第22話 世界記録の影響と全国模試
昨日の【OCSC】決勝ラウンドからから一夜明け、俺は自宅で朝を迎えた。
今日は平日で普通に学校だし、遊真や香織ちゃん達に綾子先生も一緒に東京に行ってたし、父さんが必死で運転して夜中のうちに帰ってきたよ。
父さんありがとうね。
運転お疲れさまです!
でも父さんには昨日の賞金全部上げるからね!
母さんのプレゼントもちゃんと買ってあげてよ‼
それにしても昨日のマスコミの囲み取材は、面倒くさかったなぁ。
質問の内容が中学生にそんな事聞くなよ? って感じだし、俺に何を言わせたいんだよ? って感じの誘導尋問に近いインタビューとかホントもうねぇって感じだよ。
「賞金は何に使いますか?」って言うから「親にプレゼントしますっ!」って言ったらさ……
「陸上の競技会によって得た物は、もっと凄い記録が出せる様に自分のトレーニングに使うとか、そう言うのでは無いんですね?」とか、そう言わせたいなら最初から台本書いて渡せよねって感じだ。
綺麗なお姉さんの居るお店で、賞金使って豪遊したいですね! とか、コミケで薄いムフフな本を買い集めたいですとかでも良かったかな?
十八禁系の解答はやっぱりアウトだろうな?
インタビューに二時間も取られた上に、ドーピング検査もなんかすげぇ念入りにやられたし、確かにありえないような記録を出し続けたけど、明らかに俺だけ狙ってるよね? 他の人は五分くらいだったのに、俺はたっぷり二十分は色々検査されたよ?
まぁ潔白はちゃんと表明してないと、後々面倒な事が起こるだろうし、しょうが無いけどね。
それでも、昨日の夜のニュース番組はスポーツニュースじゃない普通の報道番組でも俺の事ばかり放送してたから、なんかテレビで自分の姿とか見ると照れるよね。
人前に出るだけなら、勇者やってたし、大抵の事は慣れてたつもりだけど、テレビで全国どころか世界中に放送されてたとなると、やっぱりやり過ぎちゃったかな? とも思うが、出来ることは出来るんだし、しょうが無いよね?
でもさ、テレビのコメンテーターって職業の人って、何を基準に判断して喋ってるのかな?
俺の存在が、もたらす効果と悪影響とか昨日のうちにクリップボードに纏めて、もっともらしく喋ってたけど……
一番笑えたのは、俺を「突然変異のミュータントかも知れないですね、もしそうだった場合我々既存のホモサピエンスと違う高次元の新人類の可能性が高い、我々旧人類は淘汰される未来になるかも知れませんね?」って言ってた事だ。
もしかして俺って人類の敵認定されそうになってる?
その発言のせいで、俺に誹謗中傷が集まって外を歩けなくなったから、競技活動は引退します! って発表しようかな?
うん、そうしよう! 五輪が終わって競技から身を引く時に利用させて貰う事にした。
両親と一緒に朝食を取り、学校に行く準備をしてると父さんが声を掛けてきた。
「翔、昨日の賞金な、なんか額がでかいから、俺が貰ったってなったら贈与税がどうとか、面倒くさそうな話ししてたから少し考え直してさ、翔をマネージメントする会社の設立資金として使うことにしたぞ。社長が俺で母さんがマネージャーとしてCMとかテレビ出演の依頼とか管理する事にしたけど、それでいいか?」
「いいんじゃない? 別になんかさせるつもりとかじゃないよね?」
「心配するな、仕事自体はするもしないも全部翔が決めればいい、俺達は来た話を書類にまとめて翔に渡すだけだ」
「バイクショップは当然続けるんだよね?」
「当たり前だ、子供の収入を当てにして寄生しようとかは少し
しか考えてないぞ」と父さんが言った。
母さんは「あら、私は毎月一回くらい温泉旅行があるような贅沢はさせてもらっても怒らないわよ?」と言ってた。
俺は「温泉はいいよね! 毎月一回くらい俺のトレーニングに必要だからと言って、温泉旅館に行く計画を入れておいて!」と母さんに頼んだ。
そんな話をしてると家の前が妙に騒がしいことに気づいて、外を覗いてみると、家の前に大量のうちの中学校の生徒や近所の人達が集まってて何故か俺が顔を出すと「松尾翔君バンザーーーーイ」とか叫びだすお爺ちゃんとかも居た。
俺はびっくりして「すいません朝からそんな大きな声出すと、ご近所の迷惑になりますから止めて下さい」って言ったら「ご近所の人達って皆ここに来てますよ? 翔君の顔を見に」って言われた。
ちょっと引いちまったぜ……
みんなに「ありがとうございますオリンピックも頑張りますね」と言って逃げるように学校に向かったが、当然のように俺の中学校の生徒達は目的地が同じなので、大行進のようになってしまった。
学校に着いても、俺の教室の廻りには全校生徒の殆どが、俺の姿を見に来ていてちょっと渋滞が起こっていた。
教室の中で、香織やアンナちゃんと話をしてると、一々「あぁ羨ましいなぁ」とか言う声が聞こえてくるしかなり面倒くさいと思ってたら、校内放送で又呼び出された。
何事かな? と思って職員室に行くと綾子先生が憔悴しきっていた。
朝から松尾君に面会希望の全国の高校と報道関係の対応だけで、何も出来ない状況で学校の回線もパンクしてしまってます。
「流石にこれは困るので、マスコミ向けの声明は変えて貰えませんか? 学校関係だけは、何とか対処しますから」
と、綾子先生から泣きつかれた。
他の先生も憐れみの視線を向けていた……
「CM出演希望の企業からのオファーも凄いことになってますよ? 学校はマネージャー業務は出来ないのでご紹介は出来ませんと言ってるんですが、連絡を付ける方法を教えてくれと言われてもう大変です」
「先生、なんか朝から面倒かけちゃってゴメンなさい。何か手段を考えますね」
「取り敢えず今日は、朝から全校朝礼でまた昨日の世界記録とオリンピック出場の報告会があるから頼むわよ」と言われて教室に戻った。
ホームルームの時間が迫っていたので、流石にギャラリーは減ってたが同じクラスの連中からの祝福の言葉は続いた。
全校朝礼のアナウンスが有り、校庭に並ぶと校長先生に名前を呼ばれて皆の前に立たされた。
「昨日の松尾くんの活躍は、すでに皆さんもご存知でしょうが松尾君は中学三年生にして昨日一日で陸上競技で七つもの世界新記録及び、オリンピックへの出場権を獲得しました。既に出場の決まっていた水泳競技との兼ね合いもあり、陸上競技では三種目の出場になるそうですが2020東京五輪の日本の期待のホープとしての活躍を全校をあげて応援して行きたいと思います。それでは松尾くんから一言お願いします」
「松尾です、皆さんおはようございます。テレビや競技場で応援をしてくれた皆さんに対しては、感謝の気持でいっぱいです。皆さんの応援が僕の世界記録達成の原動力になったのは間違いない事実です。昨日は僕自身世界のトップレベルの方々と間近に触れ合い、最高峰の技術を見せていただきながら、楽しく競技を行う事が出来ました。みなさんも出来ることから一つづつ楽しむ事を忘れないように取り組めば、必ず結果は追付いて来ますから頑張りましょう」
と挨拶をし、皆の拍手を貰いながら降段した。
◇◆◇◆
その日の昼休みに斗真さんから電話が掛かってきた。
「翔君昨日の活躍は凄かったねぇ、俺は翔君がもっと凄いことを知っているけど、その俺が見ても感動させてもらったよ。五輪も頑張ってくれよ」と激励の電話だった。
「斗真さんありがとうございます。ちょっとだけ相談に乗ってほしいことがあるんですけど、今日の十八時頃とか時間作れませんか?」
「大丈夫だよ、何処で待ち合わそうか?」
「斗真さんが指定して下さればそこに迎えに行きますよ、人目はないところでお願いしますね」
「解ったよ十八時頃に電話するね」と言って電話は切れた。
お昼からの授業も終わり、今週は中間考査の準備に入るので部活をする生徒もなく、俺は試験期間の恒例行事となった、遊真の家での勉強会に参加してラノベをスマホで読み漁っていた。
ファンタジージャンルの小説はランキングに入っている作品は、全部読破してるから、もしまた異世界に召喚されるようなことが在っても、今度はもっとうまく立ち回るぜ!
斗真さんとの約束もあるので十八時前には帰宅して斗真さんからの連絡を待った。
綾子先生と美緒にも連絡してあったので、斗真さんから連絡が入ってすぐに迎えに行き伊豆の拠点に集合した。
昨日の夜から今日にかけてのマスコミとCM出演希望の各企業からのオファー、全国の高校からのスポーツ特待での招待で、大変な事になっている状況をみんなに説明した。
一番迷惑がかかっているのは綾子先生で、俺に連絡がつかないのは、綾子先生のせいだ! 的な扱いをされて困っていた。
「俺の両親が、昨日の賞金を使って俺のマネジメント専用の法人を作るって言う話も今日出ましたよ」と伝えると「それを早急に進めて、学校の特待関係以外の窓口は、そこに一本化するしか無いね」
と言う話になった。
美緒が最近法人を作った時の司法書士さんから、芸能関係の代理人として有能な事務所を紹介してもらってマネジメント会社の設立も、お願いする事になった。
両親にまだ伝えていなかった為に、皆に付き添ってもらって、司法書士さんも途中で合流して俺の家に行き、今度は両親も含めての具体的な話になった。
両親も学校や先生に迷惑がかかる事を気に留め、最速で法人の設立を行う事になり、綾子先生が控えていた、マスコミの連絡先に連絡を入れ、これからの連絡は取り敢えず先行して作ったメールアドレスに一括でお願いする事を伝えて、商業関係での学校への連絡は辞めて頂きたいと伝えた。
テレビ局の中で昨日一番対応が好意的だった、地元名古屋のテレビ局に今から今日の報道番組にスポットで出演できないか打診すると、大喜びで「すぐに来て下さい。一時間でも二時間でも特番を今から作ります!」と、伝えられた。
流石にそんなに、喋ることはないんですけどね……
両親と綾子先生は、付き合ってくれることになって、父さんの運転で名古屋の金山から近い場所にあるテレビ局へと向かった。
先生の場合、公立中学校の教員という立場のために、どこまで出演して話ができるのか微妙なラインが合ったので、直ぐに市の教育庁に連絡を入れると、名古屋の名物市長が強権を発動した。
「松尾翔君のバックアップのためなら、制限無しに、どこまででも協力して下さい。当面五輪終了までの特別措置となります」と言う返答が帰ってきたそうだ。
「これで、これから最低二か月はマスコミの前に綾子先生も出続ける羽目になりそうですね! 中々全国に名を轟かせる、中学校教諭っていないから凄いじゃないですか!」と伝えた。
綾子先生は俺をジト目で見て「松尾君にそれを言われても、全然嬉しく感じないのは何故ですかね?」と、言われた。
◇◆◇◆
テレビ局に到着すると、急な申込みだったにも関わらず、二十時から一時間の特別番組を編成して、既に番組でテロップを流し始めてるそうだ。
名古屋の地方局ではあるけど、すぐに系列の東京の系列キー局に連絡を入れ、キー局の指示で系列の全国の番組を組み替えて、インタビュー特番を放送する事になったそうだ。
緊急で名古屋の有名人にも声を掛けたようで、地元球団の監督や市長、県知事も駆けつける事になって、地元をメインに活動しているアイドルグループも急遽集合して、名古屋から世界へ! をアピールする特番になったみたいだ。
俺は、地元球団の監督さんとは先日の始球式の時にキャッチボールした仲だし、少し安心したが、押しの強い市長は、ちょっと苦手かもと思ったがまぁ今日だけはしょうが無いな。
きっと他のテレビ局は出し抜かれた形になって悔しがってるだろうね! でも、俺をミュータントと言ったコメンテーターの出演していた系列局へは絶対出ないけどね。
それを、何気ない形で地元局のアナウンサーに打ち合わせ中に伝えたら、何だか慌ただしく指示を出し始めてたけど、きっと俺のブームが去るまでの間の、
俺も結構黒いよね……
番組がスタートして、まず昨日の俺の世界新記録場面が映し出され、それに対してアナウンサーや出演者達から俺に直接質問やコメントが与えられる形で進行して行き、アイドルグループの一人が何気なく「翔君ってスポーツは凄いんですけど、それだけスポーツしてたら勉強する時間とか無くて通知表がすごく残念な感じとかあるんですか?」と聞かれた。
その質問に対して俺は「当然そう思われちゃいますよねぇ」と苦笑いをしながら「その辺りは俺が言うと嘘に思われちゃうから、担任の先生が今日スタジオに来ていますのでそちらに聞いてもらえますか?」と、綾子先生に振った。
綾子先生が質問に対して、「松尾君は二年生の三学期の期末考査で、学校始まって以来唯一の全科目満点で当然トップの成績でしたよ、何だかご期待に添えない感じの返事でゴメンナサイね」と言われた。
その先生の答えで、又スタジオが盛り上がって、ひな壇に居た有名塾の講師で、タレントもしている結構よく見かける人が「ではもし今週末うちの塾が主催する全国模試に参加したらトップを取れるくらい凄いんですか?」
と、食いついてきた。
俺は「ある程度は大丈夫だと思いますけど、トップはどうでしょうね?名前とか書き間違う事良くありますし!」と言って、スタジオの笑いを誘った。
結局番組の企画込みで今週末の全国模試の参加を約束させられてしまった。
地元球団の監督から「もし松尾くんがプロ志望届とか出したら、経験あるとか無いとか関係なしに、俺が球団にいる限り確実に一位指名しますね!」と言う言葉をもらい、知事と市長からも握手を求められて、県と市を上げて応援すると伝えられて番組は終了した。
出演していた皆さんからサインと記念撮影をねだられて、帰れるまでは少し時間がかかったけど、楽しく過ごす事も出来て、学校へのCM出演や番組出演の連絡は控えて欲しい事や、そう言う場合の連絡先のアドレスを公開して、騒動も少しは落ち着くと思うし、まぁ目的は達したはずだ。
昨日の今日で、各局が昨日の【OCSC】絡みの特番を企画してたけど、俺が実際に出演した事により、完全にこの系列局の一人勝ちだった。
インタビュー番組に関わらず視聴率は三十パーセント超えと、世界記録特需を実感出来た。
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