第73話 今年は色々あったよね【後編】

「日本だと俺もアンナもメチャ目立っちゃうだろ? だからさ国外とかどう?」

「素敵過ぎるからそれ! でもさ翔君ゴメンなさい。今年は香織も一緒にお願いしたいの。去年二人で行ったのがバレて、その後なだめるのが大変だったんだよ」


「そうなんだね。香織は俺に何も言わなかったから知らなかったよ」

「言わない方が怖いよね」


 そんな会話をしていると背後から、香織が声を掛けて来た。

 一瞬ビクッとなったぜ。


「何のお話をしてるのかな?」

「勿論今年のカウントダウンは香織とアンナと三人でどこで楽しむのが良いのかを話してたよ」


「私達悪目立ちするし、この年齢の三人組で出歩いてるのがマスコミとかに告げ口される危険性を考えると、難しいよね」

「だからさ、俺にカウントダウンの予定は任せて貰えないかな? 色々今後の事で話を聞いておいてもらいたい事も有るから」


 そう告げて、一次会のクリスマスパーティはお開きになった。


 ◇◆◇◆ 


 俺は美緒と綾子先生と三人で国内拠点へと移動して、二次会を始めた。

 今度は、俺もシャンパンとワインを楽しむぜ。


 『ホープランド』の範囲拡大の事を話すと美緒は大喜びだった。

 綾子先生は「今の『ホープランド』ですら、開発はまだ途中なのに大丈夫なの?」と、ちょっと心配性な一面を覗かせていたけどね。


 アナスタシアとリンダに任せている、『カラーレンジャーズ』のお助け部門への要望は結構な数が舞い込んで来ていて、基本的には俺が行かなくても十分に対処できる内容の物は任せている。


 マー達もレベルアップ効果でかなりの能力を取り戻しているから、地球で起こる事件ならよっぽど対応出来ない事は無いからね。


 色々な話をしながら、俺はアンナと香織には俺の事を話そうと思っていると告げた。


「まだ教えてなかったの?」と、美緒と綾子先生は逆にびっくりしてた。


「箕輪さんも坂口さんも運動能力もお勉強の成績も、明らかにこの一年間で、凄い成長をしていますから、きっと翔君の影響だって事は気付いていますよ?」

「そうなんだよね、でも二人共さ俺には何も聞かないんだよね。逆に心配になっちゃってさ。これから先の事を考えたら、秘密で居るよりはっきりと話しておこうと思うんだ」


「『カラーレンジャーズ』に入隊させるんですか?」

「それは……本人達の意思に任せたいな、危険も伴うのは事実だし無理強いはしたくないからね」


 三人で星空を眺めながら温泉にゆっくりと浸かった。

 星空だけを眺めるつもりなのに、どうしても二人のおっぱいに目が行っちゃうのは仕様だからしょうがないんだからね!


 ◇◆◇◆ 


 そして年末を迎えて、俺とGBN12のメンバーは当然の様に今年一番話題になる事が多い存在だったので、年末の恒例の音楽番組へ出演した。

 年齢の問題があるから一番早い時間帯の出演となり、その年の国民的歌番組はその瞬間が最高視聴率をマークしてなんと七十五パーセント越えだった。


 演出もオリンピックの名場面の映像の前で、GBN12が応援ソングを熱唱して、応援メンバーで参加した完コピパフォーマー達が総勢百名で囲み俺はその人たち一人づつと握手をして回るだけの演出だったんだけど、そのシンプルさが逆に良かったみたいで凄く盛り上がったぜ! まさに今年の日本を象徴する瞬間だった。


 俺達だけにたっぷり三十分も時間を取った国営放送局の決断も凄いけど、今泉さんだけはこの国営放送局の出演料の安さに憤慨していた。


 そして番組を十九時三十分には終え、アンナと香織と待ち合わせて三人で出かける事にした。


 ◇◆◇◆ 


 俺は、二人共目をつぶって俺の手を握ってと伝えた。

 そして俺は転移を発動して、アフリカの大地へと飛んだ。


 二人に目を開けていいよと伝えると、一面のサバンナに目を見張った。


「どう? 象もキリンも中々野生で暮らしている姿を見るのは、珍しいでしょ? 」


「「すごーーい」」


 二人共目の前に広がる光景に感動して目を奪われていた。


「で、これはどういう事なのかな?」

「お、やっぱり気にになる?」


「そりゃぁ気になるよ、絶対何かあるのは解ってたけど、アンナと二人で話してくれるまで聞かない! って決めてたからね」

「そうかぁ、ありがとう。素敵な友達を持てて俺は幸せだよ」


「えぇ友達なだけ?」

「だって俺にはまだ二人のうちの一人を選ぶなんて出来ないから、どっちとも友達だよ」


「ふーん、そうなんだ。でもさぁ二人だけなのかな?」

「えっ、何を言ってるのかな? 良く解んないけど」


「翔君の周りに居る女性ってみんな翔君を見る目が、恋しちゃってるじゃん。二人だけな訳無いよね?」

「それは、まだ何も決められないよ。十五歳だろ俺達」


「それも怪しいな? ってアンナと私は思ってるよ?」

「そうか、じゃぁ取り敢えずドライブでもしようよ。ここは私有地だから免許も必要無いからね」


 俺はRV車にアンナと香織を迎え入れ、広大な『ホープランド』の敷地を走り回った。


 その車の中で「俺ね、異世界帰りなんだ」


「やっぱりね、行って来たのは当然中二の夏休みだよね?」

「その通りだよ、帰って来たら元の姿に戻ってたけど、向こうで十四年過ごした二十八歳のおっさんだよ、俺?」


「十四個も上なんだ。でも今は十五歳の姿なんだし問題は無いよね」と、アンナと香織で確認しあってた。

「それで、その身体能力とか、頭が良くなったのってやっぱりレベルアップみたいな能力があるの?」


「そうだね、向こうで魔王倒すまで頑張ったから、レベルも上がってるね。ここに来た能力なんかも当然そのお陰だ」


「ねぇ翔君って、私たちに何かしちゃったの?」

「あー能力の事だよね、この世界には魔素って言う体の能力を高めたり魔法を使えるようになる要素が無いんだけど、向こうの世界はその魔素が豊富に合って、レベルの高い俺は体内にその魔素を大量に蓄えてるみたいなんだ」


「それで?」

「俺の側に居る事の多い、遊真や綾子先生、アンナと香織は知らず知らずに魔素を取り込んじゃってるみたいだね。他にもボクシングジムやスイミングスクールでも明らかに俺に近い人たちは、効果が表れてるね」


「成程ねぇ、でも綾子先生は明らかに私達より沢山強化されてるじゃん? それってもしかして先生とそういう関係なのかな? 」

「いや、きっと想像してるような関係にはなって無いよ。ただね同じお風呂に入ることが多くてね、その関係で多く魔素を取り込んじゃってるみたい」


「へぇ同じお風呂って一緒に入ってるの?」

「あ……まぁ偶にはそういう事も有るけど、絶対Hな事とかして無いからね」


「ふーん……でももう一つ聞いて良いかな? 間違いないと思うけど、こんな能力持ってるんだから『カラーレンジャーズ』も翔君だよね?」

「あ……そうだね。俺と仲間たちだよ」


「私達さ、もう十分普通じゃ無くなってるって解ってるからね」

「今更、私も香織も翔と離れる気持ちなんて無いんだからね」


「そんな早くに気持ちを決める必要なんて無いよ。俺のやってる事は危険な事も凄く多いし、でもここ『ホープランド』のお手伝い位なら是非手伝って欲しいかも。人は何人いても足りないから」

「私やってみたい。『ホープランド』って難民の保護とかしてるんでしょ」


「私も勿論やるわ」

「そっか、そう言ってくれると助かるけど、ここは日本じゃ無いから転移で移動するのに身バレが困るんだよね、だから俺達はここでの活動は基本『カラーレンジャーズ』として行ってるんだけど、あの格好で活動するのは平気なの?」


「あの全身タイツだよね? 他のは無いの?」

「用意はしてないけど身バレしない格好ならいいと思うよ?」


「えと、色は何色なのかな?」と、考えるのが面倒臭いと思ったのか、香織が色を聞いて来た。

「今いるメンバーが赤、青、黄、緑、白、黒、桜、オレンジ、紫、銀、金だからそれ以外の色で希望を聞けるよ?」すると今度はアンナが、「柄物じゃダメなの?」と聞いて来た。


「『COLOR RANGERS』だからね? 出来れば単色がいいかも」

「そうなんだぁでも別に柄でも良くない?」


……何故か食い下がられた。


「まぁ実際そんなに拘りは無い」


「そう、じゃぁ私はヒョウ柄にするから、香織はゼブラにしたら? 」

「ゼブラか、いいかもじゃぁそれで」


 と、言う流れで香織とアンナの加入が決まった。


「そろそろ良い時間だから世界一周カウントダウン巡りするよ! 」


 今度は、まず日本の拠点に飛んだ。


「ここは俺の日本での活動拠点で、ここは天然温泉の露天風呂もあるんだよ」


 早速香織とアンナが見に行くと「広いー凄いー」と大騒ぎしてた。

 早速二人で入る事にしたみたいで、中から声が聞こえた「翔君も一緒に入る?」


 丁寧にお断りしておいたぜ。

 俺の理性が保てる自信が無いし。 


 風呂から上がるともう除夜の鐘の時間だった。

 国内のカウントダウンはテレビで済ます事にして、年が明けると


「「「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」」」


 と、三人でお互いに言い合った。


 それが終ると転移で香港に飛んだ。日本より一時間遅れてる。

 凄く多くの人が訪れている中を、花火も上がってお祭り騒ぎだ。

 屋台で買い食いを楽しんで、次はインドのデリーへ飛んだ。

 日本から-3.5時間だ。


 次はトルコのイスタンブール、マイナス六時間。

 フランスのパリ、マイナス八時間

 イギリスのロンドン、マイナス九時間

 アメリカのニューヨーク、マイナス十三時間


 と回って世界中のカウントダウンを堪能した。

 二人とも大満足で日本に戻って、三人で熱田神宮へお参りに行ってから帰宅した。

 ちょっと疲れたけどみんな若いから大丈夫だぜ!


 まぁ熱田神宮はそれでなくても初日百万人が訪れるような神社なのに、俺が香織とアンナ連れて現れちゃったもんだから、現場が騒然として、お巡りさんに囲まれながらの参拝になったのは本当にごめんなさい。


 でも、これで仲の良い近くに居る存在は全員巻き込んじゃったし、こうなった以上は責任も付き纏う。

 みんな俺が責任もって守るからね。


 と、初詣で誓ったぜ!

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