第20話 ついに入信!?
「ねぇ光子ちゃん。ちなみに今日肝試しをする森って【久世森】じゃないよね?」
「んー、森の名前は分かんないけど、どうして?」
「それがね、この島に伝わる伝説? みたいなものなんだけど。昔【久世森】の中にある小さな鳥居をくぐったカップルが後日行方不明になったらしいの。そのせいで、鳥居を2人同時にくぐると、そのカップルは生涯安泰っていう変な噂が広まって、鳥居をくぐりに来る観光客が後を絶たなくなったのよ」
「何その私の脳を超くすぐる噂」
「でもね、その噂を聞きつけてやってきたカップル達が次々に行方不明になってるのよ。だから危ないんじゃ……」
「瞳ちゃん! 恋は常に危険と隣り合わせ、試練を乗り越えられたカップルだけが成功を掴めるんだよ!」
アホか。そもそも行方不明になったカップルがいたらどうして生涯安泰の噂になるんだよ。そんな事も考えられずに噂を信じて鳥居をくぐる奴らなんざ非リアの呪いで爆発したんだよ。
「そっか! わかった! まだ【久世森】と決まったわけじゃないけど頑張ろう光子ちゃん!」
絶対瞳ちゃんと鳥居潜ろう。
こうして俺は恥ずか死から立ち直れず、夜を迎えた。
「ここよ! ここが今日肝試しをする森よ!」
着いてきたはいいものの、この肝試しって具体的に何するんだよ……。
「どう瞳ちゃん? ここ【久世森】?」
「うん。ここら辺で大きい森って【久世森】しかないから多分そうじゃないかなぁ、とは思ってたけど」
「どーしたんだよ恋次? 元気ないぞ? まさか森に入る前からビビってんのか?」
「俺はお前が呑気に映画見てる間に恋愛脳2人によって俺の尊厳が失われたんだよ。しかも瞳ちゃんちょっと引いてたし……」
「ははは……、何があったかは知らないけど、どんまい!」
学のフォローもどことなく素っ気なく感じる。
こいつもどーせ五十嵐といい感じだからって俺を見下してんだ。チクショー!
今俺の心の中では全てのリア充が行方不明になれば世界は平和になると考えている。
そう思えば瞳ちゃんって付き合ってる人いるのかな? 聞くの忘れてた。
「あ、あのさぁ瞳ちゃん。瞳ちゃんって今つき……」
ちょ、ちょっと待て! 今もしここで俺が『付き合ってる人いるの?』なんて聞いたら俺が瞳ちゃんに好意を持ってる事がバレバレじゃないか!
「? どうしたの恋次君?」
「あ、いや。瞳ちゃんって今月見てた?」
「へ? 全然見てないけど?」
言い訳下手くそか俺!
「だ、だよねー」
「ほら、恋ちゃん、瞳ちゃん! 肝試しのルール説明ちゃんと聞いて!」
「わ、悪い……」
光子のやつ。そんな怒る必要ないだろ。たかが友達同士でやる肝試しに何ムキになってんだ。
「聞いてなかった2人にもう一回説明するよ。ルールは2人1組になって森の中にある鳥居を潜って帰って来る。それだけ、簡単でしょ?」
「ペアはどうやって決めんだよ? 好きなもん同士か?」
なんかしらの理由つけて瞳ちゃんとペアに!
「ペアはこれで決めるわ!」
光子は抽選箱に割り箸を7本取り出した。
「この割り箸に1、2、3の番号が書いてあるから同じ数字を引いた者同士がペアよ。1は3人分用意してあるから」
「なんだ、てっきり好きな者同士でペアを組ませて光子は国光先輩と組むのかと思ったよ」
「何言ってんの恋ちゃん! 偶然なったペアの方が雰囲気出るでしょうが!」
お前こそ彼氏の前で何言ってんのぉー? 見て! 国光先輩を見てあげて! ダンゴムシみたいに小さく丸まっちゃってるから!
「いいんだ。どうせ僕はラブコメの神様に嫌われてるんだ」
うわ超うぜー、国光先輩いじけると超ウゼェー。
まぁいい、ここまできたら運勝負! 絶対に瞳ちゃんとのペアを引き当ててやる。
ラブコメの神様、今まで恋愛教の勧誘を断ってきて申し訳ありませんでした。実は俺、今日のために入信しなかったんです。だから今日は俺からお願いします。恋愛教に入れてください!
「みんな選んだ? じゃあ一斉に引き抜くわよ。せーの!!」
コォォォォォォォォォォォイャァ!!!
「じゃあペアは私と国光先輩。恋ちゃんとマナブッチ、で3組ペアが恋歌ちゃん、すみれっち、瞳ちゃんだね」
「師匠やったよ! 僕はまだラブコメの神様に見放されてなかったようだ! あれ? 師匠?」
ラブコメの神様へ、もう一生入信しないので放っておいてください。
俺の隣で学も固まっている。ごめんな、五十嵐じゃなくて……。
夜風の冷たい風は俺達2人の冷え切った心に暖かく感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます