「ジャングリラ 働きマンED」 アニメのほうがマイナー、というパターンですわね

「エルマさんも見学する?」


「ありがとうございます。でも、お部屋を空けられないっす」

 言い残して、エルマさんはジュースだけ置いて出ていく。

 そっか。留守番も仕事だもんね。


 一通り練習を終えて、亜美ちゃんが頭を悩ませる。


「なんか、もうひとつレパートリーが欲しい。なんかいい曲ないかな?」

「では、ユニコーンの『働く男』なんてどうでしょうか」


「マジで? 優歌っち、今の話ホント?」

 信じられないらしく、亜美ちゃんが私に話を振った。


「ホントだよ。歌ってるのはPUFFYだけど」

「実際、アニソンとして使われたことがある作品は多いのですよ。本作は、いわば『アニメのほうがマイナー』というパターンですわね」


 人によっては、『働きマン』は菅野美穂主演のドラマ、という印象のほうが強いのでは。


「意外にもアニソンだったの代表って、『あなたのキスを数えましょう』かなぁ」


 荒俣宏原作の戦記物アニメの主題歌だった。



「うわ、ママの一八番だ」

 亜美ちゃんが絶句している。


 私も曲は知っているが、アニメを見たことがない。


 父でさえ、一話しか見たことがないって言っていたっけ。気がついたら見なくなっていたって。


「どっちもメジャーすぎるかな……変わり種が欲しい」


「働きマンだったら、EDの『シャングリラ』は?」


 私が提案すると、唱子さんが「それですわ!」と手を叩く。


「ガールズポップ! 歌うはチャットモンキー! これ異常ないチョイスでしょう!」


 動画サイトのオフィシャルページで聴けるので、聴かせてみる。


「いいカンジ! ありがと、優歌っち!」

 亜美ちゃんが満足してくれて、よかった。


「でさ、二人は文化祭なにするの?」

「うーん。私たち、学校非公認のサークルだから、何をするわけでもないよ」

「マジなん? なんか冷めてるね」


 ほとんど、逃避するかのような理由で結成されたので、特に目標もない。

 そもそも同好会を作った目的が、「目標を持たないため」だから。


「なにか残そうとか、二人でなにかしたい、とかはナシなん?」

「考えたこともありませんでしたわ」


 私も、唱子さんと同じ意見だ。

 表に出ることを拒絶してきた唱子さんを、無理強いすることになるし。


「ですが、学園関係なしに活動するのも、アリかもしれません」

「いいの? 二人でなにかするって」

「少し考えておきますわ。わたくしたちにも、できることがあるはずですし」


 二人で相談していると、亜美ちゃんが「やろうよ」と言う。


「ウチらもお世話になったし、もしやりたいことがあったら言って」

「ありがとう、亜美ちゃん!」

 

 演奏が終わって、亜美ちゃんと別れた。


「それじゃあ、明日は楽しみにしててね!」


 宿題は済んだ。バイト代も出た。

 あとは、唱子さんと遊ぶだけ!

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