第7話 いきなり作戦失敗!?
俺たちが一番初めに思いつた案は単純ではあるが、光子と距離を置く事。俺と光子の仲がそこまで良くない、と国光先輩が知れば誤解はとけるはずだ。
「でも本当にいいの? 小学校からずっと一緒だったんでしょ?」
「いいんだよ別に。もうあいつの恋愛理論を聞かなくて済むと思うとむしろ清々するね」
あれ? そう思えばあいつが恋愛脳バカになったのって、確か中学2年時何か事件が起きて......。ああ、クソッ! 思い出せない!
俺は光子が小学校の頃までは恋愛には興味無い普通の女の子だった事を覚えている。ただ、どのようにして恋愛脳が覚醒したのかは、はっきりとは覚えていなかった。
「恋ちゃん! 今日はどこでご飯食べるー?」
光子と五十嵐が昼休みになって俺の座る席に来た。
「今日は学と2人で食べるから、どっか行ってくれ」
冷たく冷たく。
「そ、そなたは妾たちと食べとうないのか? も、もしや妾の事が嫌いに……」
話をややこしくしようとするな五十嵐!
「い、いや……、それは……」
「今日は昨日見た映画の感想を2人で熱く語りたいんだよ。ごめんね五十嵐」
ナイスフォロー学様! やっぱり持つべきは親友!
「ほぉ、ちなみにどの映画を?」
「スピッツバーグ監督の新作『あの日のボクサーはフィクサー』だよ」
なんだよそのB級映画ですら見下す様なタイトルの映画は。誰が観んだよ。
「あの映画か! 妾も以前その映画をみて咽んだものじゃ」
お前が観てんのかーい! キャラ的にそんな映画見ちゃダメだろ。もっと時代劇とか観てろ!
「本当!? 五十嵐って洋画も見るんだね! どこが良かった?」
「あの童子が泣きながら師にピザを食べさせらる場面は涙無しでは見れぬ」
うわ! 内容聞いてもつまらなさそう。
「ウンウン! それに最初の『君を思って殴る』って言葉が伏線になっててさ……」
ダメだ。ああなった学を止めれる者は誰もいない。初日から作戦破棄しやがって。
「恋ちゃんのタコさんウィンナー美味しそう!」
「ん? 食べたいのか? やるよ。ホレ」
「やったー!! ありがとう。お返しに私の卵焼きあげる! 私が作ったんだよ!」
「ウマっ! 光子はマジで料理上手いな。またカレー作りに来てくれよ」
学と五十嵐が映画の会話で夢中になってしまった為、結局俺達は4人で弁当を食べた。まぁ別にお昼を一緒に食べるくらいで国光先輩は何とも思わないだろう。
「あの2人絶対付き合ってるよね。普通カレー作りに来いなんて言わないわよ」
「嘘? でも光子は3年の国光先輩と付き合ってるんじゃ。まさか二股!?」
周りからはヒソヒソと何か俺達に言ってる声が聞こえたがよく聞き取れなかったので、特に気には止めなかった。
こうして無事? 今日1日、光子と距離を置く事に成功した俺は、この調子で1週間続ける作戦になっている。
あれ? 現代文の教科書どこだっけ? 現代文の授業今日はなかったし家に置いて来たか?
下校の準備に少し時間を取ってしまい教室には俺1人だけになっていた。
みんな帰るの早ぇ。さすが帰宅部! 俺も見習わんと。
下校の用意が出来て教室から出ようとドアを開ける。
「きゃあ!」
ドアを開けた拍子に誰かとぶつかり、女の子の声がした。勢いよくぶつかって来た彼女は俺の上に馬乗りの様な形で乗っかっている。
イッテェー。たくっ! 誰だよ廊下で全力疾走してるバカは。
「お、おい。大丈夫か?」
俺の胸板で顔を伏せなが痛がってる女の子。見覚えのあるショートカットを見て俺はもしやと思う。
「イッターい! でもこれって恋愛に発展する王道ラブコメって感じするよね!」
はぁー。やっぱりお前か。
「ちょ、重いから早くどけ」
「あれ? 恋ちゃんだったの!? ごめーん。忘れ物しちゃって急いで教室戻って来てさ」
光子が上に乗っているから俺はまず上半身だけを起き上がった。
そして気づく。
こ、この体勢、誰かに見られたらマズイんじゃ……。
上半身を起き上がらせた体勢を客観的に見ると、確実に誤解される体勢だった。だが上目遣いで俺を見てくる光子は小動物の様に可愛く感じた。
こいつが美少女ってこと近しい存在すぎて忘れてたけど、ちゃんと見ればやっぱ可愛いな。
急に恥ずかしくなり頬の辺りが火照っている気がする。
「お、おい、早くどけって。誰かに見られたらどうすんだよ」
「んーもう! わかってるからそう急かさないでよ!」
ゆっくり立ち上がろうとする光子。そんな時、『バタン』と言う、何か物を落とした様な音が聞こえた。
「れ、恋次君。こ、これは流石に幼馴染の一線を超えてるんじゃ……?」
「く、国光先輩……!!」
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