第25話 謝罪は気まづさを加速させる!?

 瞳ちゃんの部屋の前で深呼吸を4、5回繰り返す。


 ふぅー!!


 ドアを3回ノックする。


「ひ、瞳ちゃん! ちょっといいかな……」


「……」


 瞳ちゃんからの返事は無い。


 ま、まさか! あんあな事があったし、もう俺の顔が見たく無いとか!? 嘘だろおい、俺の恋もう終了!? 


 昨日再開して今日嫌われるとは、と自分の境遇を悔いた。


「今日の事謝りたくて……、別に出てきてくれなくてもいい、聞いてくれ! 本当ごめん! わざとじゃ無いんだ! 瞳ちゃんが今日の事で俺を嫌いになっても当然だと思ってる。でも……、俺は瞳ちゃんともっと仲良くしたいと思ってる!」


「……」


 相変わらず瞳ちゃんからの返事は無い。


 あぁー神様。何故あなたは僕に試練を与え続けるのでしょうか。


 勢いよく瞳ちゃんの部屋のドアが開く。ドアの前に立っていた俺の鼻柱にドアが直撃。


「グッッウォオ」


 痛みで悶絶する俺。


「あっ! ご、ごめん恋次君。大丈夫……じゃないよね?」


「だ、大丈夫だよ瞳ちゃん。俺が今日瞳ちゃんにした事に比べれば、鼻の痛みなんて大した事ない」


 本当はスッゲェ痛ぇけど。


 俺は鼻を押さえて鼻血が出ないように誤魔化しながら瞳ちゃんと話す。


「出てきてくれてありがとう。今日は本当にごめんなさい!」


「……」


 瞳ちゃんは少し沈黙する。この間が怖くて仕方ない。


「……、正直に言うと、あれが恋次君でよかったかな」


 え? それって……、


「やっぱり男の子にあんな事されるのは恥ずかしいけど、恋次君だったから許す!」


 照れ臭そうに頬を桜色に染めて話す瞳ちゃん。


 こ、これってつまり……、瞳ちゃんは俺の事がだからおっぱいに顔を埋められても平気、って事!?


「あっ! 今の言い方だと語弊があるかもしれないけど、昔の頃から恋次君の事知ってるから姉弟みたいな感じで……」


 あ、そっちね! もうこの際、許してくれるならそれでもいいやー。


「本当にごめん……」


 俺はもう1度念を押して謝る。


「全然気にしてないから大丈夫だよ。おやすみ」


 瞳ちゃんの清楚スマイルから放たれるの言葉は破壊力抜群だ。思わず永眠してしまいそうになる。


「う、うん。おやすみ」


 ゆっくりドアを閉めるが顔が見えなくなる最後の最後まで清楚スマイルだった。あれは作り笑顔ではない、きっと彼女はドアの向こうでも清楚スマイルでいるに違いない。


 そう思いながら、俺は救急箱を取りにリビングへ向かうのであった。


 あれ、救急箱ってどこに置いたっけ?


「おはよう恋次、どうしたんだその鼻?」


 朝起きると俺の鼻は内出血を起こして浅黒く変色していた。


「ちょっとな……」


 1階へ降りると光子と瞳ちゃんがソファーに座りながら話していた。


 正直俺は瞳ちゃんと話すはなんとなく気まづい。すぐに目があったが瞳ちゃんはすぐに目を逸らした。


 やっぱり昨日は気にしてないって言ってたけど、向こうも気まづいみたいだな……。


 そんな瞳ちゃんとは別に光子はいつも以上に上機嫌だ。


「おっはよーう! 恋ちゃん、マナブッチ!」


 こいつ森にいた時は不機嫌だったくせに……、感情の上げ下げどうなってんだよ。気分上下上下か!!


 正直俺は光子ともなんとなく気まづい。国光先輩より先に光子と鳥居を潜ってしまった事に罪悪感を感じるから。


「よ、よぉ光子、と瞳ちゃん……、おはよう……」


「お、おはよう……、恋次君……」


 瞳ちゃんと俺の顔は真っ赤だ。


 そんな様子を見て光子は


「ん? 何かあったの?」


「は、はぁ!? な、何のことだよ!? お、俺は別に昨日夜何もしてねぇけど!?」


「わ、私も何もしてないからね光子ちゃん!」


 光子の奴……、『これだから勘が鋭いガキは嫌いでね』。


「な、なに急に2人とも慌てちゃって。私、ただ恋ちゃんの鼻のこと聞いたんだけど…… 」


 そ、そっちかーい!! いや確かにニアピンだし勝手に勘違いした俺らが悪いんだけど! 今の感じだと、ぎこちない俺と瞳ちゃんに対する質問かと思っちゃうやないかい!!


「あ、この鼻か? まぁ、男の勲章……、みたいなもんさ」


「なーにカッコつけてんだか」


 はっ! この傷は瞳ちゃんに許してもらう為の代償。痛くも痒くもないぜ。


「それよりさっ! 今日、本島に出て買い物に付き合って欲しいんだけど!」


「は? 何で俺が。国光先輩といけよ」


「いいじゃん! く、国光先輩は受験勉強もあるし! ねっ! 行こ?」


 なるほど、国光先輩の誕生日プレゼントを買いに行くんだな? それなら行ってやるか。


「しょうがねぇな。じゃあ6人で行くか」


「あ、僕と五十嵐さんは無理だよ。今日は新作の映画を2本ここで見るから」


 くぉんのリア充がぁーーー!! まぁいい。今の俺には瞳ちゃんがいる。学があの歴史変人とくっ付こうがもう関係ねぇ。


「そういえば恋歌は?」


「れ、恋歌ちゃんならつ、釣りに出かけたわよー」


「釣り!? 恋歌が? ちょっと恋歌の部屋見てくるわ」


「い、いや! あ、兄だからって女子の部屋を覗くのは最低よ!」


 ……、ま、それもそうだな。でも何で光子の奴こんなに動揺してんだ? 


「じゃあ3人で行くか」


 正直この2人との気まづさどうにかしたいと思ってたし、そのチャンスをくれたんだ。楽しまなきゃ。


 瞳ちゃんと光子は嬉しそうに互いの顔を見て笑いあっている。そして俺の本心もゲスの笑い声を高らかに上げていた。


 デュフフフフフフ。1人性格に問題はあるが、それでも美少女2人と買い物デートとは。まさに両手に花。他の観光客に自慢しながら歩き散らかしてやる!


 ガーーーハッハッハ!!!


 

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