第3話

嘘をついた。

君にとっての〖特別〗になりたかったから。



嘘をついた。

君にとっての〖唯一〗になりたかったから。





なりたかったから。

望んでいた。

願っていた。

たった一つの、掛け替えのないもの。


ありふれたモブではなく、変えられない特別に。


期待してしまった。


欲張ってしまいそうになる。


君が僕を、、、


僕が君を、、、






「「望んで欲しいから」」






不意に、隣で声がした。


「こんにちは。」


一人の少女が隣に立っていた。


「、、、こんにちは。何かようですか?」


一人図書館で小説を読んでいた。

そんな時に急に声をかけられるなんて思っていなかったから、思いっきり無愛想に言ってしまった。


「はい、その本借りられますか?もし、違うのであれば借りたいのですが。」


どうやら、少女は今読んでいる本を借りたいようだ。


「いえ、もう、読み終わったので大丈夫です。」


そう言いながら、今読んでいる本を渡した。


「ありがとうございます。」


少女はそう言いながら頭を下げた。

そして、そのまま、去っていった。

ラブコメの漫画や小説なら「この本好きなんですか?」とか、「いつもここにいますね。」的な会話に繋がるのだろうが、現実なんてこんなもんだ。


スマホを見ると、17時30分を指していた。


「そろそろ、帰る準備でもするか」


置いていたカバンにスマホを入れ、図書館を出た。

バス停と図書館は近いので割とよくここで時間を潰したりしている。


そして、そんななんでもない一日が終わった。





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