「不思議なトワイライト - パティのLOVE SONG:超力ロボガラット ED」 この古風な手法はあの!

 カクヨムにお寄せいただいた、「三枝 優」さんからのリクエストです。



          ◇ * ◇ * ◇ * ◇




 唱子さんと、二人で登校している。


「はあ」

 珍しく、唱子さんはおセンチな表情になっていた。


「どうしたの、悪いものでも食べた?」

「もうすぐバレンタインですわね」


 言われてみれば。


「そっかー。もうそんな季節なんだね」

「恋の季節になると、『不思議なトワイライト - パティのLOVE SONG』が頭に流れますわ。あの切ない歌声! キャラの幼さから来る世界観!」


 

 あーダメだ、唱子さんすっかり酔いしれていますわー。


 

「バレンタインって、誰にあげてもいいんだよ?」


 チョコをあげる風習は、ぶっちゃけ日本にしかないそうな。海外では、パーティをする日でしかないという。私は、そっちの方が好きである。


「優歌さんは、どなたかに上げますの?」

「親くらいかなー? 友だちにも配るけど」


 毎年、こんな感じだ。


「平和ですわね。あと数日、お待ちください。とびきりのチョコをお持ち致しますわ」

「わーい。期待して……うん?」


 私の下駄箱から、何かの紙切れが落ちる。ヒラヒラと私の足に落ちた封筒は、ハートのマークで封がされていた。


 唱子さんが、この世の終わりのような顔になっている。ゾンビ顔っていうのかな? 人間を辞めたみたいな。


「ゆゆゆゆゆ優歌さん、これは。この古風な手法はあの!」


「そうかも、しれないねぇ」


 私は特に気にも留めず、手紙をカバンに詰めた。


「読みませんの?」

「お昼にでも読もうかな?」


 しかし、お昼になっても読む気にはなれない。


「気になりませんの?」


 お弁当を食べながら、唱子さんは食い気味にこちらへ問いかけてくる。


「全然ならないけど」

「メンタルが柳かウナギですわね、優歌さんは。つかみ所がありませんわ」

「だって、この手のラブレターなんて、『誰かの代わりに渡してくれ』っていう例のアレじゃん」


 亜美ちゃんの時とか、ひどかったな。

 三通連続で来られて時は、さすがにキレた。


「自分で告白する勇気のない男子なんかに、亜美ちゃんがなびくモノか!」

 って怒鳴っちゃったっけ。

 

 結局、誰も亜美ちゃんのハートは射止められませんでしたとさ。当時からカレシ持ちの非処女だったしね。


「問題は、誰の代わりに渡せと書いてあるかだよね。私としては、そっちの方が気になるかな」


 どうせ、唱子さんに宛てているのだろう。


「優歌さん宛てだなんて、微塵も思わないのですわね?」

「だねー。私宛てだったら、その相手は絶対に変人だよ」


「優歌さんさんが開けないなら、わたくしが」


「はいはいどうぞー」

 私は抵抗するでもなく、唱子さんに封筒を渡した。


 手紙を読んだ唱子さんが、無言で私に手紙を返す。


 


 変人からだった。

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