第43話 今度は一緒に

 今日、彼女が津波で亡くなった事を知りました。



 私は島で暮らしていました。彼女は島では人気者で、多くの男性から言い寄られていたらしいのです。なのに、なぜかずっと私と一緒に居てくれました。私たちは、恋人という表現が一番しっくり来るのだと思います。その日もお互いに求め合い、満足したあと海岸を歩いていました。そのとき、誰かの叫び声が聞こえました。


「津波だ!!」


思わず海の方に視線を向けると、既に波が見えていました。船で逃げようなどと言う声も聞こえましたが、かなり北に行かないと助からない事を私は知っていました。当然、助かるわけがないのです。地震の揺れも感じなかったし、警報も一切無かったから反応が遅れたのだと思います。私は今日がその日だったのかと気付き、彼女と海辺の建物に入りました。今度は一緒に死ねるねって思いながら、彼女を抱き締めました。やがて波が到達し、私たちは飲み込まれました。最後まで、彼女を抱き締めたまま……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る