『その学生、意外に中性的であり。』②

教室を出て、廊下を歩いて昇降口に向かっていると途中で中川悠なかがわゆうと言うもう1人の友人に会った。


「どこか行くの。」


悠が僕に向かって質問をするように言った。

多分、僕が学生帽を被っているからそう聞いたのだろう。


「翠とお昼食べに行くだけだよ。」


僕は悠の質問にそう答える。

すると悠は僕のその答えに対して、


「気を付けて。」


とだけ言い、教室の方へと歩いて行った。

悠は普段からあまり口数が少ない方なのでこういった塩対応的なのにはもう慣れている。

と言うか、そもそも本人は塩対応をしている気はないと思うのだが。


そう考えて歩いているうちに昇降口へと着いたので僕は下駄箱から靴を取り出し、内靴から外靴へと履き替える。

履き替え終わり外へ出ると翠が校門前で他の学生と話をしながら待っていた。


「お待たせ。」


僕は翠に声をかけた。

すると翠は僕に気づき、


「おう。」


と返事をし、話していた学生に対して「じゃあ、また後で。」と言い、僕の先頭を歩き始めた。

その去り際に僕は話していた学生に会釈をし、翠の後を追い、隣に並び、翠に話しかけた。


「あれ、どこの教室の子?」

「隣の教室。」

「交流あったっけか。」

「いや、部活が同じなだけ。それ以外は交流なし。」


翠は弓道部に入っているため、案外、後輩や他の教室の子とも交流がある。

だから顔が広いと言えば広いわけで。


「まぁ部活が同じなだけなら僕には関係ないか。」

「お前本当、自分の教室の奴らにしか興味ないよな。」

「当たり前じゃん。」


僕はそう言いながら手を後ろに組み、歩いている翠の前に出て、


「だって翠や他の皆は僕のこと女扱いしないじゃん?」


言った。

自分で『あざとく』って言うのも気持ちが悪いけど。

すると、その僕の様子を見て翠が、


「…そーいうのが女に見られる原因なんじゃないの。」


と小さく呟いたが、聞かなかったことにしよう。

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國崎家の次男坊 霧島なお @sadaie_887

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