第2話 力なくして転生

 テンプレな異世界転生ものが、大好きだった。

 何の力も持っていない一般人が、突如として別の世界に降り立って。

 そこでは現代世界と違い、何もできない自分じゃない。

 転生したその瞬間、チート能力がすでにその手にある。

 能力を実感した時に歓喜し、興奮し、希望を手に入れて。

 冒険者としてでも勇者としてでも大活躍して。

 最後は魔王を倒して、お姫様と結婚して、ハッピーエンド。もしくは元の世界へ帰る。

 そんな展開が大好きだった。

 でも、たまにチート持ちじゃない人もいる。

 そんな転生者でも現代知識や社会人としての経験を活かして異世界ライフをエンジョイする。グルメものとか内政チートとか。

 じゃあ、そのどれでもない人はどうなるのか。

 大体は異世界で野垂れ死にとか、未知の病原菌に感染してご臨終とかいう考察がなされる。

 だけど主人公が実際にそうなる展開は滅多にない。

 主人公がチートじゃないと面白くないし、野垂れ死にすれば話が成立しない。

 でもあり得そうな展開だとは思っていた。

 平凡以下の学生である僕が、社会人として働いたこともない僕が、中世ヨーロッパみたいな世界にいきなり放り出されたらとても生きていける気がしない。

 何を食べたらいいのか、どうやって働いたらいいのか、そもそもその社会のルールは? わからないことが多すぎる。

 自分一人じゃ、決して生きてはいけない。

 チートもない。最低限の知識もない。魔法も剣も使えない。

 そんな風に転生したら、僕はこうなった。

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