第97話 全米オープン決勝ラウンド
一番ホール 四百五十ヤード パー4
オナーはライガーさん。
ジャストミートしたドライバーショットは、狭いフェアウェイの真ん中を捉え、今日も絶好調をアピールする。
俺も負けじと、ライガーさんを僅かに躱すティーショットだ。
ジャスティンさんも続く。
そんな感じでスタートした最終日は、大詰め十八番ホールを迎えていた。
現地時間では十六時過ぎだ。
日本では九時を過ぎたくらいかな?
既に他のプレーヤーは全員ホールアウトしており、四位の選手でも1アンダーのスコアでのホールアウトだった。
現時点での上位三名は
俺 18アンダー
ライガーさん 18アンダー
ジャスティンさん 15アンダー
最終日ではジャスティンさんが一番スコアを伸ばしていた。
いつも陽気なライガーさんも流石に四大大会最終日、最終ホールのこの場面では表情が真剣だ。
十八番ホール 五百七十ヤード パー5
ストレートホール。
ティショットは三個の左
グリーンは左に振られ、手前には45ヤードの小さな池が配され、ロングヒッターの簡単な2オンを妨げている。
グリーンは正方形で左右はバンカーでガードされている。
グリーン中央に尾根が走る。
俺が確実に勝利するには、パター勝負に持ち込まない事だ。
その為には、2オンが必須条件だな。
倉田さんとも相談して、俺の飛距離から割り出したのは、ティーショットはドライバーでとにかく飛距離を稼ぎ、二打目のドライビングアイアンでのショットに全集中すると言う作戦だった。
ジャスティンさんは確実に3オン狙いが出来る位置に落として来た。
ライガーさんはどうする?
当然の様に、ドライバーを振り抜いて330ヤードを超えるティショットだった。
俺も予定通りに、ドライバーを構える。
低めに打ち出されたボールは、向かい風に煽られて途中から高く舞い上がって、キャリーでライガーさんの位置を超えた。
ランは稼げなかったが、それでも350ヤードのショットだ。
ギャラリーの盛り上がりも最高潮に達している。
筋肉爺ちゃんが興奮してシャンパンを振り回して注意されてた。
運命の二打目だ。
ジャスティンは池の手前に理想的なアプローチショットを残す。
ライガーさんのスプーンで放った二打目は、高く舞い上がり、グリーンの右端を捉えた。
歓声が沸き上がる。
そして俺は予定通りにドライビングアイアンを持ち出して構えた。
直前に倉田さんからアドバイスが入っていた。
「翔、今のライガーの二打目を見たか? ピンの旗は靡いて無いがグリーン上空では風が右に流れている。気を付けろ」
「低めに狙います!」
そして俺は、思いっきりよくテイクバックを取り、フェイスをかぶせ気味に低い弾道での二打目を振り抜いた。
一直線にピンに向かっていく俺の二打目はグリーン手前でもまだ勢いが衰えず殆どライナーと言えるような弾道を描く。
「勢いが強すぎる、これではグリーン直撃するとオーバーしちまうぞ」
「倉田さん大丈夫です。しっかり最後まで見て下さい」
俺のショットはそこでグッと高度を落として、手前の池へと直撃した。
ライガーさんが一瞬手を握りしめて、勝利を確信する。
だが俺のボールは水切りショットになって、池の表面を2回ほど跳ね強すぎた勢いも殺して、ピンそば50センチに止まった。
ライガーさんが、握りしめた拳を天に掲げ、両手を開いた。
どうやら勝負は決した。
先にジャスティンさん、次にライガーさんが二人共バーディーでホールアウトして、残すは俺の五十センチメートルのイーグルショットだけだ。
この瞬間日本での視聴率は平日午前九時台と言う時間にかかわらず五十パーセントを超えたそうだ。
世界中でも、それにほぼ近い程の視聴率が稼ぎ出している。
スポンサーメーカーさんもさぞかし喜んでるだろうね?
俺がアプローチに入ると取り囲んだ大観衆にも一斉に静寂が訪れる。
そして俺のウイニングショットはカップへ転がり込んだ。
当然の様に元州知事の筋肉爺ちゃんが、ドンペリのロゼを持ちこんで一緒に来ていたパリピなセレブ達のドレスや俺にかけまくり始めた。未成年なのに口に入るじゃねぇかよ!
どんだけフリーダムなんだ。
プロとして初めて手に入れた獲得賞金は、百二十五万ドルに副賞などを合わせると百五十万ドルを超えた。
俺は迷わず難民保護団体への全額寄付を発表したよ!
すると大会本部からも本戦出場者が六十名の予定から、二十一名に減った事による賞金総額の余剰金を、全額寄付してくれると発表された。
更に筋肉爺ちゃんたちが四日間通い詰めて、ただパーティしてただけかと思ってたら、毎日募金も呼び掛けていて、流石セレブ達な感じの五百万ドル以上の募金を俺に手渡し、親指を突き出した。
この爺、すげぇなと少し見直した。
その後は、正真正銘のパーティが始まり。綾子や美緒、アナスタシアにリンダも参加してそれぞれにパーティドレス姿が素敵過ぎたぜ。
ジョージからのメッセージもパーティ会場に届き、俺の事を『ベストフレンド翔』とか書いてあるもんだから、結構な話題になったよ。
黛さんと倉田さんも百万ドルずつのミッションクリアボーナスが決定して、満面の笑顔だ。
よかったね!
ライガーさんや、ジャスティンさんも参加してくれて俺はジャスティンさんの息子に、応援のお礼としてウイニングボールをプレゼントしようとしたら「ノーサンキュー! ウイニングボールは次の全英オープンでパパがくれるって言ったからいらない」って言われたぜ。
全英が楽しみだな!
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