「sweets parade:妖狐×僕SS 特殊ED」 多少ポテッてしている方が、男子ウケはいいのよ

 ではそろそろ、とスタッフから声がかかる。

 唱子たちは列車のチケットを手に、座席車両へ。


 さっそく、公江さんはお弁当を広げている。現地に食事があるので、唱子と亜美さんは昼食を買わなかった。しかし、いつの間にか公江さんはお弁当を買っている。


「撮影、楽しみね」

 あっという間にお弁当を食べ終えた。大沢さんはミカンを丸ごとパクリと一気食いする。


 電車は約一時間ほどで、目的地に到着した。江戸時代から建っている家屋や店舗が並ぶ古都である。


「お茶のいい香りがするわね」


「見て、あのコンビニ。木造だ」

 亜美さんが、外装が木のコンビニを見て写真を撮っていた。


 スタッフの案内で、店に入る。食べるのは、どれでもいいという。特に指定はない。


「あたし、和風オムライス!」


 炊き込みご飯を、甘いだし巻きで包んだオムライスだという。


「わたくしは、この日替わり膳をいただきますわ」

「あんみつをひとつ、くださいなー」


 それぞれの料理が来て、シェアし合う。


 野菜の天ぷらに、潮汁とサバの切り身に、牛肉の大和煮である。おやつは桜餡で飾り付けしたモチ団子だ。ワンプレートで何もかもまかなえる。これにも、炊き込みご飯がセットでつく。


「亜美さんの和風オムライスは、変わり種ですわ」 


 和風オムライスは、かかっているトマトソースがしょうゆ味だった。


「唱子さんが一番当たりかも」


 あんみつも、甘さが控えめだ。


「全部おいしいわ。おかわりしようかしら?」 


 公江さんが甘味を食べているシーンを眺めながら、唱子はsweets paradeを脳内再生した。


「素敵ですわ。sweets paradeという感じで」

「それ知ってるわ! 妖狐×僕SSいぬぼく シークレットサービスの歌よね?」

 アニメを見ていたらしく、公江さんは食いつく。


「意外でしたわ。あまりアニソンには興味がないと思っていました。ご覧になるのですね?」

「アニソンは侮れないわ。人を引きつける要素が満載なの。それを身につけるのも、勉強になるわ」


 唱子は、公江さんとは案外うまくられるのでは、と思えた。





「わたくしとしたことが!」

 あまり、食べるんじゃなかった。


 食後に水着撮影があることを、すっかり忘れていたのである。


「お腹が出ていないでしょうか?」

 腹の肉をつまみながら、唱子は不安がった。


「いいって。多少ポテッてしている方が、男子ウケはいいのよ」


 ポテッとを通り越してポテト体型な公江さんの言葉には、妙な説得力がある。


 同じぽっちゃり系でも、兵藤みどりさんとは微妙に違った。兵藤さんは陰キャに振り切れている。対照的に、公江さんは陽キャ極振りだ。


 水着に着替えた唱子たちは、波打ち際で目一杯遊ぶ。

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