第27話 中将にばれちゃった

 全国的に梅雨入りして、見上げる空は鈍い灰色で気分爽快! とは言い難い天気だ。


 今日は学校が終わったら、五輪関係の特番でGBN12と共にテレビ局へと呼ばれている。

 基本的に平日のテレビ出演は、学校があるので収録はすべて名古屋の局でお願いしている。


 俺との相性? って言うか俺が一番仲がいい一般芸能人は、塾講師の森先生で俺が出演する番組なら何処の局でも一緒にマッチングしてくることが多い。


 高笑いする魔王のようなキャラが香奈とも被っているが、なんだか二人で「HAHAHAHAHA」と高笑いしている絵面は誰得? なのかは解らないがそれなりに受けているみたいだ。


 七月に入ると五輪前には剣道の全国大会が控えているが、俺と香織が出場するために応援で集まる人数が莫大な数になることが予想されて、急遽入場料が全日本剣道大会と同額で設定されるなど混乱していた。


 それでも、中学生以下は無料なので、当日の混雑は凄いだろうね!

 番組の収録が終わるといつもの様に森先生が食事に誘ってきたけど、今日は斗真さんと約束が有るのでお断りした。


 香織達は、まだ少し振り付けのレッスンを受けてからの帰宅になるそうだけど、本当すごい頑張ってるよね。


 ◇◆◇◆ 


 斗真さんと待ち合わせ、俺の拠点に転移して美緒と綾子先生の四人で、先日地中海で行われた海賊殲滅の撮影動画を確認した。


「翔君、前から聞いておこうと思ってたんだが、今回の作戦でも艦対空ミサイルを含むかなりの数の兵器を、収納しているみたいですけど、何か使う予定でもあるのかな?」

「何も考えては居ないですけど、今後アフリカの施設の防衛とかで役に立てることもあるかも知れないですね。俺が常にアフリカの拠点に駐留する事は出来ないので」


「そうか、やりすぎないように頼むよ。カーネル中将からは非常に感謝されたよ、翔君がいなかったら今回の作戦は下手すれば連合軍側の全滅まで想定できたからね。でだ、今回はアメリカの国防機密費から五十億の報酬が出ているよ。それと連合軍側の内通者を炙り出す方法で、なにかいい提案が無いかと相談されているんだけど、どうだろう?」

「そうですね、内部に潜入して鑑定をかければ確実ですが、それには俺が内部の関係者と斗真さんに渡したのと同じ魔道具で入れ替わる必要がありますね。そうなれば俺の存在を少なくとも入れ替わる相手には知られる事になりますが」


「そうか、それはちょっと、まだ知られる危険を犯すのは危険だな」


 と、斗真さんが言うと美緒が「香奈ちゃんなら他の能力は何も持ってないんだし、知られてもそこまで問題ないんじゃないかな? 実際中国当局には、香奈ちゃんの存在を知った上で拉致されちゃってるんだし、恐らくロシアも存在は把握してるかも知れないし」と言った。


「そんな危険な任務を香奈ちゃんに頼んで大丈夫なの?」と綾子先生が発言した。


「念話と転移の魔道具持たせれば、何か合ってもすぐ脱出出来るし問題ないですね、あー見えても俺と同等の能力を誇った魔王だったんですからね彼女は」


 問題は、香奈と入れ替わることが出来る信用できる人物が居るかどうかだが、本人抜きで話しをしてもしょうが無いから、一旦休憩にして香奈に連絡を取り、レッスンが終わり次第拠点に来るように伝えた。


 香奈が拠点に姿を現し、ここまでの話のあらましを伝えた。


「カーネル中将に聞いた話では、今回の作戦に参加したメンバーで中将が信頼しているのは、オズワルト大佐と言う人が居るみたいだが、彼と入れ替わってもらうように手配して貰えますか?」と俺は斗真さんに提案すると、香奈が「オズワルト大佐って絶対おじさんでしょ? 私のピッチピッチのJCの肉体におじさんの意識が入るなんて絶対イヤだからね、絶対イタズラされて処女膜とか破られそうだし」


「それは大丈夫だと思うけどな?」

「思うだけ? もし身体に異変を感じたら責任取って翔君が、香奈と結婚する約束してくれるならいいけど?」


「斗真さんカーネル中将に連絡して部隊に信頼できる女性の方がいるか聞いてもらえますか?」

「解った、翔君は香奈ちゃんと結婚するのが嫌なのかい?」


「斗真さん……その部分に触れると話がややこしくなるから勘弁して下さいよ……」


 綾子先生が、話の成り行きで「あわわ」とか言ってるし、何だかシリアス感が薄れてきてるぜ……

 美緒は、どんな話でも平然としてるな、ある意味肝が座ってるよね。


「先生、もしかして先生も翔君狙ってたりするんですか? じゃぁライバルですね!」

「しょ、しょんな事無いでしゅ」と顔を真赤にした綾子先生が噛みまくっていた……


「香奈、だからそっち方向に話を持っていくなって」


 結局、斗真さんがカーネル中将に連絡を入れると、オズワルト大佐の秘書官が中将の娘さんだという事が解って、香奈はその人と意識を入れ替えて潜入する事となった。


 転移門と念話器を持たせるのに、俺と違ってアイテムボックスがない香奈の為に、マジックバッグを作成した。


 アイテムボックスに比べれば容量は少ないし、時間経過もあるけど、それでも一辺十メートルの立方体の容量はある。

 見た目は黒いゴム製の袋のような感じで伸縮性があり、ポケットの内側や、お気に入りのバッグの内側に貼り付けて使える優れ物だ。


 一応何があるか解らないので、自動小銃とスティンガーもマジックバッグの中に入れておいた。


 しかし、魔道具を作る為の、魔物素材の在庫がもう乏しいからな……バチカンと兵馬俑の魔物退治もそろそろ真剣に取り組まなければならないな。


 ◇◆◇◆ 


 斗真さんが横田基地へと向かい、横田基地にはカーネル中将とオズワルト大佐、中将の娘さんのリンダ中尉が待っている。


 挨拶だけ終われば今度はトイレで俺と斗真さんが入れ替わり、斗真さんには拠点で休憩してもらって、俺が三人の前に香奈と共に訪れた。


 オズワルト大佐は、カーネル中将のように俺と斗真さんが入れ替わった事には気づかなかった。

 まだまだだな!


 入れ替わりの魔道具のペンダントを、香奈とリンダさんに装着してもらい、意識を入れ替えてもらった。


「WAO! 凄いわ私の身体がこんなキュートな女の子になっちゃった」

「お姉さんの体胸が重たいよぉ、もいでいい?」


「香奈、胸はもぐなよ? 巨乳は正義だからな」

「しょ、じゃ無くて斗真さん巨乳派なんだね、リンダさんその身体にいる間に、おっぱいが大きくなるように頑張ってね」


 そしてカーネル中将が俺に、声を掛けてきた。


「斗真、他にも能力を使える存在は仲間にいるのか?」

「現在確認が出来ているのは、バチカンの奇跡は能力者ですね」


「教皇と聖女か?」

「そうなりますね」


「そこは、流石に手が出せないな」


 そして香奈は、オズワルト大佐と共に第六艦隊へと向かった。

 

「リンダさん、窮屈かもしれませんが、香奈が戻ってくるまでは、香奈として過ごして下さい。くれぐれも学校さぼったりしないようにお願いします。それと英語で会話されても困りますから、喋らないように」と頼む。


「斗真、私はパパと一緒に横須賀で育ったから、日本語はほぼネイティブです。安心して下さい」


 そんな会話をしていると「斗真ちょっといいか、リンダは少し席を外してくれ」とカーネル中将に声を掛けられた。


 んー、ちょっと嫌な予感はするけど、まぁなるようになれだな……


「はい、どうされましたか閣下?」

「君の正体は、最近のスポーツ界のスーパースターSYOU MATSUOだね?」


「あちゃぁ、随分あっさりバレてしまいましたね。中将くれぐれも内緒でお願いします」

「うむ、私は来月大将に昇進してステイツに戻り、米軍を指揮する立場になる。SYOUには斗真と同じ様に私と取引をして欲しいのだが? 約束してもらえればオリンピックのステージでアメリカが君に負けるのも我慢しよう。他にも色々役に立てると思うぞ」


「随分ゆるい条件ですね? アメリカ的にそこは大丈夫ですか?」

「一度斗真と三人で話を詰めよう。さっき教皇の話が出たがそこも君が関係しているのか?」


「さすがですね、斗真さんですらそこは知らなかった筈ですが」

「一つだけ我儘を聞いてもらえないか? 私の妻、リンダの母親が全身をがんに侵されて余命一ヶ月と宣告されている。私は人生を軍に捧げ妻に何もしてやれなかった。お願いだ妻を助けてくれないか?」


「貴方のその立場で、私利を口にするのですね、その立場でそんな事を言うなんて…………

           

 

 人として大好きです! すぐに伺いましょう案内して下さい」


 米軍の医療施設に案内され個室に中将とリンダの三人で訪れた。


「今からここで起こる事は、三人だけの秘密ですよ」


 そして俺は、中将の奥さんに治癒スキルを使い完全な治療を行った。

 柔らかな光りに包まれて、光が晴れた後には、度重なる癌の再発により切除されていた乳房も、放射線治療により抜け落ちていた髪の毛も完全に再生された奥さんの姿があった。


 再生されたおっぱいはリンダさんを上回る超爆乳だった……

 中将がとても羨ましいぜ!


 リンダさんが抱きついてきたが、香奈の姿で抱きつかれても、微妙だよ、特に胸のあたりが……

 できれば俺の姿の時にリンダさんの姿でのハグをプリーズだぜ。


 中将も目に涙を浮かべて、「Thank You……」と何度も繰り返していた。

 俺はお邪魔だと思ってひっそりと転移で拠点に戻って斗真さんと入れ替わり、バレちゃった事や、今の間に起こった事を包み隠さず報告した。


「まぁいずれ中将にはバレると思っていたから、それはしょうが無いな。しかし中将が米軍のトップに座るとなると、一気にテロ組織の制圧が進みそうだな。こちらも流れに乗り遅れないようにして国際舞台での立ち位置を確立しなければいけないな」

「中将とはきっといい関係を築いていけると思います。奥さんの為に本気で涙を流せる人は信用できます!」


 そして、香奈の姿のリンダさんは学校では出来るだけボロを出さないように過ごしてもらい、授業が終わるとすぐに綾子先生の用事といって、陽奈ちゃんと一緒に居る時間が無い様に過ごして貰い、丸一日が立って香奈から任務終了の連絡が入った。


 転移門でオズワルト大佐と共に戻ってきてもらったが、オズワルト大佐がびっくりしていた。

「くれぐれも内密にお願いします」と中将を前にして約束をしてもらった。


 中将もこのオーバーテクノロジーには流石にビビっていた。

 ある程度実力を見せてないと、交渉で強気に出られちゃったりするとやだしね!


 香奈が特定した内通者は三名も居た。

 いずれも十五年以上の軍隊経験者で佐官の地位にある上級幹部だった。

 宗教の恐ろしさは、この三人が昔の日本の忍者の『草』と呼ばれた存在と同じ様に使命を帯びたまま軍隊で順当に出世していき、今回の作戦にまで持ち込んだことだった。


 中将からは機密費から三千万ドルのキャッシュで今回の報酬を貰った。

 斗真さんよりいっぱいくれるなぁ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る