第12話 勇者の魔法、発動
都市ガスの主成分であり天然ガスの主成分。一般名は、メタン。爆発限界の下限は5%。上限は15%。
ほぼ密閉された空間で一瞬にしてメタンが燃焼するのが感じ取れた。
まずい。
咄嗟床に広がる糞尿の中に伏せて、耳を手で覆い口を開けた。全身が糞尿の中に突っ込まれ、口の中にネズミか糞が入りそうになるけど気にしてはいられない、こうしないと鼓膜が破裂すると何かで読んだことがある。
糞尿から目だけは出しているので部屋全体が一瞬にして青い焔に満たされるのが見えた。同時に熱が伝播して首筋に痛いような熱さを感じる。
そう感じた時にはすでに密閉空間の炎が爆発と化し、僕の背中を凄まじい熱と風が通り過ぎていく。
火傷した時の熱なんて、台風の風なんて、この比じゃない。伏せていなかったら吹き飛ばされて壁に体を打ちつけていただろう。
地獄のような空間の中で僕は黒フードが教えてくれた魔法のコツを思い出した。
『……魔法を使う際は詠唱なりなんらかの合図を決めておかないと、暴発しやすい』
でもこれで僕を馬鹿にした奴らを見返せる。そう思うと、僕は自分の中にどす黒い感情がわき上がるのを感じた。
さっきの衝撃のせいか、ぱらぱらと小さな石の破片が落ちて糞尿を撒き散らす。
やがて完全に爆風がおさまったので一旦顔を上げる。さっきの破片より遥かに大きな、天井や壁の瓦礫が僕に向かって崩れ落ちてきた。
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