第6話 先輩の悩みは俺の悩み!?
国光先輩の悩みを聞いた次の日の朝、俺は光子とどう、接すればいいのか、どの距離感を保てばいいのか、わからなくなっていた。
春はあけぼの、と言うが俺は朝を迎えたくない、なぜなら毎日光子と登校時間が同じだからである。
今日は少し早めに学校行くか。昨日の今日で国光先輩に俺が光子と一緒にいるとこ見られたくないし。
俺は用意された朝ごはんを食べずに、いつもより20分早く家を出た。
「恋ちゃんおっはよーう!!」
光子の家の前を通り過ぎると、後ろから聞き飽きた声と一緒に教科書が大量に詰まった重たい通学バックを投げられた。
「お前なんでこの時間に登校してんの? いつもより20分も早く出たんだけど」
「ふっふっふー、窓から恋ちゃんが見えたから急いで出てきたのだ!」
お前はストーカーか。
「あり? もしかしていつもたまたま同じ時間に家を出てると思った? 甘いぞ恋ちゃん! 恋愛とは試行錯誤した作戦を決行して、生み出すものなのだよ!」
ハァーーーーー、国光先輩、やっぱりもうこいつとは別れた方がいいかもしれません。
「んで、本当は?」
光子の嘘をついている時の癖は知っている。親指と中指を付けて摩るのだ。
「そ、それは……、昨日……、な、なんでもない! それより今日は1人で学校行くから! 迷子になっちゃダメだぞ恋ちゃん!」
迷子って、お前はいつも保護者気分で俺と登校してたのかよ。
恐らく国光先輩は昨日の内に光子と話したんだな。それで光子も早い時間に家を出たのか。考える事は一緒か……。
それにしても20分前、ってとこまで同じとは。こう言うのを世間一般的には運命共同体と呼ぶのでは? おっと、いかんいかん、俺は恋愛教に洗脳されんぞ!
そして俺はついさっき『いってきます』を言った家に戻り朝食を食べてから学校に向かった。
「おはよう恋次。今日は1人で登校?」
「ああ、色々あってな」
毎朝光子と一緒に学校に来ていたからどこか新鮮な感じがする。
「喧嘩、じゃなさそうだね」
「あんま詮索するなよ。趣味悪りぃぞ」
「アハハ、僕って観る映画の趣味も悪いからさ」
こいつ、詮索しないとは言わないのかよ。
「はぁー、学だけには伝えるよ」
「ありがとう」
ニコニコな笑顔の学に悪気は無いのだろうが、俺には学の笑顔が悪魔に見える事がしばしばある。
俺は国光先輩に言われた事を学に事細かく伝えた。
「なるほどねぇー、ヤキモチってやつかな?」
「ヤキモチ? なんで光子の彼氏の国光先輩が俺にヤキモチなんか焼くんだよ」
「だって、そもそも彼女出来た事が無い童貞の恋次に恋愛相談、ってだけでおかしくない? 多分『俺の女に近づくな』ってメッセージだよ」
「…………」
確かに!! 確かにそうだ。よくよく考えてみれば可笑しすぎる!! あんなチャラくて女慣れしてそうな国光先輩がわざわざどう……、彼女作った事がない俺に恋愛相談なんてしてくる訳が無い!
俺はただ単に国光先輩が光子との関係で悩んでいると思っていたが、どうやら違ったらしい。それなら去り際に国光先輩が僕に言った『光子は僕といる時は恋次君の話をよくするよ』の意味も違ってくる。
あの言葉の本心は『光子は俺のもんだから慣れ慣れしくすんな』って意味合いだったのかーー!!
「ちなみに国光先輩って中学の時、空手で全国大会出てるらしいね」
ねぇ、それってどう言う事かな学くん? 国光先輩に殺されてこいって事ですか!?
「で、でも今更俺はどうすれば……」
「うーん……、あっ! 思い出した、僕今日高校野球の予選中継見るんだったー、じゃあまた後でー」
学は耳にイヤホンを付け前を向いた。
「って、おいおいおい! 親友のピンチを簡単に切り捨てるな! そもそも今はまだ5月、高校野球の地区予選は始まってねぇーつうの!!」
俺は学のイヤホンを無理やり取り上げ話を聞いてもらった。
「だって僕まで国光先輩に目つけられるじゃないか」
「そこをなんとか!」
「で、僕は具体的に何をすればいいの?」
「国光先輩の俺に対するヤキモチは勘違いによる物だと証明できる様に取り持ってくれ」
「無理」
こうして俺と学の【ドキドキ、先輩の勘違いを晴らしちゃうぞ!大作戦】を考える日々が始まった。
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