第23話 ラッキースケベは存在しない!?
なんとか光子と国光先輩にバレる事なくやり過ごした俺たちは、息を殺して光子達の会話を聞く。
「やっと見つかったね」
「光子は本当に怖いもの無しなんだな。俺はもう風がビュービュー吹いてるのが怖くて怖くて」
「ふふ、国光先輩って意外と子供よね」
ただの普通の会話をしている2人だが、何故か聞いている自分が恥ずかしくなってくる。
17年間一緒にいた幼馴染が、目の前で彼氏とイチャコラしているのである。そりゃあもう、胸が苦しくなると言うか、家族の彼氏を見ている感じで親近感が湧いてしまう。
「じゃあ光子、潜ろうか」
「……、ちょっと待って。皆んなが来るまで待たない?」
ん? どうしたんだ光子?
一緒に隠れている他の4人が気づいているかはわからないが、俺は光子の声が、どこか寂しそうに聞こえた。
「え、どうして?」
「それは……、皆んなが見てる前で鳥居を潜った方が皆んなに祝福されて、御利益あがりそうじゃない」
「うーん、どうだろう。まぁ光子が待ちたいならそれでいいよ」
ちょっ、これどうするんだよ。俺達もう全員ここに居ますけど!? 全員見てるから今潜っても御利益マックスですよー!!
全員の前で鳥居を潜りたいと言う光子に対し、俺達は草むらの中にいる。
「これはもう思い切って出て行くしかないよ恋次。誰が一番最初に草むらから出るか、多数決で決めよう」
学は小声で俺達に呼びかけた。
しかし俺は反対だ。多数決に反対な訳ではなく、そもそも出て行くこと自体に反対したい。国光先輩と2人切りの時の光子はいつもあんな感じなのだろうか。
俺が知ってる光子の声は、毎日ハッピーな感じが……、
そんな事を思っていたのも束の間。
「じゃあ多数決を取るよ。僕は恋次が出て行った方がいいと思うな。仲良いし」
「宇都宮殿。早乙女殿と仲よさそうだし……」
「おにーちゃん。お兄ちゃんだから。」
「恋次君。んーなんとなく?」
恐るべき日本の同調圧力!! これがイジメというやつなのか!?
「おい、理不尽すぎるだろお前ら。それに俺はもう少し様子を見た方がいいと……」
突然の強風、俺はよろめいた拍子に右隣にいる瞳ちゃんの方に倒れてしまった。
「キャア!」
「ん? 今声しなかった?」
「猫じゃない? 怖がりすぎだよ国光先輩!」
「また風だ、ごめん、ごめ……」
俺の手は柔らかいマシュマロのようなムニュっとした感触を覚えた。
暗くて何も見えていないが先ほど揉んだ五十嵐の肩とは違い、かなりの肉厚と弾力。
こ、これってまさか……、
「れ、恋次君、ど、どこ触ってるの!」
「く、暗くてわからなーい」
俺の手は万有引力の法則に従い瞳ちゃんのアレから自力で手を離すことができない。
「ちょっ、恋次君、は、離してくれないと、声が出ちゃう……」
「ご、ごめん瞳ちゃん、でも僕じゃどうにも。恋歌と学、早くどいてくれ」
強風によって倒れたのは俺だけではない。恋歌と学も同時に倒れていた。そして俺は瞳ちゃんにこいつら2人の体重を掛けてたまるかと、左手は地面に、右手は瞳ちゃんのアレに手をつけて腕立て伏せの体勢で耐えていたのだ。
「無理だ恋次。今動けば音でみっちゃん達にバレる。もう少し耐えろ」
「もう少しって後何分だよ。あいつらは俺らが来るまで待つんだろ?」
「僕達が先に来て帰った、と思えばすぐに鳥居潜って帰るだろ。かれこれ5分以上も待ってるんだ、そろそろみっちゃんも痺れを切らすはずだ」
な、なるほど、さ、さすがは学年トップ10の学力……、でもマジきつい……。
部活に入らず、ろくに筋トレもして来なかった俺が、2人分の体重を支えるも限度がある。持って残り3分だろう。
頼む光子! 帰ってくれ!
俺は切に願った。
「なぁ光子、もしかしたら他のペアは先に鳥居見つけて帰ったのかもしれないよ?」
よし! よく言った国光先輩! 俺の腕は限界だ。光子引きずってでもその鳥居潜ってくれ!
「それはないよ。待ってれば恋ちゃんのペアは絶対に来る。だから待とう」
はぁーーーー!?
「ごめん、もう無理……」
そのまま俺は倒れこんだ。倒れこんだ俺の顔の先にあるのは瞳ちゃんの小ぶりながら弾力のある2つのアレれ』……。
「キャァァァァァ!!!」
終わった。光子に隠れていたことがバレたなんて関係ない。俺の人生は終わった。何故ならば俺は今、初恋の人のアレに顔を埋めながらアレの包容力を感じ、アレに感謝しているのだから。
「やっぱり恋ちゃん達隠れてた! 何で隠れてたの?」
光子の奴、俺らが隠れてるの気づいてやがったのか。
ジャリジャリと音を立てながら足音と懐中電灯の光が近づいて来る。
やめろ光子、やめてくれ! 懐中電灯の光をこっちに向けないでくれぇー!!
「ってなんだ、5人全員いるじゃん」
……、あれ? 俺のこの状況気づかれてないのか?
光子だけじゃなく他の5人も気づいていない。草むらの中でもみくちゃになってる様にしか写ってないのだ。
俺はすぐ様立ち上がって瞳ちゃんへのラッキースケベを周りに諭さられないようにした。
あれをラッキースケベと呼んでいいのだろうか。否、現実の世界でラッキースケベなどそうそう起こりうるものではない!
俺はラッキースケベを自らの手で作り出したのだ。つまり今回のは必然的スケベと言ってもいい!
俺は変態だったらしい。ごちそうさまでした、と心の中で瞳ちゃんと瞳ちゃんの小振りなおっぱいに感謝の言葉を告げた。
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