第8話
南町奉行所同心の柳川廉太郎は、心当たりの商家に山岡家の事を話した。
だが以外に反応が悪かった。
誰もが幕府の眼を恐れていた。
いや、恐れているふりをした。
山岡家が困窮しているのをいいことに、買い叩こうとしていたのだ。
収入が同じ与力株が千両なのに、旗本同士の相場、百両で買い叩こうしたのだ。
その時点で柳川廉太郎は自分の不明を思い知った。
こんな性根の腐った相手では、婿入りしてからの山岡家をどう使うか分からない。
そこで相手を変えることにした。
金回りのいい町奉行所与力に話を持っていくことにした。
「銀次郎、すまん。
軽く話をしたのだが、山岡家を買い叩こうとする者ばかりだった。
商人も与力も強欲すぎる!」
廉太郎は酒を飲みながら吐き捨てた。
銀次郎は黙って聞いていた。
お峯が作ってくれた追河と川鯥の天婦羅を肴に、軽く一杯飲んでいた。
常在戦場の銀次郎は決して深酒をしない。
本当に深酒したいのは、廉太郎ではなく銀次郎であろうに。
「なあ、銀次郎よ。
いっそ中間部屋で賭場を開くか?
俺達町奉行所が入れないのをいいことに、多くの旗本や公家が屋敷を博徒に貸して賭場を開いている。
山岡屋敷でも開いたらいいのではないか」
酔いに任せて廉太郎が銀次郎に思い切ったことを口にする。
幕府に知られたら、お家取り潰しになりかねない犯罪だ。
だが勝手向きが苦しいのはどの家も同じだ。
よほど偏屈な人間が幕閣内で力を持たなければ、小規模な博打開帳は見逃してもらえるのが、今の幕政でもある。
「なあ、廉太郎さん。
博打場の開帳はともかく、一度博打というものをやってみたい。
私に才能があれば、博打というもので勝てるのではないか?
少なくとも胆力が勝ち負けに繋がるのなら、勝てるのではないか?」
「山岡の旦那。
それはさすがに難しいですぜ。
博打にはいかさまがつきものなんです。
胆力があれば必ず勝てるモノではありません。
一度あっしの知り合いの香具師の親分が開いている賭場にご案内します」
房総の笹次郎がそう言ってくれるので、銀次郎はその日のうちに賭場に案内してもらうことになった。
もっともそのせいで、笹次郎の女房お峯はお冠だった。
「大目小目」
一個のサイコロを振って出た目が大目(四・五・六)か小目(一・二・三)かを予想して、どちらかに賭けるという賽子博打。
「丁半賭博」
二個のサイコロを振って出た目が奇数か偶数かを予想して、どちらかに賭けるというサイコロバクチ。
「チョボイチ」
一個のサイコロを振って一から六を予想して、当たれば四倍外れれば没収
「くらべうま」
競馬
「闘鶏」
軍鶏を戦わせて勝敗に金をかける
「どっこいどっこい」
ルーレットに似たギャンブル
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