第19話 重大発表は勘違い!?
瞳ちゃんが加わり計7人で暮らす沖縄での夏休み。ここでも恋愛教への勧誘の魔の手は止まらなかったのである。
「皆んなちゅーもーく!!」
朝から大きい声で光子が全員に声をかけた。
「なんだよ光子朝っぱらからうるせぇなぁ。せっかくの夏休みなんだしもう少しダラダラしても」
「今、重大発表しないといけないの!!」
「発表って今日はどこかに行く日だっけ?」
思い出してもそんな予定は無い。変わった事と言えば、昨日から瞳ちゃんが同居し始めた事くらいだ。
「って! お、お前らまさか……」
昨日瞳ちゃんがやって来た以外にもう1つ変わった事、それは部屋割りである。
やべ! つい大きな声出ちまった。このタイミングで重大発表って......、もうそう言う事だよな? やっべぇー、幼馴染のそっち系とか全然聞きたくねぇ。
俺は耳を両手で塞ぐ。
「実は昨日の夜……」
モジモジし始める光子。
ああ、やっぱりそうだ。こいつら昨日遂に大人の世界へ……、
光子の甲高い声は耳を塞いでも聞こえてくる。
「肝試しできそうな森を発見したので今日肝試ししまーす!」
「……」
もういい……、お、俺は瞳ちゃんとしか話さない!!
「そもそも光子! 肝試しなんて夜からやるんだから今発表する必要ねぇだろ!!」
「あり? なんで恋ちゃんちょっとキレ気味?」
「そ、それは……」
「はっはーん、さては恋ちゃん幽霊怖いんだな?」
こいつがこういう性格で初めて良かったと思える。
「あ、ああそうだよ! で、なんで今発表しないといけなかったんだよ?」
「だって、肝試しなんて究極の恋愛イベントじゃん。『誰とペアになるんだろう』とか胸を高鳴らせてさ。そのドキドキ感が、恋愛効果を上昇させるのです!」
光子はドヤ顔で敬礼する。
はぁー、こいつがこういう性格だからいつも最悪だと思ってる。
「では、解散!」
夜に行う肝試しまで、皆自由行動を取る。五十嵐は夏休みの宿題、学はリンビングの大画面液晶テレビで映画鑑賞、国光先輩は大学に向けた受験勉強をしている? らしい。
「ちょっと恋ちゃん」
俺は皆んながバラバラになった後、小声で光子に呼ばれた。
「なんだよ。さっき私が重大発表するって言った時、絶対何か変な事考えてたでしょ」
心臓がドキッとした。
「ま、まっさかー。フーーフーー」
吹けない口笛を拭こうとして空気を出す音だけが漏れる。
「ふーん?」
光子はニヤニヤして俺を見る。こいつは自分の事以外になると勘が鋭いからな。おそらく俺が何を考えていたか、わかっていたのだろう。
「なんだよふーんって」
「私と国光先輩どこまでいったと思う?」
は!? なんだその質問いきなりすぎるだろ! しかも光子と国光先輩のアレなんて想像したくも無い! ここは無難に、
「そ、そりゃあもうお前達も付き合って半年以上だろ? き、キスぐらい、いってんだろ」
「……ッッッッッッッッッアハハハハハ」
光子はいきなり大爆笑をし始めた。
「な、なんだよ! キスくらいで大爆笑ってお前らまさかもう……」
まさかもう、あんな事やこんな事まで……、ああやめろ考えるな!
俺はしたくもない想像をしてしまい自分の頭を強く殴る。
「ッッッッね、ねぇ、私さ、私と国光先輩がどこまで森探しに行ったと思う? って質問したんだけど」
「…………」
沖縄の隙間風は涼しいなぁ。
俺はただその隙間風に吹かれながら呆然と立ち続けた。
顔は真っ青。人は本当に恥ずかしい時には顔が青白く変色するらしい。俺はいずれ光子によって恥ずか死させられる事を悟った。
「だ、大丈夫恋次君?」
ひ、瞳ちゃん! 君だけが俺の......
「おにーちゃん変態な事を考えた後はいつもこんな感じだから放っておいて大丈夫だよ」
「へ、へぇーそうなんだ......。じゃ、じゃあそっとしておくね......」
そして気にかけてくれた瞳ちゃんの行為を踏みにじるかの様な妹の不意打ちに俺はもう、立ち直ることができなさそうです。
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