「星の一秒:機甲界ガリアン ED」 えっ、ガリアンって銃撃つの!?

「はあはあ」

「ひいひい」


 ミニマラソンの授業にて、私は唱子さんと並んで走っていた。

 息を切らしながら、学園外周の田舎道を駆け抜ける。冬だから肥料の香りなどはしないが、作物を育てるための土が放つ独特の香りは感じた。とはいえ、乱れた呼吸では毒である。


「ゲーッホゲホッ! 優歌さん、わたくしに構わず先へお進みください」

「そうはいかないよ! そんな大げさな授業じゃないじゃん!」

「お昼の豚汁うどんが上がってきそうですわ」

「わたしもだよ」


 昼食後にマラソンとか、我が校は鬼か。


「冬は、ミニマラソンがあるからイヤですわね」

「まったくだよ。しかもめっちゃ寒い。登山の時より寒いってどういうこと? 天気狂ってるの?」

「かといって『天気の子』に気温の安定をお願いなんてしたら、ぶり返しが恐ろしいですわ」


 おそらく「冬将軍」どころではないだろう。「冬大名行列」などが来そうだ。


「それにしても、ハムちゃん元気だね」


 ハムちゃんこと公江さんは、なんと先頭集団にいた。といっても集団のビリだが。どこにあんな体力があるのか。


「人は見かけによりませんわ。銃を撃つガリアンのごとく」

「えっ、ガリアンって銃撃つの!?」

「変形もするそうです」


 ま、機甲界ガリアン自体、よく知らないんだけど。


「蛇腹剣だけだと思ってた」

「確かに、ガリアンといえば蛇腹剣。通称『ガリアンソード』ですが、ビームライフルも撃ちますのよ」

「マジ? 見たい!」

「では走りきりましょう」


 私たちは、ほぼビリっけつでゴールする。


「はあ、はあ、こういう時だけは、ローラーダッシュが欲しいですわ」

「ぜえ、ぜえ、マラソンの意味ないけどね」

 

 唱子さんの家にお邪魔して、私はガリアンのプラモを組み立てる動画を見せてもらった。


「ホントだ。銃を担いでる」

「手にビームライフルも持ちますのよ」


 すごい。これが、ガリアン重装改・アザルトガリアンかー。これはこれで趣があるね。


 キッチンでは、一緒に来た亜美ちゃんが、夕飯に豚のしょうが焼きを作ってくれている。意外に料理が家庭的だ。


 その間、EDテーマの『星の一秒』を聴く。


「歌詞の意味なんだろう?」


 一部が英語なので、歌詞がよくわからない。


「泣いてもしょうがないとか、幸せな夢を見て涙を乾かす、とかいう意味だそうです」

「エモいね」


 歌詞カードを、英語のノートにしたためる。勉強になりそう。学期末テストもあるし、英語の曲は色々と参考にできそうだ。


「はいはい二人とも。できたよー」


 さっそく、しょうが焼きをいただきます。


「最高ですわ。亜美さん」

「人は見かけによらない。確かに、ガリアンも亜美ちゃんも同じだね」

「さすがに分離はしませんが」

「分離もするの!?」

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