「素晴ラシキFUN!TASY:甘城ブリリアントパーク 挿入歌」 全然大丈夫じゃない!

 私が唱子さんを誘ったのは、プールと一体化したアミューズメントパークだ。どこでも、水着で歩き回れる。


「亜美さんから頂いたチケットで、楽しませていただきますわ」

「うん、一緒に遊びたくて!」


 私は新調した水着と遊ぶ代金の捻出で、バイトをしていたのである。


 本当はチケットまで買う予定だった。


 でも、亜美ちゃんが「宿題を見てくれたお礼」として券を用意してくれたのである。それなりのツテがあったらしい。


 おかげでちょっと余裕ができちゃった。


「おっしゃってくださったら、私が全額出しますのに」

「それじゃあ、友達と言えないよ! 今日は一緒に遊んでね!」

「楽しみにしてますわ!」


 唱子さんの水着は、この間フリーペーパーの表紙を飾ったストライプビキニの上に、花柄パレオだ。


 私はオレンジの上下ビキニに、白いTシャツと濡れてもいいデニムパンツで揃えている。


「腰で結んだTシャツのおかげで、お胸が強調されていますわね!」


「うわあ、太ったかなぁ?」

 私は、お腹をつまむ。


「いいではありませんが。少しふくよかな方が健康的で」

 唱子さんが言うなら、いいや。


 私たちは流れるプールに流され、水鉄砲を撃ち合い、ビーチボールを弾ませた。


「まさに『素晴ラシキFUN!TASY』といった感じで楽しんでますわ!」


「甘ブリかー。いい歌だよねぇ」


 ちょうど今、有線でかかっている。


「今度は、あれをやってみたいですわ!」

 唱子さんが指差すのは、ウォータースライダーだった。


「結構スピード出るよ! 大丈夫?」


「なんの! 行きますわよ!」


 私の手を取って、唱子さんは階段を駆け上がる。


 8の字浮き輪に乗って、スライダーを滑り降りた。いつもの唱子さんからは考えられないほどの歓声が上がる。


 二人して、転ぶようにプールへと落ちた。


「ぶっは! 唱子さん大丈夫だっ……たぁ⁉」



 全然大丈夫じゃない! 


 唱子さんのビキニが流されていた!



「優歌さん、どうしましょう⁉」

「待ってて! ちょっとしばらくコレを着ててね!」


 私はTシャツを脱いで、唱子さんに無理やり着せる。


 絵柄があるタイプでよかった。

 完全な白地だったら、それはそれで背徳感がマシマシだったろう。


 唱子さんがシャツに袖を通す間に、私はビキニの上を探す。


「あった!」


 プールから上がろうとした幼女の頭上に乗っていた。


「すいません。ごめんねー」

 幼女の親に頭を下げ、ビキニを取らせてもらう。


「社会的に死ぬところでしたわ。ありがとうございます優歌さん」


 シャツを目隠しにして、私は唱子さんにビキニをつけてあげる。


「どういたしましてー」

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