僕と君のファーストインパクト
思った以上にフォロワーが増えた。そうなると今度は何をツイートすればいいのか。僕の言葉がたくさんの人に届いてしまう。
とりあえずレミさんの宣伝でもしとこう。
《レミさんの動画面白すぎワロタ》
これでよし。
いやよしではない。僕がアカウント作ったのは詩遊さんにお礼を言うために作ったんだった。本来の目的を忘れかけている。危ない。なら、
《たくさんの方からのフォロー本当にありがとうございます。いただいたリプライは明日、全力で返させていただきます。》
これでよし。
こちら側から行くと驚かせてしまうかもしれないので明日リプ返するときに伝えることにしよう。きっと詩遊さんもリプをくれるはず。うん、それがいい。
そのまま次の日が来た。
おかしい。フォローは来た、ツイートもリツイートされている。
リプが来てない。埋もれているのかと何度も確認したが無いものはない。
とりあえず他のフォロワーさんから来たリプに返事をしていく。やはり無い。
ならばと詩遊さんのツイートを見に行った。
《嘘でしょ嘘でしょ?!マジで無理なんですけど》
《正直フォローするのもしんどいやっば》
《まじ?夢じゃない?ねえ?まじ?》
ツイートを見る限りとても喜んでくれているようだった。しかし詩遊さんはリプを送ってくれる気配はない。
どうすればよいのか。
考えているうちにTwitterアカウントをつくってから一週間ほど経った。
詩遊さんはツイートをリツイートしてくれている。そして僕が投稿するたびにとてもテンションの高いツイートを連発している。もちろん布教活動も続けている。
しかし一向にリプは来ない。どんなにリプのしやすい投稿をしてもだ。
レミさんに相談するか考えてみたが、やめておいた方がよさそうだ。
これは僕個人の問題だし、こんな一人のファンばっか気にかけているのも本当はよくないことだと思う。だが、こんなに僕なんかで喜んでくれている人がいるのに気にならない訳がない。なにか機会があればいいんだが。
三日後、久しぶりに詩遊さんのTwitterを見ると僕の誕生日の話で盛り上がっていた。ほかのフォロワーさんと会話を交わしていた。
《えいあうるさんはなんかふわっとした可愛さがあるから春生まれかな?》
《いつか聞いてみたいな、、、そもそもリプ送れないですけどね(笑)》
ふわっとした可愛さ、ふわっとした、ふわっと。ふわっとした可愛さがあるなんて人生で初めて言われた。そうか、僕ふわっとしてるんだ。たまにぬいぐるみとかもらうのはそのせいか。なるほど。可愛いは女の子に対しての誉め言葉だと思っていたが言われてみると嬉しいものだ。
まて、落ち着け、これはチャンスだ。誕生日を教えるという大義名分のもとにお礼を伝えられるではないか。可愛いの言葉にテンション上がっている場合ではない。いざ送るとなると緊張する。
下書きをしよう。落ち着いた言葉で褒めないとあとで恥ずかしくなりそうだ。
可愛い、違う、引っ張られすぎだ。すごい、駄目だ、ざっくりしすぎだ。かっこいい、絶対違う、自分をかっこいいと言ってる気分になるから却下だ。
小一時間考えて送った。
《素敵なレポートありがとうございます。僕の誕生日は4月6日です。》
僕は春生まれだ。
このリプでよかったのだろうか。詩遊さんの反応を見るしかない。
送ってから一息つく間もなく返事が来た。
《そうなんですか。わざわざ教えてくれてありがとうございます。》
思った以上にそっけない返事だ。何か気に障ることを言ってしまったのではないか。
心配になり詩遊さんのTwitterを見に行く。
《えっっっっっっっっ》
《なんでなんでやばい無理命日》
《あのレポ見られちゃったの?恥ずかしすぎやば死にたい》
《もうほんとそういうとこ無理》
《えいあうるさんのファンに刺されて死ぬかもしれない》
怒涛のツイートをしているがよくなかったのか。僕は間違えてしまったのか。やっぱりこっそり眺めておくだけにしておけばよかったのかもしれない。
《まじしんどすぎる。誕生日。くっ、祝えるじゃない。よっしゃ!》
喜んでくれている。
ほっとした。嫌われるかどうか、こんなに不安になったことがなかった。気づいたら右目から涙がこぼれていた。人はほっとしすぎると涙が出るらしい。
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