笑えない少女 「【お題形式企画】指定セリフを入れて」参加作品

私には感情がない。

とは言っても所謂冷酷な狂人とかそういった類の人間ではない。

「喜怒哀楽」そういった感情の1つもないのだ。

医者にもかかったが世界でも数例しか症例の確認されていない奇病だそうだ。

「おい!!!見ろォ~!!」

そう言われたので振り返る。

すると幼馴染のシュンスケが変な顔をしていた。

いや、元から変な顔ではあるのだが。

「チッ、今日も笑わねぇ!!この顔クラスじゃ負け知らずなんだぞ!!!」

お前は一体誰と戦ってるんだ。

「無表情なのもいいけどよ…お笑いの世界を目指すにあたってお前が笑わないと話にならないんだよな~!」

「いや、私は無表情なんかじゃ…。」

「そもそもだ。最近思ったんだよ。お前が笑わないのが悪いんじゃないかと…」

始まった、いつものよくわからん文句だ。

このまま無視をしておこう。いずれ黙る。

「今笑いどころ!!」

うるさい。

「うーん!!なんでこう、こう…伝わんないかなぁ…!」

「お!お2人さん!今日も仲がいいね!!」

そう言って私とシュンスケの背中を叩いてきたのはツルイ。

私たち2人と同じクラスの男だ。

「もうツル~!2人の邪魔、しちゃメ!でしょ!」

この娘はおっぱ…ヤクラ。彼女も同じクラスの人だ。

「冷かすなよ!!俺を怒らせるとカワイイぞ!?」

凄みながら田中真弓の宣材写真みたいなポーズをとる。

「プッwウハハハハハハハハハハ!!!!!!」

「クフッwグフフフフフフフフフフフフフフフッ!…グヘッ…ゴホッゴホッ!!ヒュー…ゴホェ!!オェ!!!」

ツルイとお…ヤクラは笑う。ってか笑い方よ。

「ハァ…え?違った?この間言ってたじゃん!」

「い!いや!!!あれは違うんだって!!ほんとに!!!」

シュンスケ、お前何顔赤らめてんだよ。

「え?マ?なんか好きな人がいるって、それいつも一緒にいるからてっきり…。」

え?私?

「え?私?」

おっとついうっかり心の声が。

「こいつは幼馴染だし…。」

シュンスケはあからさまに顔を背ける。

そんなに嫌か?

「あっ…そう。」

いや、私、何言ってるんだ私、私よ。

「えっ…あっ…扇風機の真似!!」

空気に耐えられなくなったのか、シュンスケは首を徐に右に振り始めた。

端までいくと…ガクンと首を落とす。

「えっwwwwwこれwwww若干使い古したww古めのwww」

「グフフフフフフフフフフフフフフフッ!…グバッ…ゴホブッッ!!…ゴホェ!!オェ!!!…うぅ。」

いや、マジでさぁ。




その日は何となく…よそよそしい雰囲気でただただ時間だけが流れていった。

「今日も…ここで。また明日…とは言わせねぇよ!!?」

言わせろよ。

「はいはい。」

「…今日も笑わなかったな。お前…笑う気あんのか?」

顎をしゃくれさせながら泥団子みたいな顔で睨んでくる。

「…笑うとか笑わないじゃない。」

「え?」

しゃくれが元に戻った。

「感情が…ないんだよ。私には。」

「いやいや…笑えない冗談は…」

「奇病なんだ、もう諦めてる。」

「…は?諦めてるって…俺は…。」

シュンスケは走って遠くに行く。

「諦めないからな!!!!!俺は必ずお前を笑わせてやる!明日も!!明後日も!!諦めない!!!」

「お前が…からな。」

シュンスケは去っていった。

最後の言葉…聞こえなかったな。

何故か心に火が点いたように温かかった。

なんであんなこと言ったんだろ…。

諦めきれずに毎日…シュンスケに…笑う努力してるのになぁ…。

「チクショウ。次は笑うんだ」


Special Thanks

八幡西県研究室様

素敵な企画ありがとうございました。

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