「イチャラブ Come Home!:迷い猫オーバーラン! ED」 調子に乗りましたわ

 同じ布団で夜を過ごし、コタツでダラダラと過ごす。


 我が家の主であるパステル二世は、唱子さんのヒザから降りようとしない。


「まず大切なのは、人にいちいち反応せず、自分を律することですわ。あなた様のようなネコさんの得意技でしたわね?」

 唱子さんも慣れたモノで、読書感想文用の本をパステルに読み聞かせていた。


 ネコにビジネス書なんてわかるのだろうか?


 気がつけば、大晦日を迎えていた。


 夕飯に、年越しソバを食べる。例年通り、カップの天ぷらソバだ。

 他は、カマボコやおにぎりくらいである。

 いつもは味気ないのに、なぜか今は楽しい。


「ゴハン、適当でゴメンね」


「いえいえ。優歌さんと一緒でしたら、カップのオソバでもおいしいですわ」

 かなり好きらしく、唱子さんはスープを全部飲み干していた。


「おいしかった?」

「とても。やはりロングセラーなだけあって、期待を裏切りませんわ」


 それにしても、私と会ってから唱子さんの食生活が俗っぽくなった気がする。

 気のせいかな?


「もうすぐ、年が明けますわね」

「お腹は空けておこうね。いっぱい夜店を回るからね」


 今日のために、ゴハンは少なめにつまんでいる。


「お着物は……今日はいいですわね。寒いですから」

「締め付けるからね。浴衣の時に学んだよ」


 夏祭りのときも、あまりたらふくは食べられなかったっけ。 


「新年に歌う一発目といえば……」

「やはり、『はっぴぃ にゅう にゃあ』ですわね」


 ていうか、新年の歌っていったら『迷い猫オーバーラン!』しかないよね。他にあったっけ?


「ですが、迷い猫OPはメジャーソングなのですわ」

「弾幕ソングだもんね」


 字幕が流れる動画サイトで、一時期爆発的ヒットを飛ばす。

 2010年アニメソングベスト10で堂々の一位を獲得した名曲である。


 唱子さんは曲を口ずさみながら、ヒザの上に座るパステルに踊らせようとした。


 リードがお気に召さなかったのか、パステルはさっさとエサ場に逃げてしまう。


「あーん、調子に乗りましたわ」

「はいはい。じゃあ、ちょっとカツブシあげてくるね」


 パステルのご機嫌を取るため、ねこまんまは豪勢にしてあげた。

 年も明けるから、豪華にね。


「じゃあ、間を取って『イチャラブCome Home!』ってのは?」

「サイコーですわね。なにげに名曲ですわ」


 といっても、その曲はバリバリのサンバナンバーである。


 年末の雰囲気が、一気に常夏の気分となった。


 除夜の鐘が鳴って、真夏のイメージが一気に崩れ去る。


「さて、行きましょーか?」

「優歌さん、今年もよろしくお願いしますわ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る