「THAT'S 幽幻怪社:幽幻怪社 OP」 まさか、NTR展開な目に遭っているのでは⁉

「これ、もらっていいかしら?」

 言った側から、大沢さんはテーブル上のまんじゅうを一口パクリ。可愛らしい頬が、ハムスターのように膨らむ。


 これこそ、大沢さんが「ハムちゃん」と呼ばれれている所以である。彼女が食べている姿は、見ていて癒やされるのだ。


 また、大沢公江の「公」の字を崩すと、「ハ」と「ム」になる。で、ハムちゃんだ。


「大沢さんも、この企画に乗ってくださるの?」

「そもそもこの会社、ウチのパパが経営しているのよ」


 大沢さんの父親が実業家であることを、唱子は思い出す。



「ナツキくんと一緒に海へ行きたいの! タダ券をくれるっていうから、二つ返事で引き受けたわ」


 ナツキくんとは、大沢さんのカレシである。

「ハムちゃん」の名付け親でもあった。



「今日はよろしく、大沢さん」

「公江でいいわ。なんならハムでも。みんなのことも、下の名前で呼んでいい?」


「もちろんですわ」

 唱子は快諾した。


「じゃあ、よろしくねー。唱子ちゃん、亜美ちゃん」


「部活はいいのですか、公江さん?」

「コーラス部だよね、ハムちゃんって」


 ノドの強さを買われ、公江さんは合唱部に入っている。

 公江さんは、手をひらひらと降った。


「いいのいいの。そのための短期バイトだし。羽根を伸ばすくらい、どうってことないから。それよりナツキくんとのデート優先よ」

「そのナツキさんも、練習なのでは?」


 ナツキさんは、公江さんと同じコーラス部である。


「当分は休みなの。向こうもCD屋さんでバイトを張り切っているわ」

「CD屋さんですって?」


 もしかして、と思って尋ねてみると、優歌さんと同じバイト先だった。


「まさか、NTR寝取りな目に遭っているのでは⁉」


「寝取りって、どういうことなん?」

 ネットスラングをよく知らない亜美さんが、公江さんに聞く。


「ナツキくんに優歌ちゃんを取られるかもって」


「大げさだって、唱子っち」


 考えすぎだと、唱子も思っている。


 優歌さんはアニメコーナーを任されていた。


「だったら、問題ないわ。ナツキくんなら、演歌コーナーにいるのよ」


 無類のムード歌謡好きで、ベテラン客相手ですら的確に応対するらしい。


「アニソンって演歌もあるの?」

「演歌歌手の方なら、アニメをたくさん歌っていらっしゃいます」


 知っているといっても、『ルパン音頭』か、『おそ松くん音頭』くらいだ。


「『THAT'S 幽幻怪社』というムード歌謡などもありますが、アニメ本編は見たことがありません。OVAだそうで」

 接点なんてあるわけがなかった。


「優歌さんは魅力的な女性だから、心配なのはわかるわ。でも、ナツキくんなら大丈夫なんじゃないかしら?」


「え、ええ。そんな気がしますわ」

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