第3話 学級委員は天然さん!?
天気の良い昼下がり、昼食の時間。雲一つない青空の下、学校の屋上で友達と食べるお昼ご飯は最高です。
なんて、ラブコメにありがちな展開は存在しない。だって、屋上開放なんて危険な事してるわけなんだから。
「私は屋上でお弁当を食べたいの!」
「だから無理だって言ってんだろ。ドアの鍵閉まってんだから入れねぇよ」
「恋ちゃんこれ……」
光子の小さい手の平には2本の針金がある。
俺は月下の大泥棒か。
「まぁまぁみっちゃん。机で食べるお弁当も美味しいじゃん」
「それはそうだけど……」
光子はどこか寂しげな表情を浮かべている。
「屋上で食べなきゃいけない理由でもあるのか?」
「うん……、だって……。屋上で食べるお弁当ってなんだか恋が生まれる雰囲気あるじゃん!」
ですよねーー。心配した俺がバカだった。もう絶対に心配なんてしてやらん!
「ははは。相変わらずだねぇみっちゃんは」
なんで学の奴は光子のクソくだらない話にそんな優しい微笑みでいられるんだ? もしや、学の奴、前世は仏なんじゃ。
「早乙女殿はそんなにお昼を屋上で食べたいのかい?」
「げ! 五十嵐……」
俺達の会話を聞いて学級委員兼、次期生徒会長の
綺麗な青紫色に染まった長い髪を後ろで一つに結わえている。ハーフの様な顔立ちで、可愛さと気品さを兼ね備えた俺のドストライクな容姿。
だが、俺は五十嵐が苦手だ。
「げ! とは失礼だな恋次君。私は君達の要望に答えようと馳せ参じたのに。これではまるで、本能寺の変で秀吉に裏切られた織田信長みたいではないか」
なんども言うが五十嵐の容姿は超タイプだ。だが苦手である。だって……、こいつ極度の歴史マニアなんだもん!!
「まぁ、そんな事は置いておくとして、屋上で行厨を食べたいのだろう? 次期生徒会長の権限で開放してあげよう」
行厨って。普通に弁当って言えよ。
「スミレっちそれ本当!? ありがとう!!」
「あ、ああ。任せてくれたまえ。鍵を取ってくるから屋上のドアの前で待っててくれたまえ」
五十嵐は青紫色の綺麗な髪をなびかせながら小走りで職員室に向かって行った。
「やったね恋ちゃん、まなぶん! これで屋上でお昼食べれるよ!」
太陽の様に明るい笑顔で光子はとても喜んでいた。
「ふふ、やっぱりみっちゃんの笑顔は可愛いね」
俺の耳元で学が囁く。
「ああ、かわ……、いくなんか全然ねぇよ! 目玉焼きみたいな顔してんじゃねぇか」
俺達3人は五十嵐に言われた通り、屋上のドアの前で待っていたが、なかなか帰ってこない五十嵐に俺は不信感を抱いていた。
10分程経って五十嵐が下を向き暗い雰囲気で帰ってきた。
「昼休憩あと20分しかねぇじゃねぇか。早く開けてくれ」
五十嵐はしょぼんと下を向きながらスッと手の平を俺達に見せる。
針金が1本、2本……。
光子と発想が変わんねぇじゃねーか!!
「す、すまなんだ。先生方に頼み込んだんだが、許可が下りずに、ならピッキング、と一応針金を……」
「大丈夫だよすみれっち! 私達の為に先生に頼んでくれたんだし、どうせならここでお弁当だべよ?」
申し訳なさそうに俯く五十嵐に対して光子は、優しい笑みを浮かべながら五十嵐に非がないことを伝えた。
五十嵐にとって今の光子の笑顔はさながら太陽と変わらない、全てを浄化してくれる暖かい光に感じたに違いない。
「あ、あり……、かたじけない早乙女殿!」
たまには恋愛笑顔も役にたつんだなぁー。それと今『ありがとう』って言いかけてたぞ。貫き通せないキャラを演じるな。
俺は光子の言動に関心していた。いつもは恋愛の事しか頭にない光子でも、友達を励ます事はできるのだと。
「それに、『階段でお弁当食べてたら、ウィンナー落としちゃって。それを拾ってくれた人と恋に落ちる』みたいな展開もあるかもしれないもんね!」
はいっ、バカでしたー。この恋愛脳を信じた俺がバカでした。もう絶対に信じない! こいつだけは絶対に!!
昼休憩が終わる間際、屋上のドアのすり板ガラスを通り抜ける木漏れ日は暖かみを醸し出し、階段に腰掛け楽しそうに弁当を食べる4人の学生を照らしていた。
先に弁当を食べ終えた光子と学は、数学の宿題をやりに教室に先に帰った。
俺はあまり話したことが無い五十嵐と2人きりで気まづいと感じ、ご飯を少し残して教室に戻ろうとすると五十嵐に腕を引っ張られ、止められた。
「そ、その……。そなたに聞きたいことがあるのじゃが……」
ん? この展開はまさか!? 『好きな人はいる?』とか、『今度の週末空いてる?』とか言うラブコメの展開なのでは。まさか五十嵐のやつ前から俺に興味が……?
「ど、どうしたんだよ。急に聞きたいことって」
心臓の鼓動は尋常じゃ無いほどの速さでリズムを取っている。だが俺は焦っていると思われたくなかった為、必死で平常心を演じた。
「そ、その。じ、実は、前から思っていたのじゃが……」
俺はゴクリと固唾を飲む。
「早乙女殿には伴侶がおるのか?」
……はい?
俺が想像していた言葉とは全く違う質問が来て目をパチクリさせる。
「そ、その、妾は早乙女殿と親しくなりたいのだが……。恋路の邪魔をするわけには……」
「カレシガイルラシイデスヨ」
放心状態の俺は階段に立ったまま5限目をすっぽかした。
うわぁぁぁぁぁ!! もう絶対誰も信じない! ラブコメなんて信じない! 俺は高校で友達を作るんだ。彼女なんているか! リア充爆発しろぉー!!
恋愛に対しての拒絶がさらに深いものとなったのは言うまでもない。
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