◆ 2020年2月

さよなら、愛しのグラ(色眼鏡、手のひら、縁)

 先日、相棒のグラさんを亡くした。まだまだこれからだったのに、いい奴を失ってしまった。


 グラさんと出会ったのは3年前の夏だ。それはそれは日差しの強い日で、熱中症患者がバッタバッタと大量発生していたらしい。私も私で頭を焼かれて困っていた折のことで、目が合うなり硬くその手を握りしめた。


 以来、寝るとき以外はずっと一緒だ。ときどき、グラさんのことを色眼鏡で見てバカにする人に出会うが、私の目には、相棒を持たないそちらこそおろかにうつったものだ。


 それだけ盲目的に愛していたグラさんを、私はなぜ手にかけてしまったのか。あの叫び声が耳から離れない。


 不注意という自分のあやまちを深く懺悔ざんげしながら、その亡骸なきがらを丁寧に拾い上げた。片手のひらにおさまってしまう。こんなに小さくなってしまった。


 私の目を守ってくれた〈黄色いサングラス〉に別れを告げ、3年ぶりの裸眼の日常に戻る。けれど、きっと、縁があれば、また。




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【さよなら、愛しのグラ】 2020.02.12 作


空腹さんのお題

「色眼鏡・手のひら・縁」より創作

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