でやってやる!


「皆んな、行くぞぉー!!」


「……」


 誰か返事してぇ……。


 チームワークバラバラ、俺達の夏サバイバルが今始まる!!

 

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