07.

『む~、』アルマカンは口を尖らせて、『じゃがそなた、それでは基本パターンをどうやって創るつもりじゃ?』

「そりゃ決まってます」中村は首をひとつ傾げて、「成功例から借りてくればいいんですよ」

『成功例?』アルマカンが怪訝に首を傾げる。『そのような都合の良いものがどこに?』

「私のいた世界ですよ」しれっと中村。

『いや待て、』今度はアルマカンが突っ込んで、『それでは魔法とかを入れ込めんで差別化が……』

「だから〈成功例を借りる〉だけですって」中村が切り返して、「あとは応用力の問題ですけど――〈差別化〉って何の話です?」

『あわわわ……!』アルマカンが両の手を振り回してごまかしを試みる。

「可愛らしく否定しようったって無駄ですよ」中村は静かに腕組み、「で、〈差別化〉って何の話でしたっけ?」

『あー……、』アルマカンは力なくうなだれて、中村へ軽く指招き。『実は……』

 察した中村は耳をアルマカンへ近付けた。そこへアルマカンが背伸びしつつ耳打ち、

「コンテスト!?」

『あばばば声! そなた声が大きい!』

「てことは何ですか、」中村は首を傾げながら、「創造主ってのは他にも……あぁまぁ、納得と言えば納得の」

『早っ!』アルマカンが意外げに、『呑み込むの早っ!』

「まぁ考察とか色々やってますので。で、」中村はアルマカンへ眼を向けて、「コンテストのルールは?」

『……信仰、なのじゃ』バツ悪そうに指先を突き合わせつつアルマカン。『創造した世界からどれだけ信仰を集めるか、そこんとこで勝負を決めるという――な』

「それで信仰にこだわると」中村は頷きつつ、「何とも判りやすい」

『しかしのぅ、』アルマカンは上目遣いに、『信仰が継続して得られんでは効率が……』

「はいそこ、」すかさず中村。「勝ちパターンも見えてないのに〈効率〉とか言い出すと突っ込みますよ私」

『突っ込んでる!』涙目でアルマカン。『そなたもう突っ込んでるから!』

「滅亡がお望みでしたっけ?」

『え~ん』のじゃロリのアルマカンが顔を覆う。『いじめるぅ! のじゃロリなのに~!』

「嘘泣き、終わりました?」中村の声は笑み含み。

 アルマカンは上目遣いに、『……意地悪じゃの』

「褒め言葉としていただいておきます」中村は頷きひとつ、「いくつか突っ込みどころが出ましたけど、まずは〈効率〉って考え方の向き不向きからお話ししましょうか」

『道のりは遠そうじゃのぅ』


「まず大前提」中村はのじゃロリなアルマカンの眼を見据えて、「未来は何人たりとも見通せません」

『う、うむ、』若干負け気味にアルマカン。『もう突っ込まれるような真似はするまいぞ』

「結構」中村は頷きひとつ、「では〈効率〉の定義は?」

『つまり、』アルマカンは慎重に『〈全体のうち成功した割合〉……ではないのか?』

「過去形、ですよね?」

『ほへ!?』アルマカンが呆気にとられる。

「〈成功した〉、という点ですよ」中村が立てて指一本。「〈成功〉ってのは〈勝利条件を満たした状態〉を指して言うもんです。つまり、勝利条件で設定された時期が来るまで判定できっこないんです」

『うむむ、』アルマカンが腕組み、『反論できんな』

「つまり〈効率〉ってのは過去の事実、」中村は指をひとつ振って、「拡張しても〈経験則〉に限って当てはめるのが妥当――とも考えられるわけです。――つまり」

『つまり?』首をひねってアルマカン。

「つまり、」中村が小さく指を振る。「〈効率〉なるものは、独自性を競うには向いていないんですよ」

『じゃが、』アルマカンから疑問。『全くの見当違いでもいかんのではないかの?』

「そうですね」中村はあっさり頷いて、「だから完全に切り分けるのは危険なんですよ。どこかを境にやり方が180度変わるなんて、〈都合が良すぎ〉だとは思いませんか?」

『まぁ、確かにの』アルマカンも頷く。『ここでも〈都合〉は危険というわけかの』

「そして〈想定外に対応できるのは、想定外だけ〉という原則は変わりません。独自性、つまり〈大多数にとっての想定外〉をものにしようとするなら、広く知られた〈経験則〉からは離れるのが近道というわけです」

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