第74話 高校入試
年が明けて、今年も色々忙しくなりそうな予感でいっぱいだ。
俺は昨日の一月一日だけが完全休養日で、今は冬休み期間中という事も有り、テレビ出演とCM撮影で後六日間の休みは忙しく過ぎてゆく。
でも昨日は熱田神宮から帰った後は、家で母さんの用意したおせち料理を楽しんで、こたつで一日テレビを視てたぜ。
「翔、あんた有名人なんだから迂闊に出歩いて、警察の人達の迷惑になるような行動は慎みなさいよ? 午後のニュースでお巡りさんに囲まれてる映像流れて一瞬びっくりしたんだからね」と、ちょっとお小言を言われた。
忙しい合間を縫って加山ボクシングジムにも顔を出し、健人さん達にも挨拶をした。
前回の勝ち方が強すぎたために中々防衛戦の対戦相手が決まらなかった健人さんも、初防衛戦が決定して三月に試合があるんだって。
今回は日本国内で試合があるから、後楽園ホールで加山祭をやるって言ってたけど、俺がセコンドでタオル係するのが前提だったら早めに教えてくれないとスケジュール合わないんだけど……
出演料は終わった後の食事だけなんだし……
だって三月とか後半はアメリカにゴルフツアーで二週間行きっぱなしになるからね。
そして俺の元には最近強烈なアピールを仕掛けて来るスポーツ団体もあるんだよね。
二年後に控えた冬季オリンピックで、スケート連盟がスピードもフィギュアも両方凄くアピールしてくるんだけど、結構困ってる。
俺が去年遊びで行ったスケート場で五回転半のジャンプしちゃった事があったけど、オリンピックの活躍とかで有名になってから、その話題がネットに出回っちゃったんだよね。
でも俺にはきっと芸術点を高めるような競技は無理だから、一回だけジャンプを飛んで終わりの競技なら何とかなるけど、フィギュアは無理!
スピードスケートならなんとかなりそうだから、やるならそっちだよね。
後の競技はアルペンスキーとスノーボードクロスの三競技かな?
一番興味が湧いてるのはスノーボードクロスなんだよね、モトクロスに通じる感じがするしね!
基本芸術系は無理です! って伝えておこう。
JOCの管轄だけどそれぞれ担当の人とか違って、面倒臭い事言われたら別にやらなくてもいいんだけどね。
◇◆◇◆
アンナと香織がヒョウ柄とゼブラ柄を希望したから、それに合わせて全身タイツも用意したぜ。
呼び名は通称で『レパード』と『ゼブラ』そして、彼女たち二人も拠点の温泉の魅力にどっぷりはまってしまった。
折角だから『ホープランド』の拠点にも観光用のスパリゾートと俺達専用の大露天風呂は別に作る事にした。
アフリカの大自然の満天の星空を眺めながら浸かる大浴場とか、めっちゃ贅沢だよね!
この施設は、存在を明らかにしたくないのもあるから、俺が土木スキルを使って作ることにしたぜ。
だってその方が早いしね!
「あれ? 香奈ちゃんなの?!」
香織とアンナが拠点の温泉に入りに来たら、香奈が先に来て温泉で寛いでた。
まだ他のメンバーは紹介してなかったから、かなりびっくりしてた。
「やっぱり、二人も仲間になったんだね。そろそろだと思ってたよ」
「陽奈ちゃんもメンバーなのかな?」
「お姉ちゃんは違うよ。遊真君はメンバーになっちゃったけどね」
「ねぇ香奈ちゃん、勿論陽奈には内緒にしてるんだよね?」
「うん、でもさ、グループの中でお姉ちゃんだけ入って無い状態だと、もしばれちゃった時のショックが大きいかもね」
「ぁぁそれ確かに心配かも……」
「そこは彼氏さんに任せちゃっていいんじゃないの?」
「遊真君決断できるのかな?」
そして三人がお風呂から上がって寛いでいると、綾子先生も現れた。
「あら、早速温泉の魅力に取りつかれちゃった様ね? これからも色々よろしくね?」
「ねぇ先生はいつから知ってたの?」
「私は一昨年の十二月にほら、翔君が期末テストで全科目満点の結果出した時に、聞いてたわ」
「そうなんですね、何だかずるいなジェラっちゃうよ」
「貴女達もこれからは、『カラーレンジャーズ』としても活動するんだから条件は同じですよ。先生も貴女達に負けない様に頑張りますからね?」
「ねぇ先生それは女性としてもって事ですか?」
「勿論そうですよ? もう聞いてるんでしょ? 実際の翔君は精神年齢では私より年上だしね。全然勝負になると思ってるわよ」
「そうなんですね……香織、負けられないね、頑張ろう!」
「うん、頑張ります」
何だか女性陣が、妙なライバル感を出しちゃってるけど、この先どうなるんだろ?
「香奈ちゃんは、なんで仲間になったの? きっかけとかあったのかな?」
「私は前から言ってるじゃん。魔王様だって」
「ぇ……まさか本物なの?」
「うん。そうだよ」
「何で魔王様になって、何で『カラーレンジャーズ』のメンバーなのかがさっぱり意味解んないよ」
「それはね、内緒!」
「えええ、言いなさいよぉ」
「そのうちね」
◇◆◇◆
明日からは、中学生生活も最後の三学期だ。高校受験頑張んないとね。
一応GBN12の活動は三学期は受験生のアンナ、香織、陽奈は試験終了まで活動はお休みになってる。
この時期に活動してると、色々余分な噂されちゃうから、頑張った感を出す為にはしょうがないって事だ。
まぁ三人とも成績は今では全員学年十番以内だし、落ちる要素は何も見当たらないんだけどね。
そして、その期間は『ホープランド』での活動とチェルノブイリダンジョンでのレベルアップ活動も頑張った。
「翔、見てくれよ、このウオータージェットガン。中々かっこいいだろ?」
遊真が自作で高圧縮で飛躍的に飛距離と精度を高めた水鉄砲を作り上げた。
チタンとカーボンをふんだんに使って、高強度、軽量化を両立した優れものの水鉄砲だ。
「工作機械とか揃えるのが大変だったぜ、リンダさんが協力してくれたから材料とか特殊加工とかは外注したけどな」
「なぁ遊真……水鉄砲作るのにいくら使ったんだ?」
「それ聞くか? ちょっとだけ高かったけど一挺作るのに百二十万円掛かった」
「何で水鉄砲が百二十万円も掛かるんだよ。百均のでも普通に倒せるのは解ってるよな?」
「それでも、このこだわりがきっとみんなの安全性を大幅に高めるんだから、後悔はしてないぜ。それに翔が馬鹿みたいな金額毎週渡してくるじゃんか、あんな額、中学生が普通に使ってたら、その方がおかしいからな」
「まぁ確かに距離が稼げるのは大事かもな、アンナ達も入っちゃったし」
「だろ? 二挺目からはコツも掴んだから、二十万円ほどで作れるし一応全員分用意しておいたぞ」
「解ったありがとう、それは全員の主要装備にさせてもらうよ。勿論買い取るから後で美緒に貰っておいてくれ」
そして俺は新しく広がった『ホープランド』の区画も一気に防護壁を作って、サファリパーク計画も順調に進む事になる。
日本の他にも欧州各国も教皇様が根回しをしてくれて『ホープランド』の活動を支持する声明を出してくれたので、カトリック以外の信徒達も分け隔て無く受け入れる事が出来るようになって来た。
既に、敷地内で暮らす難民の数は三万人にも及び、その人達の世話をするのも、初期に助け出した人たちがスタッフとして活動しているので、凄い勢いで人口は増加している。
この土地では、難民の人達の衣食住と医療は完全に保証するので、基本的に生活費は必要無いんだけど、それだけでは生活に張り合いが無くなるのも事実だし、土地はまだまだ大量にあるから、格安人件費で日本や欧米の軽工業でも誘致したいな。
と、言う事でアナスタシアと美緒にその辺りの交渉を任せてみる事にした。
リンダは、一応米軍の軍籍を持ったままだから経済活動は、外しておいたほうが良いと思うんだよね。
まだ、魔物関連で各国の軍と連携する必要が起こる可能性は高いし、その時は俺達の窓口になって貰わなきゃいけないからね。
後は農産物を育てるよりは畜産の方が向いてると思うから、そっち方面の指導者が欲しいな。
でもお金がいくらあっても足らなくなってくるから、バチカンの奇跡のアルバイトも頑張ってるぜ。
教皇様も気を使ってくれて、特別な奇跡が月に二回程度は起こる様になり、俺の懐も祝福される。
◇◆◇◆
二月に入り寒風の吹く中を、俺達は意気揚々と東京に向かった。
今日は高校受験の当日だ。
でもさ、この高校って元々凄く人気のある学校なんだけど、推薦で受験した遊真から聞いたら、推薦でも倍率は二倍だったんだって、まぁ既に結果は出ていて遊真は無事に受かっていた。
そして俺達の受験する一般入試なんだけど、例年三倍程度の倍率なんだけど、早くから俺や香織達がこの高校に進学希望だという情報が漏れだしていて、今年の一般入試は倍率が七倍にもなっていた。
大丈夫なのかな? 俺。
俺達は一緒に受験出願を出していたから、比較的受験番号も近くて同じ教室で試験を受ける事が出来た。
勿論試験の出来は問題ないと思うけど、最後に名前の書き忘れが無いかを五回くらい確かめたぜ。
受験中は流石に俺や香織達の姿を見ても、遠くから噂話をする程度だったけど、試験終了後は大勢の受験生たちが俺達の周りに集まり握手やサインを求められた。
学校側がある程度ブロックはしてくれたけど、ちょっと会場から出るのには時間が掛かっちゃったぜ。
でも受験終了のお祝いで、その後はみんなで美味しい物を食べに行こう! っていう話になって秋葉原のテイクアウトショップを回った。
当然の様にすぐ身バレして、沢山の人達が俺達の周りに集まっちゃって落ち着かなかったけど、気にしたら負けだと、楽しんで帰ったぜ。
でもさ、俺達が受験で会場入りする前と、終わってから秋葉原で食事して名古屋へ戻るまでの間はずっとテレビカメラもついて回ったんだよね。
今更だけどね!
◇◆◇◆
みんな揃って無事に高校受験は合格した。
安心したよ……
早速の様に、輪島先生や柳生先生が「いつから東京に来るんだい?」と、連絡して来た。
「まだ、住む場所を取得中なのでもう少し時間がかかります」と伝えたら「取得中? ってどういうことだい?」と聞かれた。
俺は「自分の父親が社長のマネジメント会社が東京にマンションを一棟取得して、下層階が事務所オフィスで上層階が住居マンションになる予定で、契約完了次第の転居になりますから、東京に行くのはそれ以降になります」と伝えた。
「松尾君、俺も学校クビになったら雇ってくれよな」と、いきなり言われてビビったぜ。
香織やアンナ達もそのビル内から、通う事になる予定だ。
一応うちの事務所の所属タレントだしね。
当然、マネジメントは四月からは学校を退職する綾子先生が、一手に引き受けてくれる。
今泉さんも、本拠地を東京に移してそのマンション内にオフィスを構える事になった。
いよいよ、俺達も高校生生活が始まるな。
ちなみに香奈と香奈のお母さんも俺達と同じマンションで暮らす事になったぜ。
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