肌のなんで?
テレビの画面に映る外国の様子を見て、君がこちらを振り返って聞いてきた。
「ねぇねぇなんで?」
「今日はなにが聞きたいの?」
「どうして黒い人と白い人がいるの?」
わたしは一度テレビ画面に目を向けてから、君の顔を見つめてこたえる。
「それはね、かみさまがお茶を出すのに使ったからだよ」
君は「かみさま?」と口にしながら真上を見上げた。
そう、かみさまだよ。
「かみさまはおちゃを飲むの?」
「そうだよ。かみさまもお茶を飲んでいたんだ。その時、お茶を出すのに使っていたのが僕たちのご先祖たちだよ」
「ごせんぞ・・・?」
君は最後の言葉の形に口を開けて首をかしげて見せた。その顔がとっても可愛くてわたしは嬉しくなった。
「ぼくたちのおじいちゃんやおばあちゃん、そのまたそのまた、そのまた先の先のおじいちゃんやおばあちゃんたちのことだよ」
「かみさまはどうやっておちゃを出したの?」
「かみさまも初めは自分でお茶を入れていたんだ。でもなんだか面倒になっちゃって、小さな生き物を、人間を生み出してお茶を入れさせたんだ」
「それがごせんぞ?」
「そう。でも、その時はまだ人間に違いはなかった。みんな同じだったんだ。でもある日、かみさまは人間がコップの水の中で泳いでいるところを見つけたんだ。近づいてみると、水の色が変化して少し匂いがするのに気づいたんだ」
わたしがそう話すと、君は何を想像したのかいやそうな顔をした。
わたしが不思議に思うと、君は
「それってきたない?きたないお水なの?」
と聞いた。
お風呂かなにかを想像したのだろう。わたしはそのイメージを振り払うと話を続ける。
「汚くないよ。かみさまのお水は特別だからね、ご先祖たちが泳いでいる間にその味を沁み込ませたんだ。それを見つけたかみさまはちょっと味見をしてみたんだ」
君はまたいやそうな顔をした。そんな顔も可愛らしく写る。
「かみさまはその味が気に入ったんだ。だからしばらくは人間が浸った水を飲んでいた。でも、だんだんそれじゃあ満足できなくなって他にも沢山の人間を作ってお水に浸らせてみると、それぞれ味が違ってとっても喜んだんだ」
わたしの話に今度は興味を惹かれたのか、君はおずおずとどんな味がするのか聞いてきた。
「そうだね。白い肌の人間のお水は甘くてふんわりしてやわらかい匂いが気持ちいいんだ。逆に黒い肌の人間のお水は苦いけどきりっとしてて、ほんのりと感じる甘さにクセになるかみさまも多かったみたいだ」
わたしはなんとなくミルクティーとコーヒーをイメージして話を広げてみせる。君はまだどちらも飲んではいないからそれだと気づきはしないだろう。
「それからかみさまはごせんぞをどうしたの?」
「それから神様は、増えすぎた人間の居場所として地球をつくったんだ。だから僕たちには肌の違いがあるんだよ」
それを聞くと君は俯いて少し考え事をすると
「じゃあ、プールのみずはかみさまが飲むためにあるの?」
と聞いた。
わたしは微笑みながらこたえる。
「僕たちにはもう別のお茶の出し方があるから、そんなやり方じゃなくていいんだよ」
「どんなやりかた?」
「おいしくな~れ、っていう思いやりだよ」
わたしは立ち上がり、キッチンでホットミルクを作り君に差し出す。
両手でしっかりと握りながらチビチビと飲む君に聞いてみる。
「どう?おいしい?」
すると君は
「わかんない・・・」
と言って口元を白く染めた。
わたしも飲んでみたが、よくわからなかった。
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