第98話 世界陸上に向けて

 全米オープンでの優勝を果たし、俺は凱旋帰国となった。

 成田には大勢の報道陣やファンが詰めかけ大騒ぎだ。


「皆さんの声援が力になって、何とか優勝をする事が出来ました。次の全英も一生懸命頑張りますから、応援よろしくお願いします」


 我ながらメチャ無難な挨拶だぜ!


 空港からは綾子の運転するアルファードでそのまま学校へと向かった。

 学校で理事長と俺の所属するゴルフ部の尾崎先生に挨拶すると、昼食後に緊急全校集会を開いてくれることになり、俺は全校生徒に向けて全米オープンの優勝を報告した。


 俺の賞金は当然の様に寄付しちゃったけど、俺の協賛各メーカーが俺に対してボーナスを支給する事が次々決定して、三十億円程の収入になったから、学校に対してゴルフ練習場の設置を提案した。


 最初はクラブ活動で使うだけの物を提案したんだけど、俺のメインスポンサーのスポーツメーカーが「アデックス&ショウメモリアルゴルフパーク」と言う巨大な打ちっぱなしと、ゴルフグッズ販売、更に世界中の有名ゴルフ場専門のパッケージツアーを案内する、巨大施設の建設の話が持ち上がった。この学校のゴルフ部の優先使用ゲージを確保する事で、話もまとまったようだ」


 ゴルフ競技でも取り敢えずの結果が残せて、一安心だ。


 こうなるとマスコミの興味は次の世界陸上デカスロン競技一色となる。

 俺の通う高校の大隈理事長と俺のメインスポンサーのスポーツメーカーが最近凄く親密で、陸上競技用のトラックの整備でも、大幅な協力の約束を取り付けた様だ。


 計画書を見て吹き出したよ。観客席の部分を除くと、ほぼ国立競技場と同等の施設が作られ、この学園グループの中学、高校、大学の選手たちを一貫して育成できる凄い施設になっていた、JOCの育成施設より環境整ってるんじゃねぇか?


 瀬古先生も、なんだか凄い胸を張って大学部と中等部に対してマウントを取ってた……

 桜井先輩やほかの先輩方も「翔君凄いねぇ、こんな環境で大学卒業まで競技が続けられるとか、夢の様だよ」と俺を見つめる視線が熱すぎるのがちょっと怖い……


 俺は、桜井先輩の一言でちょっと思いついた。

 大学卒業までの期間をスポーツ選手として活動する為に一番大事な事は、体調管理とスポーツ医療だ。

 大隈理事長に提案して、中学生や高校生時代から一流のトレーナーになる為の勉強が出来る学部を併設できないか模索する事になった。

 スポーツ活動をメインにする子が、同時にメンタルや体幹、スポーツ医療を学ぶ事で、選手生活終了後も安定した未来を築ける道筋を学校側から提案する。


 とても有意義な提案だと、理事長もはしゃいでたよ。

 実現したら素敵だよね!


 剣道部とボクシング部も今は、日本で一番人気のある練習試合の申し込み先になってるんだって。

 両部共に試合のある週以外の週末は、ほぼびっしり他校の遠征練習試合を申し込まれていて、輪島先生と柳生先生も調整で頭を悩ませてるそうだ。


 水泳はちょっと俺が自分のマンションの地下のスポーツ施設に行くと場がカオスになりすぎるから、学校のプールを利用するようにした。


 でもこっちでも元々は学校らしい外に設置してある短水路のプールだったんだけど、俺を撮影しようとする人が多すぎるのが問題になって、屋内タイプの長水路プールの建設をする事になったんだって。


 俺だけが撮られるくらいなら大した問題じゃないけど、女子選手も多数所属してるし、Hな目的で写真撮る連中も混ざると案件だよね?


 北島先生も満面の笑みだ。

 今の俺が所属してるうちにやってしまえば、俺のスポンサーメーカーが勝手にドーンと援助金出すみたいで、話が複数の競技で一気に進んでるよ。


そんなこんなで俺を取り巻く環境は、騒がしく過ぎ去る。

『ホープランド』の難民支援地域も募金活動が世界的な流れになって殆どが『ホープランド』に投入される事になると、この施設が所属する国家でも『ホープランド』特別行政州政府が完全に認知され、面積も当初の二十倍にあたる南北百キロメートル東西八十キロメートルの長方形の区間が与えられ、この区間での人口一千万人計画がスタートする事になった。


 流石に難民だけで一千万人は経済が立ち行かないので、EU諸国とアメリカ、アフリカ大陸での優位を失いたくない中国と日本が非常に良心的に、経済の発展を応援し始め、難民の中から優先的雇用をして行く政策と共に、『ホープランド』の存在は世界に大きく受け入れられる事になった。


 当初の二十キロメートル×二十キロメートルの区間では、バチカンの聖女マリアンヌの加護がある温泉設備も世界的なパワースポットとして話題になっている。各宗教各宗派が聖地としての施設建設を打診してくるが、バチカン以外の教会は流石に許可しなかったよ。


 広大なサファリパークの中にある温泉施設は、いま世界で行って見たい場所NO1と言われてる。


 遊真が大隈理事長に提案して、高等部、大学部の中から在学期間中のボランティア留学制度の話を纏めていた。


 高度な英語教育を身に付けながら難民保護の活動を一年間行うこの制度も、その後のこの学園グループの大きな人気制度として定着し、ここでの活動から獣医を目指す人なども沢山出てきて、とにかく話題の多い学校になったよ。


 お陰でこの学校の入試競争倍率が、かなりヤバい事になりそうだと、理事長はちょっと困ってたけどね。


 七月を迎えて、俺は世界陸上へ向けて再びアメリカへ向かう事になった。

 今回は、既に世界記録保持者としての参加なので、アメリカに降り立つ所から世界中のメディアが俺の映像を求めて、参列している。


 今回は、まだ夏休み前ではあるけどGBN12もお仕事で俺の応援に来ている。

 メインメンバーの香奈、アンナ、香織は世界中の言語をネイティブで理解して話せる事も話題になっている。

 陽奈も頑張って英語はネイティブ並みに話せる。


 遊真が一生懸命家庭教師してるんだってさ。

 二人の時の会話をすべて英語で行うとか、どんな日本人カップルなんだ。

 ちょっと腹が立つ気もする。


 開会式には、ジョージもカーネル大将と共に来ていて「勿論アメリカ国民の応援がメインだが、今回は俺の友達も来てるから、そっちも応援する!」って合衆国大統領らしくないスピーチをしたけど、アメリカ国民にも受けが良かったらしいよ?」


 ちなみに、リンダは流石に出場は断ったんだってさ。

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