第24話 ラブコメは突然訪れる!?
光子の持っている懐中電灯の光が向けられ始めて瞳ちゃんの表情を確認する。めちゃくちゃに頬を赤くして、明らかに恥ずかしがっている。
あとで土下座して謝ろう。男のプライドなど微塵もない。俺はおっぱいの誘惑に負けたのだから。
「で、なんで皆んなコソコソ草むらに隠れてたの?」
「そ、それは……」
「恋ちゃんが説明して!」
学が説明しようとしたところ光子は怒った様子で俺に説明を求めて来た。
うっわぁー、光子の奴めっちや怒ってんじゃん。俺らが隠れてるの知ってて国光先輩にもあんな態度取ってたのか……?
「ま、まぁまぁ光子、そんなに怒らずに聞いてくれ。ただ俺達はお前と国光先輩を見守りたくてだな……」
「ふーーん? それで男女で密着して草むらに隠れてたんだぁ?」
「いやいや、全員が同じ草むらになったのは不可抗力だ!」
「あっそう。じゃあ私と国光先輩が鳥居を潜るとこしっかり見てて。行くよ国光先輩!」
光子はキレ気味に国光先輩の腕を引っ張り、赤の鳥居に近づいて行く。
今の俺の頭の中は瞳ちゃんが今朝言っていた鳥居の噂を思い出していた。
「ちょ、ちょっと待てよ光子! お、お前なにキレてんだよ? お前らしくない。たかが草むらに隠れて覗いてただけじゃねぇか」
鳥居にあと3歩ほどの距離で光子の足は止まる。
「どういう意味? 覗きなんてされたら誰でも怒ると思うけど」
「は? 今更なに言ってんだよお前。散々恋愛について語ってたお前がまさか、国光先輩と2人の所を見られるのは恥ずかしいってか?」
ヤメろ……、ヤメろ……、ヤメろ! 俺は何言ってんだ! さっさと光子と国光先輩を鳥居に。
俺は自分でも何故、光子と国光先輩が鳥居を潜るのを足止めしているのか分からない。ただ、気づいたら勝手に声を出して光子達を足止めしてしまっていた。
「恋次、隠れて覗いてた僕らの方に非があるのは明らかだ、その辺に……」
学に肩を叩かれ少し落ち着く。
「……、邪魔して悪かったな光子。さぁ、皆んなが見てる前で鳥居を潜ってくれ……」
なんなんだよこのモヤモヤした気持ち。
「……」
光子は黙って俺の顔をまじまじと見ている。きっと怒っているに違いない。光子が大好きな恋愛の噂の雰囲気を俺がぶち壊したのだから。
「み、光子? 鳥居潜ろ?」
「……、やーめたっ!」
「な!? ど、どういう事だよ光子? 一緒に鳥居潜ろうよ。それが肝試しの目的なんだし」
「だって、こんな雰囲気で恋愛の鳥居潜っても縁起悪そうじゃん。また今度にしよ国光先輩」
「で、でも……」
俺は光子の方に歩いて行く。自分でも何をしているのかわからない。さっきまでは光子と国光先輩を足止めしていたのに。
「な、なに? 恋ちゃんどうしたの!?」
「……」
俺は足止めした罪悪感からか、俺のせいで2人がこの鳥居を潜らない事が嫌だった。2人の腕を引っ張り、鳥居を潜らせるように2人を放り投げようとしたその瞬間、
「うわっ!」
「キャっ!」
この日一番の強風が吹きつけ、俺は体をよろめかせ倒れた。俺だけじゃない、他の皆んなも体を屈めたり、腕で風を避けたりしている。
俺は仕切り直し、すぐに光子の腕と国光先輩の腕を取ろうとした。光子の腕はすぐ隣にあるが国光先輩の腕はない。
後ろを振り返り国光先輩を見ると、赤い鳥居の向こう側にいる。そして俺と光子は強風に飛ばされ、国光先輩から見て鳥居の外側にいた。(鳥居を2人同時にくぐると、そのカップルは生涯安泰なんだって)。
状況はすぐに飲み込めた。俺と光子が強風に飛ばされ、一緒に鳥居を潜ってしまったのだ。
俺は時空が捻じ曲がったかのように、全ての動きがスローモーションで行われた。
「光子! 師匠! 大丈夫!?」
倒れた俺たちを心配して、国光先輩が後を追うように鳥居をまたいできた。
や、やばいってこれ。他の5人を見ても全員声を失っている。これから始まる修羅場ってやつを想像しているからなのだろうか。
「そ、それより先輩……、ご、ごめ」
「さ、国光先輩! 仕切り直して鳥居を一緒に潜りましょっ!」
へ!? ま、まさか光子は俺と鳥居を潜ってしまった事に気付いていないのか?
「で、でもさっきはまた今度って。それに怪我はないの?」
「ヘーキヘーキ」
つい先ほどまで不機嫌だった光子が何故か機嫌が良くなっている。理由はさっぱりわからない。
他の5人も最悪な事態を回避した事による安堵か、談話している。
そして光子と国光先輩は俺達5人が見てる前で鳥居を潜った。
森の外へ出て貸し別荘までの帰り道。光子はやけにテンションが高く、嬉しそうにしている。国光先輩と鳥居を潜れてそれ程嬉しかったのだろう。
他の4人も普通な様子だったが瞳ちゃんだけは、どこか元気がない。
瞳ちゃんどうした……、わ、忘れてたぁ!! 俺、瞳ちゃんにセクハラすれすれの事をしでかしたんだった!(セクハラです)
どうしよう。さすがに皆んながいる前で『おっぱいに顔埋めてすいませんでした!」なんて言えないし……。別荘についたら部屋に土下座しに行こう!
こうして俺達は別荘についた。
「はぁー疲れたぁー。恋次、僕はもう寝るよ」
肝試しで思いのほか疲れたのだろう、皆んな帰ってきてそうそう部屋に直行する。
ラッキー、今しかない!
俺は部屋には戻らず瞳ちゃんの部屋に行こうとすると。
「師匠! 僕は負けないよ……」
突然、国光先輩が真剣な顔で訳の分からない事を言ってきたが俺は今それどころではない。俺は失礼だとは思いつつも国光先輩を無視する形で瞳ちゃんのドアの前に立った。
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