恋の予感!?夏休み編

第10話 子供だけで沖縄なんてありえない!?

 高校2年生に上がってから色々あったせいか、俺は疲れ果てている。神すらも俺を恋愛教に洗脳しようとしているのだろうか。


 否! 圧倒的間違い! 俺は明日から自由だ! これから1ヶ月以上、あの恋愛脳バカと合わなくて済む! 夏休みサイクゥーー!! 


 扇風機の風の音を聞くだけで心が落ち着く。のどかな休日、こんな夢の様な日が残り37日もあるなんて夢みたいだ。


 コーラを注いだコップの結露は、飲み物の味を際立たせる。ポテトチップスを貪りながら漫画を読む生活。平和すぎる。いくら寝ても、いくらダラダラしていても誰にも文句は言われない。

 

 誰もが一度は夢見たはずだ、一生夏休みだったらいいのに、と。


 しかし! 俺の平和な日常は簡単に奪われる。だから俺は決めている、この夏休み、一度も外出しないと。


「恋次__話があるから下に降りて来てちょうだい」


 母さんに呼ばれ1階に降りると、ダイニングテーブルの椅子に父さんと妹も座っていた。


 家族会議か? 珍しいな。


 俺の家族全員が揃う機会は滅多にない。共働きで帰りが遅い父さんと、パートの仕事で土日も仕事に出ることが多い母さんだからしょうがないっちゃ、しょうがない事だが、そのせいで家族全員で話し合うのは稀である。


「どうしたんだよ、皆んな集まって」


「恋次、お父さんから話があるから聞いてちょうだい」


 母さんは不安げな顔をしている。


 ま、まさか離婚!? 共働きの夫婦の離婚率は高いって聞いてたけど……、まさかうちに限って。


「実はな、父さんと母さんは……」


 や、やっぱり!!


「ま、待てって! 早まるなよ父さん! まだやり直しきくって!」


 俺は父さんと母さん、どちらか1人なんて選べない。絶対離婚なんてさせないぞ!


「どうしたのお兄ちゃん、急に慌てて」


 3人はポカーンとしている。


「ゴホン、えー、恋次は何か思い違いをしている様だが実はな、父さんは沖縄にある別荘の1ヶ月間招待券をもらった。だが俺達には仕事がある。そこでだ、恋次、夏休みだし丁度いい、お前の友達を誘って1ヶ月間、沖縄に行って来なさい」


「その代わり恋歌も連れてってあげてね」


「やったー! 絶対光子さんは呼でよねお兄ちゃん!」


 は!? いやいや急すぎて話の展開について行けねぇよ! てか高校生だけで1ヶ月間沖縄行ってこいって親がどこにいるんだよ。友達誘っても絶対許可おりねぇだろ。


 俺はとりあえず光子、学、五十嵐、国光先輩の4人に連絡してみた。


 明後日に出発とか急すぎて絶対誰も来ないだろ。てか親が許さねぇよな絶対。


 こうして出発の日。


「いやぁー1ヶ月の旅行券を貰えるなんて恋ちゃんのお父さんは強運だねぇ」


「恋次、僕沖縄行ってみたかったんだよ! 誘ってくれてありがとう!」


「妾、中城城跡に行きたい……」


「師匠! これは恋愛合宿って事だよね!? ラブコメについて色々教えてくれ!」


 はい、全員来るフラグ立てた俺が間違いでしたぁー!! こいつらの親はどうなってんだ。普通子供だけで1ヶ月も旅行なんて許して……、はぁ、こいつらに普通を求めるのが間違いだったか。


「夏休みに男女で旅行なんて、絶対恋愛展開訪れるわよね! 楽しみだわ!」


 早速始まった……。そもそもお前、彼氏同伴だろ。


 しかも男は俺と学だけだし。何が恋愛展開だよ……。


 神様ぁ! 恋愛脳に囲まれない俺の平穏な夏休みを返してくれぇー!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る