「TRUST:ヴァンドレッドOP」 BGMの効果ですわ!

 文化祭の準備を着々と進めていく。


 だが、私たちはこのとき、気づいていなかった。


 もう一つ、重要なイベントが待っていることを。


「体育祭があるって忘れていたよ」


「ですわね」

 さすがの唱子さんも、トーンダウンしている。


 短パン姿で、私は二人三脚の準備をしていた。


 私のパートナーは、唱子さんである。


「男子とペアを組まされることがない分、いいか」

「ええ、そうですわね。このシチュエーションは、わたくしにとっては天国ですが」


 私とペアになったことが、唱子さんはよほど嬉しかったらしい。


「イチについて、よーい」

 スターターがピストルを撃つ。


「せーの、いちに、いちにっ!」


 他のメンバーが快調に飛ばす中、私たちは亀の歩みでズンズンと歩く。



「申し訳ありません、わたくしがどんくさいばかりに」


 私たちは、文句なしのビリッけつだ。

 お互いに運動神経がないため、勝ち目のない二人三脚に回されたのである。


 クラスからも、あきらめムードが漂う。


「バカにされたっていいじゃん。最後までやり遂げよう」

「そうですわね」

「ほら、BGMも応援してるっぽくない?」


 流れているのは、ヴァンドレッドのOPだ。

 複座型ロボットに乗る男女の話である。


 たしかに、今の私たちにはうってつけのBGMかもしれない。


「わたくしのリクエストが届きましたのね!」


 急に、唱子さんのテンションが上がった。私の肩を掴む手が熱くなる。


「ちょっと、唱子さん⁉」

 唱子さんの気迫に圧倒されながら、私も勢いに任せた。


「イチニ、イチニ、イチニ!」

 リズムよく、前へ前へと進んでいく。


 幸い、よそのクラスは転倒やスピードダウンを起こしていた。


『高山、大島ペア、二着でゴール! おめでとうございます』


 二着の札を手に、私たちは抱き合う。


「やったね。まさか、入賞できるなんて!」

「BGMの効果ですわ!」



 全書目が終わって、私たちのグループは三位に。


 放課後、ハムちゃんと亜美ちゃんとも合流する。

 ハムちゃんは応援団長で、学ランを着ていた。


「わたくしも、そっちがよかったですわ」

「競技に出なくていいもんね」と、亜美ちゃん。


 その分、ずっと声を張っていないといけない。

 なので、ノドが強いハムちゃんが抜擢されたのだ。


「みんな、三位おめでとう! これは私からのお礼よ!」

 クラスのみんなに、ハムちゃんがジュースを振る舞う。


「これは、あたしから二人にプレゼント!」

 亜美ちゃんが見せてくれたのは、私たちが二着でゴールした写メだ。


「ありがとうございます、亜美さん。家宝にいたしますわ!」

「家宝は大げさだよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る