「XL BO$$:XL上司。 OP」 ようやく歌にどう向き合えばいいか、わかった気がします。

 とはいうものの、私たちは選曲で難航していた。


 この日の放課後も、ああでもないこうでもないと意見を言い合う。

 舞台で歌うと決めた日から、メッセアプリはアイデア交換で鳴りっぱなしだった。


「一曲めは、断然コレですわ」


 私は、最初に歌う曲を見て、インパクトが強すぎたせいだ。


「いきなり、これ? もう少し歩み寄ってもよかったんじゃ?」

「優歌さん以外にわかってもらっても、意味がないんですわ」


 だから、この曲なのか……。


「わかった。最初から飛ばしていこう」


 続いて、二曲目以降も決めていった。


「『キグルミ惑星』などはいかがでしょう?」

「私、その曲わからない」


 というか、『はなまる幼稚園』自体あまり見ていない。


「だとしたら、『神様はじめました』などはいかが?」

「それもいいかも。ぽっぽな感じを出しましょう」


 次は、ハード目の曲はどうかと意見してみる。 


「では『XL BO$$』なんてのは、どうですか?」

「学校で⁉」

 エロ漫画原作アニメの歌じゃん! さすがにそれは。


「じゃあ、私も。カバーもので、『灰色の水曜日』なんてのは?」


「いいかもしれませんが、大人っぽすぎて。しんみりが強いかもですわ。歌うとしても、一番のみなら」


 それでいこう。


「最後は、これ歌う?」

「えっ」


 私が提示した曲を見て、唱子さんは何度もうなずく。


「確かにこれは、アニソンになっていましたわね」

「いい? 今ならコレは、立派なアニソンになるよ」

「優歌さんがおっしゃるなら!」


 最後の曲が決まった。


「チェックをお願いしますわ。このラインナップで行こうかと」


 私は、唱子さんが決めたプランを見せてもらう。


 並ぶ曲目を見て、思わずうなった。


「自分たちで作っておきながら、攻めたね」

「これくらいのインパクトが、わたくしたちらしいですわ」


 私たちは、向かい合って笑う。



『文化祭運営委員より連絡です。舞台使用許可申請の期限は本日までです』



 ちょうどいいタイミングで、アナウンスが流れた。 


「落ち度はございませんこと?」

「大丈夫! 申請しに行こう!」


 教室を出て、生徒会室へ向かう。


 廊下には、亜美ちゃんがいた。


「ねえ唱子っち、吹っ切れたカンジ?」

「はい。ようやく歌にどう向き合えばいいか、わかった気がします」

「ガンバ」


 ハイタッチをして、亜美ちゃんは見送ってくれる。


 生徒会に必要書類を提出した。


「うーん、唱子さんと歌うの楽しみ。緊張しそう!」

「では、ノドならしに歌って帰りましょう」

「賛成!」


 私たちはカラオケルームへ直行する。


 練習も兼ねて、わたしたちは全力を出し合った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る