脱衣ショー
「ひ、ひひっ! 可愛い乳押さえとふんどしだねぇ! 肌もすべすべで、若い女の子って感じだぁ……!」
「胸も大きくて、柔らかそうだなぁ……! ほんと、食べ頃って感じの女体だねぇ……!」
「や、やめてください。ひ、人を呼びま、むぐっ!?」
「喋んなって言ってんだろうが!! 俺たちがその気になれば、お前みたいな小娘すぐに殺せるんだからな!」
震える声で抵抗を試みるこころであったが、背後から彼女を押さえつける小太りの男がその口を塞ぎ、脅しの言葉を吐きかける。
興奮した様子の彼らを下手に刺激すると本当に殺されかねないということを理解したこころは、その恐怖に体を竦ませてガタガタと震えながら頷くしかなかった。
「いい子だから大人しくしてろよ。すぐに気持ち良くしてやるからな……!!」
「おい、早く邪魔な下着を剥ぎ取っちまえよ。陣地の端だっつっても、いつ人が来るかわからねえんだからよ」
「わかってるって! にしても……ひひひっ! 涎が止まらねえなぁ!!」
細長の男がこころの胸へと手を伸ばす。
首筋に刀を向けられている状況では抵抗も出来ず、悪漢に白色のブラジャーとその周囲の柔肌に触れられる嫌悪感を必死に耐えるこころ。
そんな健気な彼女に、神はほんの僅かながら味方したようだ。
「あ、あれ? これ、どうやって外すんだ……?」
「なにもたもたしてんだよ!? 女の乳押さえ外したことないのか!?」
「あ、あるに決まってんだろ! けど、それと仕組みが違うみたいで……」
どうやら、細長の男はこころのブラジャーを脱がすのに苦戦しているようだ。
大和国の乳押さえと現代日本のブラジャー。用途は同じでもその着脱方法には違いがあるようで、この世界で育った男にはこころの着けている下着のホックが背中にあることに気が付いていない。
強引に引き千切ってしまえばそれで終わりだが、こうして彼らが少しでももたついてくれれば誰かが異変に気が付いてくれる可能性が高まるはず。
だが、陣の外れにあるこの水浴び場に偶然にも足を運ぶ者がいてくれるだろうかと、奇跡でも起きない限りは自分がこのまま男たちの慰み者になってしまうと恐怖するこころの耳に、恐ろしい言葉が響く。
「もう面倒くせぇ!! 先に下を脱がしちまえよ。やることやってりゃあ、乳押さえも勝手に脱げるだろ」
「そ、そうだな……! ふへへっ! そんじゃあ、お待ちかねのものを……!!」
「っっ!?」
男の目標が、ブラジャーからショーツへと変わった。
ただずり下ろすだけで脱がせてしまう薄い布地の内側には、未だに家族以外には見せたことのない乙女の最も大事な部分が隠されている。
それを、こんな卑劣な男たちに見られてしまうのか。
その後にもっと屈辱的な行為をされてしまうのかと、恐怖と悔しさにこころが涙を滲ませた時だった。
「おい、こころ。お前、着替えと手拭いを忘れていっただろ? まったく、ぼーっとし過ぎているぞ」
衝立の向こう側にある脱衣場から、また新たな人物の声が聞こえてきた。
自分に対して呆れ笑いを含んだ声をかけてきた人物の正体が栞桜であることに気が付いたこころに対し、慌て気味の小太りの男が刀を突き付けながら命令を下す。
「て、適当に返事をして追い返せ! 妙なことを口走るんじゃねえぞ!」
「……いや、待て。くひひっ! こいつはむしろ好機じゃねえか。飛んで火にいるなんとやら、ってな……!!」
塞がれていた口を解放されたこころは、どうにかしてこの異変を栞桜に伝えられないかと思案を巡らせるも、それよりも早くに細長の男が動く。
近くにあった瓶を蹴り飛ばし、それを割ることで派手な音を響かせた彼が水浴び場の入り口へと目を向ければ、その先から予想通りの反応と共に栞桜がこちらへと顔を覗かせたではないか。
「こころっ、どうかしたのか!? まさかまた倒れて……っ!?」
「へへへ……! いらっしゃ~い! お前も俺たちと一緒に楽しく水浴びをしようぜ!」
「嫌だとは言わないよな? そんなこと言われたら悲しくって、ついうっかり手が滑っちまうかもなぁ!」
「し、栞桜ちゃん……逃げて……っ!!」
下着姿のこころと、彼女に刀を突き付けて拘束する二人組の男たち。
一瞬、状況の理解に時間を要した栞桜であったが、彼らがこころに不埒な感情を持って近付いたことに理解すると、憎々し気な視線を向けながら吐き捨てるようにして言った。
「……自分たちが何をしているのかわかっているのか? これは、明らかな軍規違反だぞ? こんなことが総大将の耳に入れば、処罰は免れな――」
「ごちゃごちゃうるせえんだよ。バレなきゃ問題ねえんだ、バレなきゃな」
「お前たちは言えるのか? 男たちに犯されて、滅茶苦茶にされちゃいました~……って、あの頼りにならない指揮官に言えるのか? 俺だったらそんな恥ずかしい真似出来ないなぁ。お友達の名誉も掛かってるなら、猶更だ」
「女に武神刀を向けて言いなりにしているお前たちが恥を語るな! 下郎共め、必ず思い知らせてやるぞ!」
「ははっ! そうかい? まあ、そんなことはどうだっていいからよ……取り合えず、脱げ。一枚一枚、俺たちを楽しませるように服を脱いで、裸になれよ」
男たちは、今度は栞桜に対して欲望の籠った視線を向け始める。
震えるこころに刀を向ける様を栞桜に見せつけ、彼女が自分たちに逆らえないようにした男たちは、その欲望を隠すこともせずに屈辱的な命令を下した。
「栞桜ちゃん、駄目! 私のことはいいから、誰か人を呼んで……っ!」
「……案ずるな、こころ。この程度、大したことではない。それに、お前を見捨てるだなんて選択をすれば、私はこの男たち以上の恥さらしになるだろう。それに比べれば、裸を見られることなど屁でもないさ」
自分のせいで、大切な友人が醜い男たちの毒牙にかかろうとしている。
何も出来ず、足手纏いになる自分自身の不甲斐なさに震えるこころの前で、彼女を安心させるように笑みを浮かべてそう告げた栞桜が、命令のままにゆっくりと服を脱いでいった。
「おほぉ……! こいつはぁ……!!」
「く、くへへっ! へへへへへへっ!!」
羽織、袴、小袖……栞桜が服を脱ぎ捨て、その魅力的な肢体が露わになる度に、男たちの口から感嘆の息が漏れる。
程なくしてこころと同じ下着姿になった彼女は、羞恥に僅かに頬を染めながらも気丈に男たちへと尋ねた。
「……次はどうすればいい? 上か? 下か?」
「へ、へ……! お前、サラシ巻いてたのかよ? それでその乳の目立ちっぷりか?」
「デカくて下品な乳だなぁ。いったい、どんだけ揉まれたらそんな大きさになるんだ?」
「毎晩あの若造たちと乳繰り合ってんだろ? じゃなきゃ、そんなデカさになるはずがねえからな!」
「……燈と蒼を侮辱するな。二人は、お前たちのような下種な人間じゃあない」
自分のコンプレックスを刺激する言葉と、信頼する仲間への侮辱に対して栞桜が鋭い視線を向けて男たちに反抗する。
しかし、その強気な態度すらも自分たちを楽しませるためのスパイスに過ぎないとばかりに歯を見せて笑った男たちは、栞桜に向けて顎を上げる仕草を見せながらストリップを続けるように命令した。
「んじゃ、そのサラシを取ってもらおうか。押さえつけてる邪魔なものが消えたら、どんだけの爆乳が出てくるのかが楽しみだぜ」
「……っ!!」
男たちの言葉による責めに耳まで顔を赤くしながら、栞桜は言うことに従ってサラシを留めてある部分を外した。
そこから、ゆっくりとそれを外していく程に、彼女の胸の膨らみがその存在を主張し始める。
「おほっ! ほっ、ほおおぉぉっ!!」
「うひひひひひっ!!」
前のめりになって、栞桜が脱衣する様を中止する男たちは、興奮のあまり猿の泣き声のような言葉を口走っている。
首筋に感じる荒い鼻息が、自分を抱きすくめる腕に込められた力が、そして、尻に当たる熱く硬い想像もしたくない何かの感触が……背後から自分を拘束する男の興奮の程を、こころに感じさせていた。
「美味そうな乳してるなぁ! 後で二人纏めてしゃぶりつくしてやるから、楽しみにしとけよ!」
「喋るな、クズが……!!」
「強筋な態度取っても、本当は恥ずかしいんだろう? すぐに体も正直にさせてやるぜ、クククッ!!」
サラシを外し、胸を露わにした栞桜は、腕を使ってせめてその頂点だけでも隠そうとしていた。
そんな彼女の僅かな抵抗を楽しみ、むにゅりと潰れる胸の大きさと柔らかさを視姦していた細長の男であったが、もう我慢の限界であると言わんばかりに一際興奮を滾らせた声を漏らし、栞桜へと最後の命令を口にする。
「さあ、最後だ。ふんどしも脱いで、こっちに尻を突き出せ。たっぷり可愛がってやるよ」
「っっ……!?」
びくりと、栞桜の体が震える様に舌なめずりをして、自分も袴を脱ごうとする細長の男。
すぐそこにまで迫ったお楽しみの時間に期待するかのように自身の醜い欲望の化身をそそり立たせる彼は、俯いて固まったままの栞桜を恫喝するように言葉を発した。
「さっさとしろ! お友達がどうなってもいいのか?」
最後の最後で怖気付こうとも、こっちには人質がいる。
こころの命という最強の切り札を握る男がニタニタと不快な笑みを浮かべながら栞桜へとそう吐き捨てた瞬間、俯いたままの彼女が意味深な言葉を口にした。
「……お前たちが欲望に素直な男で助かったよ。本当に、間抜け揃いでよかった」
「なんだと? どういう意味だ?」
突然の強気で意味深な栞桜の態度に戸惑う細長の男に向け、彼女は視線でその背後を指し示す。
促されるままに男が背後を振り向いてみると――
「へ……?」
「どうも、こんばんは」
そこには、けろりとした様子でこころを保護し、着ていた羽織を彼女に被せる涼音の姿があった。
相棒である小太りの男は白目を剥いて気絶しており、音もなく制圧された彼を不甲斐なく思う細長の男であったが、同時に自分たちと栞桜たちとの優位性が逆転したことを悟って顔を青ざめさせた瞬間、強烈な衝撃が後頭部に走る。
「ぐげぇっ!?」
「下種が。乙女を力尽くで言いなりにしようとするなんて、恥を知れ!」
「がふっ……!」
栞桜に殴り飛ばされ、相棒の真横に転がった男は、追撃の踏み付け攻撃を受けて完全に意識を途切れさせた。
それでもまだ怒りが収まらないとばかりに憤慨する栞桜と、まだ震えが治まらないこころを交互に見つめていた涼音が、双方を落ち着かせるために声をかける。
「取り合えず、そこまで。栞桜、それ以上やったら、そいつらが死ぬ。責任の所在を明らかにするためにも、蒼に報告してそいつらを引き渡さなきゃ」
「言われなくてもわかっている! というよりお前、助けに入るのが遅くないか!? お陰で私は残りふんどし一枚まで追い込まれたんだぞ!?」
「確実にこころを助け出せる機会を待ってただけ。いい囮だったわよ、あなた」
「ぬぐぐぐぐぐぐぐ……っ!!」
涼音の助けが遅くなったせいで憎い男たちに全裸一歩手前の姿を晒すことになったが、自分の犠牲に見劣りしないだけの活躍をした彼女に対して必要以上の罵倒を口に出せない栞桜が唸り声を上げる。
そんな栞桜を一度放置してこころへと向き直った涼音は、普段通りの平坦な口調ながらも彼女を気遣った様子で声をかけた。
「もう、大丈夫よ。怖かったでしょう。よく頑張ったわね」
「す、涼音ちゃん、ありがとう……でも、どうして異変に気付けたの?」
「なんてことない。栞桜があなたに着替えと手拭いを届けに来た時、私も一緒にいたってだけ。無鉄砲な栞桜が一人で飛び出してくれたお陰で、回り込んであなたを助けるために動くことが出来た。無口な性格でよかったって、初めて思ったわ」
小さく頬笑みを浮かべた涼音を見ていたら、少しずつ自分が助かったのだという実感が湧いてきた。
安心感に涙を溢れさせ、自分を抱き締める涼音の胸の顔を埋めながら、こころは感情のままに泣きじゃくる。
「怖かった……怖かったよ……!! 殺されちゃうんじゃないかって、栞桜ちゃんも私のせいで大変な目に遭っちゃうんじゃないかって考えて、本当に怖かった……!」
「……よしよし。もう安心だからね。何も心配いらないから……」
抱き留めたこころの頭を撫で、彼女を慰める涼音。
口数が少ないながらも、一応は姉として十数年間を生きてきただけはある包容力を見せる彼女へと、羽織と袴を纏った涼音が声をかける。
「で、こいつらはどうする? 逃げられないように手足の骨を折っておくか?」
「それくらいしてもばちは当たらないでしょうけど……やり過ぎだって蒼が責任を取らされる羽目になるのは御免だわ。何かで縛って、動きを封じるだけでいいでしょう。蒼たちが戻ってきたら報告して、身柄を引き渡す。それまでは見張りを立てて、逃がさないようにしておかなくちゃね」
涼音の言葉に頷いた栞桜が、男たちの着物を剥いでそれで彼らの手足を縛る。
ついでに武器になりそうな物は全て回収し、彼らが抵抗も自害も出来ないようにした後、憎々し気にこう吐き捨てた。
「これが一軍の兵士様か。まったく、吐き気がするようなクズどもだな」
「そうね……でも、クズはこの二人だけじゃ済まないかもしれないわよ」
「なに? どういうことだ?」
つんつんと男たちの頬を突きながら涼音が零した一言に栞桜が顔を顰める。
視線でどういうことだと尋ねる彼女に対して、同じく視線でそのうち判ると返事をして、涼音は人を呼ぶべく水浴び場を立ち去るのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます