「しあわせグラフィティ:幸腹グラフィティ 次回予告テーマ」 では、わたくしと一緒にクリスマスを過ごしませんコト?

 期末試験も終わり、あっという間に冬休みを迎えた。


 私たちは、すき焼きパーティで盛り上がる。

 亜美ちゃんと、ハムちゃんも一緒だ。


「おあがりよー」

 唱子さんちのお手伝いさんであるエルマさんが、グツグツと鳴る鉄鍋を持ってきた。コンロにコツンと置く。


「わあ、おいしそー」

 タマゴをセッティングし、カチャカチャとかき混ぜた。


「いただきまーす」


 お肉が、みんなに行き渡る。豚も牛も、分け隔てなく。


「はああ~幸せだ」

「お腹が空いたときは、『しあわせグラフィティ』ですわね」

「あ~わかる~。私もその歌好き」


 アニメの次回予告テーマだが、THE ALFEEの目にとまってカバーされるという偉業を成し遂げた。


「今がしあわせグラフィティだねぇ」

「そういえば唱子っちさあ、ママさんは?」

「父と、海外で暮らしていますわ」


 唱子さんのおばさまは、海外で働いている。


 おじさまも、向こうでの仕事が増えたらしい。

「是非、唱子さんもこっちへ」という話に一度はなりかけた。


「マジで? 留学じゃんすっげ!」

 興奮した亜美ちゃんが、熱々のお麩をダイレクトに飲み込みかける。


 慌てて、私がお茶を飲ませる。


「成績は、申し分なかったのです。けれど、わたくしは反対しました」

 対立ではない。意志の問題なのだと。


 しかし、ケンカ別れをしている状態だったおばさまは、

「学校内で唱子さんが孤立しているのでは」

 と心配していた。


 文化祭で歌う姿を見て、おばさまは思いとどまったという。


「エルマさんもいらっしゃいますし。なにより、みなさんがお友だちになってくれて」


 あの後、久しぶりに家族水入らずで食事に行ったらしい。


「母に、『あのとき母の指定した曲を歌わなくて、申し訳ありません』と頭を下げました。母も、わたくしの心境を察してくださいました」


 あのとき、自立した唱子さんを見て、おばさまは少し寂しそうだった。オトナたちの元を離れて、自ら大人になろうとしている唱子さんに対して。

 けれど、誇らしく見ていたのを思い出す。


「お礼を言うのはこっちだよ。いつもありがとう、唱子さん!」

 

 シメのうどんも終わって、パーティはお開きとなった。


「みなさん、クリスマスはどうなさるの?」

 ハムちゃんが、さりげなく恋バナに持っていこうとする。


 亜美ちゃんは当然の如く、カレシと過ごすという。


 言い出しっぺのハムちゃんは、子ども会でゴスペルを歌うらしい。

「教会に呼ばれたのよ。天使に扮装した保育園児と一緒に。誇らしいことだわ」

「ナツキくんも一緒?」

「もちろん。というか、ナツキくんが言い出したの」


 デートでなくても、カレシと一緒ならどこでもいいみたいだ。

 自慢しないところが、ハムちゃんらしい。


「私は、予定ないや」

 頭をかく。


「では、わたくしと一緒にクリスマスを過ごしませんコト?」

「いいね!」

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